日本百名山の短歌 44 筑波山
(原稿版 後日修正)
44筑波山
落合直文
舟寄する夕川岸の葦の上にかすかに見ゆる小筑波の山
長塚 節
狭衣の小筑波嶺ろのたをりには萱ぞ生ひたる苫のふき萱
岡野直七郎
目をかれぬ筑波繁山ほの白く霞たなびき春の月てれり
古泉千樫
小筑波の町の灯明りたかだかと見えつつもとな森はっきぬに
筑波山さ夜はふけつつ磴道に娼家のあかり照りて寂しも
梅雨はれて夕空ひろしここに見る筑波の山の大きかりけり
輿謝野寛
東京と思ふ地平は曇れども筑波に白き星月夜かな
峯のうへ雪ひろくして多枯の大樹のもとの柵に鹿立つ
蕨 真
みづくきの陸稲廣畑さやさやにふりさけ見れば筑波山見ゆ
尾上柴舟
かぎりなく日は照り満ちてうねり来る雲のそびらのみな光りたる
斉藤茂吉
小筑波を朝を見しかば白雲の凝れるかかむり動くともせず
松村英一
しづみたる霧のうすれて眼の下に肌明り来る青草の山
天つ日の光かくしてふりしづむ霧の底ひをわれは歩めり
小筑波の尾根のっづきの並み山の松は伐られて肌あらはなり
聞きとめて見るにたちまち燕ふか山霧の中に隠れっ
この山の裾べにならぶ青草山霧吹きはれて明るくなれり
岩が根の熊笹の葉を吹き揺すり渦巻き通ふ霧の脚はやし
山裾の赤松林あかるくして居群れあそぶ騎兵除の馬
尾山篤二郎
襲ひくる虻はらひつつ山蔭にぱや官蝉の啼くをききたり
岡野直七郎
葉の落ちてあらはにさむき桐の木の梢にかすむ筑波山かも
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