なるほど、こりゃキツイ、と思わせるものばかりです。
先日、「急登」と言われる燕岳合戦尾根を登って
「北アルプス三大急登の1つと言われる合戦尾根は本当に急登なのかどうか」
について改めて興味を持ちました(その経緯はレコ参照)。
その判断の客観的指標として「標高差」、「距離」、「所要時間」が
挙げられると思いますが、そのうち前者2つについて、
非常に大まかではありますが三角関数的に考察してみました。
北アルプス三大急登は以下の3つを示すとされます。
1.合戦尾根(中房温泉〜燕山荘)
2.ブナ立尾根(高瀬ダム奥尾根取り付き〜烏帽子小屋)
3.早月尾根(馬場島〜別山尾根分岐)
これらを「国土地理院地図」( https://maps.gsi.go.jp/ )の計測ツールを用い、
「a.地図上の距離(m)」を測定した上で、結果をcsvで保存して
「b.標高差(m)」を算出し、aとbの結果から
√aa+bb=「c.実際の距離(m)」及びc/aから「θ:平均傾斜(°)」を算出します。
この計算方法とした理由は、地形図はあくまで俯瞰図であり、
ツールも標高差が考慮されていないと考えられるためです(未確認)。
実際の距離や勾配を計算するには、どうしてもcを導き出す必要があります。
結果、以下のようになりました。
aを手動で計測しているため、測定の完全性を担保できていない点を含みください。
1.合戦尾根
a:3850
b:1254
c:4050
θ:18.04
2.ブナ立尾根
a:2700
b:1160
c:2940
θ:23.15
3.早月尾根
a:6940
b:2235
c:7290
θ:17.85
単純にθのみを指標とすると、ブナ立尾根が断然急であることがわかります。
23°といいますと、スキー場で言えば中級コース以上であり、
直滑降で降りれば相当なスピードが出る角度です。
では、「日本三大急登」はいかがでしょうか。
1.ブナ立尾根(既出)
θ:23.15
2.西黒尾根(西黒尾根登山口〜谷川岳トマノ耳)
a:3110
b:1165
c:3320
θ:20.54
3.黒戸尾根(竹宇駒ヶ岳神社〜甲斐駒ヶ岳)
a:8315
b:2195
c:8600
θ:14.78
これまたブナ立尾根が断然急です。西黒尾根に関しては
合戦尾根や早月尾根より急ですが、距離はだいぶ短いですね。
最後に、奥多摩山域で「奥多摩三大急登」の代表的なルートとして名高い
稲村岩尾根はいかがでしょうか。
稲村岩尾根(日原川尾根取り付き〜鷹ノ巣山)
a:3130
b:1190
c:3350
θ:20.49
あらゆるデータで西黒尾根とほぼ同じ結果となりました。
つまり、稲村岩尾根は日本三大急登に匹敵する厳しい尾根というのが
データ上では成立すると言えましょう。
もちろん、この2つの尾根を同列に比較することはできないと思います。
西黒は岩場の急登であることと森林限界が低く直射日光が厳しい一方、
稲村は山頂直下まで樹林帯であり、似たような傾斜を淡々と登るという
全く異なる環境下だからです。
しかしながら、一つの指針として考えることは可能ではないでしょうか。
先に登った合戦尾根についても、西黒尾根ほどではないにせよ
早月尾根や黒戸尾根よりは急であり、
数値上では決して容易な登山道とは言えません。
しかしながらルート上極めて丁寧に整備されていることから、
他の尾根と比して難度が下がると感じる登山者も少なからずいるかも知れません。
実際、θは指標の一つでしかないと思います。
先に挙げたとおり地面や樹木など自然の構成要素、天候の傾向、
登山道の整備状況、季節など、ありとあらゆる要素が指標足りえますので、
これらを客観的に検証して係数化することで、
θを含めて登山計画に参照足りえる統合的な指標になるのではないかと考えます。
以上は思いつきで書き連ねただけで、
適切な検証や分析を行ったわけではありません。
この日記を記しながら調べたところ、大変丁寧に検証、分析、考察された
素晴らしいnoteがありました。そして比較対象もほぼ同様+αありますので、
そちらのほうが遥かに優れた内容かと思います。
https://www.yamareco.com/modules/yamanote/detail.php?nid=2533
写真1:11月 合戦尾根、合戦沢の頭の先
写真2:4月 稲村岩尾根、序盤
写真3:10月 西黒尾根、ラクダの背の先
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