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こういうことばを見ると、何はなくともその由来を調べずにはおれない。
山に登るからには、景色とか空気とか色とかの外的要素、
あるいは疲労感とか爽快感とかといった内的要素を楽しむのが
主たる目的の一つだと思うのだけれど、
かねてより地理、地名、人名などに深い興味を抱いている私は、
これから登るお山に対して「何故そんな名前がついたのだろう?」
と常々思っているのだ。
(たとえば、北八ヶ岳の「にゅう」もその一つだ)
−−−−−
高ボッチという名を冠する山は、美ヶ原高原の最東端に位置し、
塩尻市と岡谷市の市境に跨っている。
市街地から見ると伸びやかな山容をたたえ、
山頂周辺からは諏訪湖、八ヶ岳、南北中央アルプス、
信越国境の頸城三山、木曽御嶽、瑞牆、金峰、
遥か遠くに位置する奥秩父山塊の大菩薩嶺、奥多摩の雲取山まで一望できる。
さて、冒頭の「高ボッチ」のことばの由来、
やはり同様の疑問をいだいている人は少なからずいるようで、
国会図書館の「レファレンス協同データベース」に諸説が掲載されている。
https://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000186830
それによれば、
1)「だいだらボッチ」あるいは「でいらボッチ」などと呼ばれる巨人が、腰を下ろしてひと休みしたところという説。
2)「ボッチ」とはアイヌ語で巨人とか巨大の意味があって、高い山あるいは大きな山という説。
3)「ボッチ」とは高いところにある「くぼ地」という説。
4)山の形がビンに栓をしたように一段高くなっているので、栓の意味の「ボッチョ」になぞらえ「高ボッチ」としたという説。
などとある。
なるほど、山容を見ると巨人が腰を下ろせるような地形であることは頷ける。
https://goo.gl/maps/CygiGREwWNmB6hLF6
「だいだらボッチ」あるいは「でい(だ)らボッチ」という名の巨人妖怪は、
日本各地で伝承されており、有名な漫画・アニメでも登場しているが、
長野県でも各地でこの妖怪に関する神話が存在する。
たとえば、浅間山の神様(イワナガヒメ)が
妹である富士山の神様(コノハナノサクヤビメ)に対し、
妹山より標高が低いことに嫉妬して「おまえんとこの土を分けろ」とゴリ押しし、
だいだらボッチに命じて富士山の土を運ばせたという。
そのときにだいだらボッチの前掛けに土を盛っていたものの、
神様が「それじゃ足りん!」と言って怒り、
だいだらボッチに八つ当たりして引っ叩いたので、
その拍子に前掛けに盛っていた土がこぼれ、それが「前掛山」になったという。
お山に対してそんなふうに興味を向けると、
お山は歩くだけのものでなく、六感に訴えかけるものだけでもなく、
風土や生活とつながっている文化的な存在として捉えられるかも知れない。
文化を知ることは、人の心を豊かにしてくれる。
私はそのように考えながらお山に対して感謝の念を抱いている。
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