本当は8月に自宅近くの消防署で受講する予定だったのだが、
諸般の事情により、というよりも完全にド忘れしてすっぽかしてしまったため、
今回にずれ込んだ次第だ。
雪山を始めた10数年前、雪山登山に関する講習だけではなく、
衛生講習(山での疾病等に関する講習)と普通救命講習を受講したが、
10数年を経てその概念や手法が大きく変わっている部分もあるだろうし、
昔得た知識が現在では通用しないこともあるだろうから、と思った次第だ。
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朝9時に開始のところ、15分前までに集まるようにとのこと、
20分くらい前に会場に到着したところ、
ほぼ全ての受講者が集まっていた。さすがに意識が高い。
年齢層は、20歳代後半くらいから70歳くらいまでと多岐に渡るが、
中〜壮年層が比較的多い。
開始時間に遅れてきた者は40人近くいてたったふたり。
こうした一般市民向けの講習会としては、非常に集まりが良い印象だ。
大震災以来、この救命講習は大いに注目を浴びているらしく、
その上費用も安い(\2,600)ので、
ほとんどの予約が2週間程度前までには全て埋まる。
ぼくが予約したときも、残り3だか4だかだった。
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/lfe/kyuu-adv/life01-1.htm
さて、まずは救命処置の巻。
講師が心肺蘇生の流れについて説明をしたのだが、
10数年前とまったく違うのは、AEDの存在だ。
サッカーJリーグでは、2004年から全試合会場にて
AED(自動対外式除細動器)の設置を義務付けていたが、
( http://www.j-league.or.jp/release/000/00000019.html )
2011年8月に当時JFLの松本山雅FCに所属していた
故・松田直樹選手が急性心筋梗塞で倒れた際、
練習グラウンドにAEDがなかったため、
救命処置は胸骨圧迫と人工呼吸のみにとどまり、除細動はできなかった。
そして彼の死をきっかけに、
Jリーグに加えて日本サッカー協会が管轄する全試合の競技場、
全チームの練習グラウンドにAEDの設置が義務付けられた。
http://www.jfa.or.jp/jfa/rijikai/2011/20111110/pdf/h20111110_02.pdf
閑話休題。
講師がひと通り説明をしたあとは、受講者同士での実技。
誰もが真剣な眼差しでやっている。
AEDは2004年7月1日の法改正まで一般市民の使用が
医師法によって禁じられていたため、
施設等に普及されてから数年しか経っておらず、使えないひとはまだまだ多い。
そんな中で、あらゆる場所においてAEDが設置されていても、
使用できる人間がいなければ、救命の確率は刻一刻と低下する。
また、山小屋でもAEDを設置するところが増えてきている。
http://www.pref.nagano.lg.jp/xtihou/matu/gyoumu/soumu/shinkou/genki/H20genki-jirei/48.pdf
お山に限らず、もし、ぼくが、そこに、いたなら。
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救命処置の座学と実技だけで、午前中の部は終わった。
あっという間の3時間だったが、
受講者の方々の表情からも、ぼくと同じような感想が伺えた。
午後は、外傷や骨折等の応急手当の巻。
こちらについては、10数年前の衛生講習の内容をおさらいする良い機会となった。
こうした知識は、もちろんお山だけではなく、
日常生活においても、というよりも、日常生活でのほうがbystanderたりえる。
正しい知識を身につけたうえで、
そうした場面に遭遇したときに、さっと手を差し伸べることができるのか。
それには、お山においてもそうだけれども、技術や知識だけではなく、
それを活かすための「他者を助けるという心、人間愛」が
まず第一であるということを忘れてはならない、
そういうことを強く心に刻んだ8時間の講習だった。
終了するころには、受講者同士に連帯感が漂っていたが、
それは「人間愛」によるもの、というのはちょっと言い過ぎかもしれないが、
それにつながるようなものはあったと思う。
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講習終了後に、認定証を頂戴した。
これを、ただの証だけに終わらせることなく、
「人間愛」の象徴のひとつとして技術や知識を保持し、
いざというときに迅速かつ的確に動くことができるよう、日々心がけたい。
(裏面の説明どおり、有効期限は3年間で、再講習を受けることで更新できる)
ぼくは医療従事者ではないから、
自分の処置によって直接いのちを救うことはできない。
けれども、医療従事者にいのちをつなぐbystanderとしての役割を、
十全に果たしたいものだ。
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余談だが、お山における救急に関する行動指針のひとつとして、
「WFA(Wilderness First Aid)」というものがあり、
これに関する講習会を受講することで、WFAのライセンスが取得できる。
http://www.wfaportal.info/licv.htm
http://slipstream.jp/training-courses.html
motchさん、こんばんは。
そうですね、山にはドクタ-はいませんので、「救命講習会」等に参加して、万が一不慮の事故、災害が発生した場合に、支援する事が必要ですね。
誰一人も、「応急手当や救命措置」等の心得の無い団体(パ−ティ)もいます。悲しいことです。
motchさんの様な方が、一人でも多くいれば、良いのですが、、。
はじめまして。
救命救急、セルフレスキュー等々山に入る以上は本来全員が心得ると良いですね。
毎年やっても細かいことは忘れます
人工呼吸は要らないとか、最近どんどん変わっていますが、基本は同じなのでそれほどの問題は無いと感じています。
以前、目の前で滑落された方を手当てしたとき(残念ながら状況は悪く、お亡くなりになりましたが。)周囲の登山者は誰も手当てに手を貸そうともせず、でも遠巻きに野次馬といわれても仕方ないような感じでただ私たちが心肺蘇生やら応急手当やら連絡やらするのを見ているだけでした。
やり方を知らなければ、軽はずみな事はできないと躊躇してしまうのはわかります。
ならばなおさら、各自きちんと身につけたいものですよね!
目の前の事故者を見殺しにすることになります。
明日は我が身、お互い様ですから。
消防署の方にうかがった話では、AEDの電池は替えていないところも多く電池切れで作動しない場合があるそうです。
電池を替えろと言う指導は消防署では出来ないのだそうです。
>>nonkibouさん
こんばんは。初めまして。
コメントありがとうございます。
おっしゃる通り、
お山では人間の手が及ばない場所が多い上に、
特にこれからの季節は歩くひとも減りますから、
そういう場面に遭遇した時に、
そこに自分ひとりしかいない可能性もあり得ます。
最悪のケースをイメージするとともに、
普段から人工呼吸用のマウスピースや
感染防止用のビニール袋を持ち歩くなどの
心掛けをしておくことで、
そういう場面において積極的に動けるのではないでしょうか。
よく言われる「セルフレスキュー」の概念ですが、
それはただ単に心肺蘇生や応急処置、搬出等だけでなく、
準備段階で事故を防止するための対策をどれだけ取れるかも、
広義の意味で「セルフレスキュー」と言えるでしょう。
自分の目の前で誰かが心肺停止状態に陥った時に
率先して救命活動ができることと共に、
自分自身が当事者にならないように心がけること、
こうした表裏一体が「人間愛」につながっていく、
そんな気がいたします。
>>gogo1528さん
こんばんは。初めまして。
コメントありがとうございます。
おっしゃる通り、「明日は我が身、お互い様」です。
事故を減らすための努力も必要ですが、
事故が起きた時に助け合うための知識も必要ですし、
互助精神も必要ですね。
これは、お山に限らず、
日常生活においてもいえることですが・・・。
AEDの充電池の件は、
講習で講師の方もおっしゃっていました。
電池交換の指導ができないことは存じませんでした・・・。
これは、販売者が啓蒙活動していくこともさることながら、
やはり設置者の意識の向上が肝要だと思います。
まずは、ひとりひとりの心掛けからですね。
素晴らしいです、お疲れさまでした。
私も山岳同好会を立ち上げたばかりなので
受けてみようかな初歩的なのから・・・
気がつくきっかけを作っていただきまして
ありがとうございました。
>>noborundaさん
こんばんは。コメントありがとうございます。
ひとのいのちに関わる知識を持っておこう、
という意識があるだけで、
いろいろなことへの気づきにつながるのではないかと思います。
また、そうした講習を受けられることで、
新たな気づきに出会えるかもしれませんね
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