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2024年10月17日 19:15未分類全体に公開

三国峠〜四角岳-中岳

2024,10,14
休日の朝、静かな朝を迎えた切通川沿いの集落を通り抜け、林道を北へと車を走らせる。
舗装路はやがて車同士のすれ違いが困難な細いデコボコ道へと変わり、道路脇の色付き始めた雑木林の中には、朝日を浴びた切通川が落差を伴いながら流れており、つい見入ってしまいそうな美しい光景が続いて行く。
暫く走ると、通行止めを示すテープが張られており、仕方なく空きスペースに車を停車させた。
どうやら今日の山行は、登山口の1.7km程手前のこの場所からのスタートとなる様だ。
身支度を整え、7時25分、林道に張られたテープをくぐり抜け、紅葉したブナの葉に彩られた静かな林道へと歩みを進めた。
熊が多く生息している地域との事なので、熊との遭遇にはいつも以上に気を払いつつ進んで行くが、襲撃に備え路上に落ちていた手頃な木の枝で簡単な杖を作り、トレッキングポールの代わりとした。
暫くすると、土砂崩れにより道幅いっぱいに土砂が堆積しており、その土砂を乗り越え更に進むと、左手には藪に覆われた登山口らしき場所が現れた。
地形図を確認するが、山道を示す表記は無く、辺りにもそれらしい表示は無い。
しかし、山中へと続く斜面の藪には、薄っすらとした獣道らしきものが見える。
ここが登山口なのだろうか…。
今日は心穏やかに山道を歩きつつ、秋深まる静かな山の景色を堪能しようと期待して来たのだが…。
目の前の予想外の光景に少々落胆した。
気を取り直し、7時55分、背の高い草が生い茂る藪の中へと歩みを進めた。
進む程に藪は深さを増し、暫くして右手へと方向を変えると、辺りは笹藪となり、山道に覆いかぶさる笹を掻き分けつつ歩みを進める。
8時20分、高度約680メートル、頭上を背の高いブナの木が覆う開けた場所へと到着、出発から1時間程経過しているが、早くも疲労を感じ、熊との遭遇を警戒しつつ見通しが良いこの場所で休憩する事とした。
スポーツドリンクを飲みつつ、地形図を確認するが、どうやらこの山道を辿れば、地形図上の山道へと交わるらしく、先ずは一安心した。
僅かな休憩を終え、やや急登のハッキリとした山道を辿るが、泥で覆われた山道には、真新しい熊の足跡が続いていおり、時折スリップした跡も見られる。
熊でもコケる事があるのか…などと少し微笑ましい光景を想像しつつ、熊の足跡を追いながら山道を登って行くと、暫くして山道は熊の足跡と共に笹薮の中へと消えた。
先が見えない程の笹薮の中を両手で掻き分けながら進んで行くが、獣道も多く存在し、方向を見失いそうだ。
念の為、下山時の目印としてテープを要所に巻きつけて進む。
実際、下山時には、一度山道を完全に見失い、ルートを修正するのに苦労した。
足元が見えない藪の中を足裏の感覚を頼りに進んで行くと、暫くして辺りには紅葉した美しいブナが立ち並ぶ見通しの良い山道となった。
左手の深い谷間からは、サラサラと心地よい沢の音が響き渡り、美しいブナ林の景色をより感動的なものへとしている。
山道は深い谷間に沿ってトラバースしつつ下り、やがて谷底を流れる浅い沢を渡渉すると、山道はまた足元が見えない程の深い笹薮の中へ続き、9時20分、「四角分教場之跡」と記された標柱前へと到着した。
今となっては、こんな人気もない山中に学校が存在した事など想像だにできないが、かつては鉱山として栄えた山だけにその名残を感じる事ができる。
更に標柱の先に広がる笹薮の中に歩みを進め、目の前に現れた沢を渡渉するが、この先にある筈の山道がなかなか見つからず、辺りを探す。
少しして対岸の猛烈な笹薮の中に山道を見つけ、藪を掻き分けつつまた歩みを進めるが、時折山道を見失う程だ。
視界が悪い山道を熊との遭遇に警戒しつつ更に歩みを進めると、やがて山道は急登へ差し掛かり、藪の中につづら折りに続く山道を登って行く。
10時3分、高度約940メートル、四角岳と中岳とを結ぶ稜線上の鞍部へと到着。
先ずは、藪漕ぎで疲れた体を休め、一息入れる事とした。
スポーツドリンクを飲みながら地形図を確認し、先ずは東側の比較的なだらかな稜線の先にある四角岳山頂へと向かう事とした。
両側を笹薮が覆う山道は、眺望が全く無いが、ハッキリとした道が緩やかに高度を上げながら続いている。
10時13分、高度1003メートル、熊の仕業だろうか…ボロボロの標柱が立つ四角岳山頂へと到着。
360°笹薮で覆われた山頂からの眺望は残念ながら殆ど無く、この場所が青森県、秋田県、岩手県の県境の交わる場所だという実感は湧かないが、取り敢えず記念撮影を終え、次の目的地である中岳山頂へと、今来た山道を鞍部へと引き返す。
視線の先には、中岳山頂へと繋がる急な稜線が見え、あの藪に覆われた斜面をこれから登るのかと思うと少々気が滅入る。
鞍部に到着し、いよいよ中岳山頂への斜面へと取り付くが、山道は相変わらず藪で覆われており、登るほどに斜度は増し、体力を奪う。
10時44分、突然藪から解放された視界は一気に広がり、古ぼけた石柱が立つ中岳山頂へと到着した。
高度1024メートル、8畳間程の広さしかない山頂には、一切遮るものが無い美しい眺望が広がっており、巻雲が浮かぶ真っ青な空の下には、早池峰山、姫神山、岩手山、八幡平、森吉山、岩木山、八甲田山、そして先程登頂した四角岳など近隣の主峰がズラリと並んでいる。
藪漕ぎ後の素晴らしい光景に、感動も一入だ。
一人佇む小さな山頂を吹き抜ける風は穏やかに頬を撫で、柔らかな秋の日差しが体を包み込んでいる。
暫くの間、美しい景色を眺めた後は、その場に腰を下ろし、絶景の中で昼食にする事とした。
持参したおにぎりを頬張り、水筒の麦茶で喉を潤す。
そして心もお腹も満たされた後は、至福の一時を与えてくれたこの場所を後にするのは名残惜しいが、心に残る山行の新たな1ページを胸に刻み、中岳山頂を後にした。


2025年2月号、岳人掲載ありがとうございました。
岳人編集部並びに、今回特にお世話になりましたM氏にこの場を借りてお礼申し上げます。
一口に名山と申しましても、人それぞれの山の楽しみ方があるように、有名どころの百名山の他にも、花であったり、山の姿形であったり、世の中には様々な名山がございます。
今回登った中岳も、マイナーな山でありながら、山頂には一切遮るものがない素晴らしい眺望を備えた我が心の名山となりました。
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