４回目 エラートレラントについて
前回は、エラーレジスタントを紹介しました。
今回は、エラートレラントについて紹介したいと思います。
エラーレジスタントとは、「エラーそのものの発生を低減する対策」を言います。
しかし、人間はその特性上、エラーを０にすることはできません。
そこで、エラートレラントという概念が出てきます。
エラートレラントとは、「エラーが発生しても，事故に至らないようにする対策」です。
つまり、エラーレジスタントでエラーを防ぎつつ、もしエラーが起きてもエラートレラントによって、最悪の事態を防ごうというわけです。
「そんなのあたりめじゃねーか」と言われそうですが、案外できていないのが人間です。
そのいい例がシートベルトです。（山から話が逸れますが・・・）
シートベルトは、交通事故に対するエラートレラントと考えられます。要するに、交通事故を起こしても、人の損傷を防ぎ、最悪の事態に至るのを防いでいるわけです。
シートベルトの必要性は、誰でも知っているはずです。それでも、後席の着用率は、いまだに６０％程度（警視庁HP）です。
シートベルトを着用しない理由のほとんどは、「面倒」「窮屈」といったとこでしょう。
エラートレラントは、（めったに起きない）エラーが起きたときに備えるものなので、つい「面倒」等の理由で怠ってしまうことが多々あります。
これがエラートレラントを考えるときに最も頭を悩ませるところです。
エラートレラントを考えるときに重要なのが、経験と想像力です。
「岩場で、前のパーティーが浮石を踏んで、上から落石があるかもしれないから、間隔を開けて登ろう」
というのも、「前のパーティーが浮石を踏む」というエラーに対する、立派なエラートレラントです。
大事なのは、こういうことを常に考えることです。なので、前回紹介した「危険予知トレーニング」が重要なのです。
ただし、「経験」は、実際に経験しなくても手記を読んだり、経験者の注意を聞いたりすることで補うことができます。
まさに、「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」です！
※ヤマレコは、登山者みんなで経験を共有できる素晴らしいツールだと思います！
・地図とコンパスを持って行け
・ツェルトを持って行け
・予備の水を持って行け
・エスケープルートを確認しておけ
・宿泊地には１５時には着くよう行動せよ
これらは、先人達の血の教訓によるエラーレジスタントの一例です。
これらがどういうエラーに対するエラーレジスタントか想像できますね？
エラーレジスタントもエラートレラントも毎回、万全の対策をしなければならないかというとそうではありません。
リスクの強度に応じて、省略も可能です。
例えば、私は上高地に行くときはツェルトは持っていきません。なぜなら、道迷いの可能性が少ない、１時間間隔で山小屋がある、雨が降っても雨衣がある・・・などの理由によってツェルトがなくても事故（遭難）に至る可能性は低いと考えるからです。
最後に
エラーレジスタントもエラートレラントも「やりやすさ」「コスト」「教育」が重要です。
「やりやすさ」と「コスト」を無視した対策は、「面倒」や「コストがかかる」といった理由から、やがて誰もやらなくなるため、意味を成しません。
また、どんなに「やりやすさ」「コスト」に優れていても、何も対策しないよりは多少なりとも「面倒」であり、「コスト」もかかるため、「教育」によってその対策の必要性や意義を説き、意識の改革を行う必要があります。
※職場で行われる「カイゼン」のなかで、この３つを無視したものはありませんか？
エラーレジスタントもエラートレラントという聞きなれない横文字が何度もでてくるため、わかりにくかったかもしれませんが、
要するに、人間はエラーをする生き物なので、エラーを防ぐ対策をとるとともに、エラーをしても最悪の事態に発展しないように対策をしよう。そして、対策を考えるときは、人間の特性に注意しよう
ということです。
次回は、エラーの種類についてまとめてみたいと思います
ttmhajimeさん、こんにちは。
「エラートレラント」について
最近の職場では、作業する前にはＫＹ（危険予知）の励行・・そんな職場は多いですね、でも果たしてそれで事故（ヒヤリハット）は減少？ は疑問です。新人さんは慎重に遵守しますが、ベテランの場合は、つい作標を無視しがちです。いわゆる慣れですね。でも、この慣れの作業が時には「最悪の事態」になる事も・・
＞ヤマレコは、登山者みんなで経験を共有できる素晴らしいツールだと思います
確かにそうですね、でも投稿者の経験や登る山への登山回数等の記載のない場合は、それを拝見したレコ仲間は力量の差異を考慮せずに登山・・こんなはずではで時々事故・遭難されています。
職場では「やりやすさ」は優先されるのでは、「教育」面においては、先輩や同僚等からなされます。但し昔とは異なり、今は盗む（先輩の作業の手順や技量について）・・そこまでして覚える方は少ない様に思います。
「コスト」に関してはあまり掛けたくないのでは、でも、本来は「安全対策」には、少なからずコストや設備投資も必要です。
＞人間はエラーをする生き物なので・・
ttmhajimeさんが、以前述べていた様に、完ぺきな生き物はいないでしょう。人の場合も、外部援助（メモを常に見る・音で知らせる・他人による支援等）により、ある程度の防衛にはなると思います。
人の注意に対する能力は一定とも云われています。であるなら、行動力・判断力の配分も不可欠になってきます。
但し、これらは未熟な方（初心者）にはある程度の気道修正は可能ですが、ベテランには難しい課題です。
エラ−トレラントで必要なのは、他人が発言しやすい職場環境を作る・人間関係の構築・発言者の助言を評価する（但し、おかしな意見の時は遠慮なく反論できる事）
＞エラーをしても最悪の事態に発展しないように対策をしよう・・
そうですね、最小限に抑えるエラ−も大事ですね、間もなく、会議がありますので、この辺で失礼します。
次回を楽しみにしております。
cprrescueさん こんにちは
＞この慣れの作業が時には「最悪の事態」になる事も・・
いわゆる、ベテランのエラーですね。航空業界や産業界では、ベテランのエラーをいかに防ぐかに苦心してるところもありますね。
ベテランのエラーを防ぐには、ベテランのエラーの仕組みをベテランに根気よく教育して意識を改革してもらうしかないですね・・・
新人のエラーとベテランのエラーについてもいずれ紹介したいと思います。
＞それを拝見したレコ仲間は力量の差異を考慮せずに登山・・こんなはずではで時々事故・遭難されています。
そうですね、レコも使い方を間違えれば、自分を危険に陥れますね。私は、まず、自分と同じような環境（パーティ、経験、季節）のレコを参考にするようにしてます。また、１つだけのレコではなく、複数のレコ（時には違うコースのものも）を読むように心がけています。
＞エラ−トレラントで必要なのは、他人が発言しやすい職場環境を作る・人間関係の構築・発言者の助言を評価する
おっしゃる通りです。航空業界でさけばれているCRM（クルーリソースマネージメント）ですね。このCRMもいずれ紹介できれば・・・と思っています。
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