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2016年12月20日 21:52山たびの軌跡全体に公開

月山(湯殿山〜月山〜肘折温泉)

山たびの軌跡45 葬儀に出席するために故郷に出かけることになった。日帰りだし高速で一時間くらいだから最初から礼服で行ってもいいのだが、道中はラフな格好で行くことにした。ブレザーを取り出すとポケットティッシュが入っていた。山形県肘折温泉開湯1200年祭の文字。2006年(18年)7月13〜15日前年祭、07年が当年祭だ。私が行ったのは06年8月だった。湯殿山から縦走。念仏ヶ原の小屋で一泊し肘折温泉に泊った。その時に頂いたものであろう。もう10年も経つのか。時の経つのは早いものである。

湯殿山から月山を横断して、肘折温泉へ至るルートは、ロングコースである。肘折コースは、月山登拝路の中で一番距離が長い。しかし、昔は一番近い道だったらしい。他の道は、観光道路が出来たり、リフトが出来たりしたのが原因だ。だからこそ一度は歩いてみたいのである。問題はアプローチをどうするかである。公共交通利用では不便この上ない。車で行くとなると、その回収が問題である。そんなこんなで、なかなか実行に移すことが出来ないのである。

北アルプスの下の廊下では、大町から宇奈月温泉まで車を回送してくれる業者さんがいて利用したことが有る。そういう業者さんがいないかとネットで検索を繰り返すと、旅館の旦那さんが送ってくれたというページが見つかった。早速、電話をしてみると「その日は特に用事は無いので送ってあげますよ」との返事だった。もちろん心付けは必要だろうが有難いことである。

メンバーは、神さんと私と、山友の三人になった。山友は女性だが、力量は抜群で神さんが頼りにしている人である。ロングコースではあるが、気心の知れた者どうしだから、まあ、何とかなるでしょう。

湯殿山仙人沢の駐車場に車を置いて、参拝バスで湯殿山神社前まで入る。御神体にお参りし、沢沿いに進み、石畳の月光坂を登る。石畳の階段は下部だけで、中盤以降は、梯子や鎖のかかる、なかなかの急坂である。月光坂を登り切ると装束場で避難小屋とトイレがある。
装束場からは、草原の緩やかな道が続く。ニッコウキスゲやヒナザクラの咲き乱れる道である。ミネザクラも僅かに咲いていた。山頂付近はガスに包まれて見通しはない。

姥ヶ岳からの道が合流すると、急に賑やかになる。道も立派な、広い石畳となる。
チングルマやニッコウキスゲ、リンドウなどが路傍を飾る。霧の中を歩く、白装束の姿を見ると、月山が霊山であることを改めて思い起こさせる。牛首から岩の道を一登りすると、鍛冶小屋跡である。鍛冶小屋跡から山頂までは、一息だ。月山神社にお参りして大休止。周りの景色は、霧の中である。

あ〜あ、ちょっとでもいいから晴れてくれたらなあ、と思いながら頂上小屋の脇から念仏ヶ原避難小屋を目指す。念仏ヶ原避難小屋が、今日の泊場である。途端に道の状況は一変する。これまでの立派な道との落差は大きい。岩に付けられたペンキやテープを巻き付けて置いてある、小さな岩を目印に下っていく。概略、カール状地形の真ん中を、葉山に向かって進む道である。カール状地形の中は、ニッコウキスゲやチングルマ、ヒナザクラ等が咲き誇る。キンコウカに混じって、トキソウが彩りを添える。

雪が融けたばかりと思われる所には、水芭蕉やリュウキンカの花が咲く。
「いやあ、いいところだねえ」などと話しながら歩いていると、山菜ザックのおじさんが登ってきた。腰には鉈、足下を見ると地下足袋を履いている。間違いなく地元のおじさんだ。

「登り返しもあるし、ここから二時間はかかる」
頭の中で計算すると、エアリアマップの倍近くかかることになる。立谷沢川の下りに入っていて、核心部は過ぎたと思っていたが、たしかに、見た目、そのくらいはかかりそうだった。
「まあ、六時には着くでしょう」
おじさんの言う時間に、一時間くらい余裕を見て、言ったつもりが
「そうだな、早ければな」
との答え。
まあ、明るいうちに着けばよいのだ。何も急ぐことはない。

道が急に荒れ出したような気がした。
グイグイと下って行くが、おじさんの言葉を裏付けるように、先が見えない。
立谷沢川の音は聞こえているのだが、トラバースしては下り、また、トラバースしては下りを繰り返して、ようやっと沢底が見えた。橋の袂に、ツェルトが一張り。渓流釣りの男性が一人休んでいた。

橋は傾いていると聞いたが、修復されていた。橋を渡って、ヒドとヒドの間の曽根を登る。
鎖も下がる急登だが、行程は15分くらいで、距離が短くたいしたことはない。勾配が緩むと念仏ヶ原である。キンコウカやトキソウが咲く。夏のためか乾燥していて、地塘もあるが、湿原というよりは、草原の雰囲気である。

念仏ヶ原避難小屋は、木道を進んだ原の端に建っている。小屋は二階建てで、私達の他には誰も居ない。おじさんから「早ければな」と言われた6時よりは30分早く着いた。
水場は小屋の直ぐ近くを流れる小沢で、手の切れそうな水の冷たさである。一階を使いたい放題に使って、ギンギンに冷えたビールで乾杯、懇談の後床につく。

月山は、大きな山である。
山頂付近は、霧に隠れているが、粉ね鉢をひっくり返したような山容は、コンパクトカメラには収まってくれないのだ。小屋からダラダラ登って行くと、地塘があって、三日月湖の標柱が建っている。たしかに、三日月形の地塘である。

尾根際をトラバースして行く道程は、ニッコウキスゲ等が咲く、草つきと灌木の道である。
トラバースの終わりが小岳である。小岳から緩く下っていくと、登山道入口と書かれた大きな案内看板がある。ここが国立公園との境で、草つきと灌木の植生がブナに変わる。うっそうとしたブナ林の道がどこまでも続く。

ルートは、国土地理院の地形図のものとは違っているが、一本道で間違うことはない。赤沢川を徒渉し、少し登り返して、猫又沢目指して下っていく。プチプチとブナの実を踏みつけて歩く、気分の良い道だ。地形図には尾根通しにルートが記入されているが、尾根に登ることはなく、尾根際をトラバースして行く。大森山も三角点は通らずに、南面をトラバースして東へ回り込んで林道へ降りる。そこが登山口で、「磐梯朝日国立公園 月山登山口」の標柱が建っている。車は一台もなく、人の気配もない。今日は、誰にも出会わなかった。

肘折温泉まで、ぶらぶらと林道を歩き、温泉に浸かれば、極楽極楽。
明日は、下道を湯殿山に戻るだけ。
じょんのびの締めくくりである。

写真左:歴史を感じさせる月光坂の石畳の道
写真中:真夏だというのに大きな雪渓が残っている
写真右:湯治場の雰囲気が色濃く残る肘折温泉 朝市の風景
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