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そもそもその解釈は十人十色故、何が正解なのかはわかりません。
しかしよく知ったる場所で発生した事故であり、
その要因も明らかであるので、ここに自分なりの考察を加えたいと思います。
（※申し訳ありませんが、コメント欄は閉じさせていただきます）
本日午前10時頃、乗鞍ツアーコース終点すぐ先の南東斜面で、
幅200m、長さ300mに渡る表層雪崩が起きました。
前日の気温の高い状態での積雪、本日の晴天、斜面の向き、
時間帯、人間が通過する際に発生させる物理的な力、そして地形。
これらの条件から今回のロケーション、
今回のタイミングで雪崩が起きるリスクが極めて高いことは明白でした。
雪崩とは極論を言えば「雪があるところならどこでも起こりうる」現象です。
それに加えて上記条件などが積み重なるほど、
雪崩に巻き込まれる可能性は高まります。
雪崩に巻き込まれない最良の方法とは雪のある場所に行かないことですが、
これは「交通事故に遭わない最良の方法とは自宅から外出しないこと」
と言っているのと根本的には同系であり、
あまり建設的な提言とは言えません。
写真1は先週の日曜日に位ヶ原まで登ったときのGPSデータです。
安物のロガーのせいか、降りがなぜか沢の南側をトレースした
不正確なものとなっていますが、登りは概ね正確です。
Mt.乗鞍スキー場ゲレンデトップ、かもしかリフト終点からツアーコースに
入ってすぐの急登で右側の沢筋からショートカットしたり（写真1の� 法�
ツアーコース終点のすぐ上の急登でまさに今回の雪崩が起きた地点の
沢筋（写真1の�◆⊆命�2：動画キャプチャを拝借いたしました）に
入り込んで登ったりするスキーヤーが多数いました（写真3）。
まさに写真3の地点が雪崩の通り道であり、
もしそのタイミングで雪崩が起きたらそこにいたスキーヤーたちは
ひとたまりもなかったと思います。
＼↘ ↙／
＼↘ ↙／
＼↓／
↓
（沢筋に物理的な力が加わる略図）
沢筋は窪んでいるので登りやすいのですが、
人が登りやすいということは物が降りやすいということです。
窪地の底部には左右上方からV字方向に雪の重みがかかります（上図参照）。
その重みが下り斜面に対する摩擦係数を上回れば崩落するわけです。
低温等で積雪が強固に凝結していればそう易々と崩れることはありませんが、
古い凍結面に新たな雪が降り積もった翌日、
雪の結晶同士が充分に凝結する前に気温が上がれば、
古い積雪面はスケートリンクのようになり、
新しい積雪はそこを滑り落ちていきます。
その摩擦係数は12月や1月の低温な時期に比べて雪の結晶同士の凝結が緩い分、
当然小さくなります。
交通事故が絶対に回避できるものではないのと同様、
雪崩も絶対に回避できるものではありません。
しかし回避する確率を上げることは出来ます。
そのうちの一つとして「今日はそこに行かない」という選択肢ももちろんあります。
また、気温の上昇を避けて早朝に行動する、
斜面の窪地を避けるなどするだけでも、雪崩を回避できる確率は上がります。
位ヶ原山荘管理人の六辻さんが毎年のようにおっしゃっていますが、
乗鞍は地形が比較的平坦故にアルパインの要素は薄いけれども
「地形を読む力」「読図」が非常に重要であり、
それを誤るだけで遭難のリスクが格段に上がります。
積雪期はトレースが重要な道標たりえますが、
無条件にトレースを辿るのではなく、そのトレースが本当に正しいのか、
という懐疑心のようなものを常に抱いておくことが大事かと思います。
全国的には殆ど知られていないかもしれませんが、
長野県は大きく3つ、さらには細かく11の地域に区分けされています。
https://www.jma-net.go.jp/nagano/shosai/yoho/document/1_area.pdf
そのうちの1つに「乗鞍上高地地域」があり、
そこは冬期は頻繁に雪崩注意報が発令されています。
当日は早朝4時には発令されておりましたし、
朝5時の長野ローカルのTV天気予報でも放映されていました。
結果という覆水は盆に返りませんが、
今回の事故は起こるべくして起こったことと言えます。
たとえ方々の機関が
「明日は雪崩のリスクが高いので行くのを控えてください」
と強く警戒を呼びかけようが、行く人は行くでしょう。
それでも周りの知人が「明日は乗鞍に行くんだ」と言ったら
「明日だけは止めておけ！」と全力で抑止しなければならないと思いますし、
何故止めなければならないかを辛抱強く説明するしかないとも思います。
そうした小さな抑止力が方々で働くことで、
ほんの少しでもこういうことに巻き込まれる可能性が低減できるのであれば。
そしてもしそのせいでその知人と喧嘩になったとしてもです。
好きで行ったお山で命を喪うなんて、そんな悲しいことはありません。
ましてそれがあなたの知人だったら。
これは対岸の火事ではありません。
