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2025年01月18日 08:57未分類全体に公開

単独行〜白神岳•2025年度 初登頂

2025,01,13
4時45分、白神岳登山口駐車場より1.5km程手前に車を駐め、ややぬかるむ雪の上をヘッドライトの明かりを頼りに歩みを進めた。
風は無く、月明かりに照らし出された林道上には、道路脇の背の高い木々が黒い影を落としており、空に浮かぶ雲の合間には、沢山の星が輝いている。
2025年度最初の山行は、1月3日、今日と同じこの場所からのスタートとなったが、余りの雪の深さに、蟶山山頂まで5時間30分を要する事となり、後ろ髪を引かれる思いで白神岳登頂を断念した。
今日は、そのリベンジとなるが、予想天気図によれば、白神岳上空約5500mでは、マイナス36℃の寒気を伴った小さな低気圧が頭上を通過する予想となっており、現在の穏やかな天候とは裏腹に、これから悪天が予想される為、厳しいものとなりそうだ。
暫くして雪で埋もれた駐車場を横切り、林道を更に進むと、5時30分、見慣れた黄色い壁と三角屋根が特徴的な記帳所へと到着し、登山届けを済ませ、未だ暗い山道へと歩みを進めた。
少しして、この山道の入口のシンボルとなっている大きなブナの木の前で立ち止まり、また来た事を告げ、先へと進んだ。
暗闇が続く山道には、背後から寂しげな海鳴りが響き渡っており、海上には月が輝き、さざ波が立つ海面を照らしている。
進む程に深さを増す雪は、既に膝下程度の深さとなっており、トレースが残されているとは言え、今日も容易には進む事ができない状況だ。
少しして、最初の難所である急登が現れたが、雪が深くアイゼン無しではとても登れる様な状況に無い為、左手から大きく巻く事とした。
下方にサラサラと流れる沢の音を聞きながら、深い雪で覆われた急な斜面に足場を形成しつつ、一歩、また一歩とトラバースして行く。
6時、標高約340m地点へと到着し、背中からザックを下ろし、休憩する事とした。
森の中は、辺り一面深い雪に覆われており、木に積もった雪は、その重みで大きく枝をしならせている。
ここから先は、山道を離れ、蟶山へと直登する急登が待つ尾根を辿る事となる。
一息ついた後は、ザックを背負い直し、深い雪が覆う尾根筋へと歩みを進めた。
少しして、細いブナの木が立ち並ぶ急登へと差し掛かり、膝上程の深さの雪を膝で固めては足場を作り、一歩、また一歩と登って行くが、体力の消耗が激しく、数歩進んでは立ち止まりつつ登って行く。
暫くして急登を終え、引き続き尾根を辿るが、先日と比べ幾分足下の雪は締まっているのだが、相変わらず膝下程度の深さの雪が続いて行く。
7時30分、蟶山山頂に到着し、一息入れる事とした。
辺りはいつの間にか明るくなっており、雪が積もった山々の斜面を朝日が赤く染めている。
このままの天候が続いてくれたら良いのだが…ザックから取り出したパンを噛りつつ、祈るような気持ちで休憩を終え、深い雪が覆うブナの森の中へとまた歩みを進めた。
8時、高度約850m、今までの穏やかな環境は一変し、辺りには肌を刺すような冷たい風が流れ、足元の雪質も湿ったものから乾燥したものへと変貌した。
見上げれば、真っ白に雪化粧をしたブナの木の枝が、青い空を背景に美しいレース編みの様に頭上を覆っている。
ニット帽を今一度深く被り直し、先へと続く尾根に歩みを進めると、暫くして左手の木々の隙間には、青空の下、陽の光を浴びて真っ白に輝く稜線が見える。
稜線の美しい光景に感動し、気持ちが逸る中、灌木が立ち並ぶ深い雪で覆われた斜面を縫うように登って行く。
9時10分、高度約1100m、灌木帯を抜け、大峰分岐へと続く最後の急登へと差し掛かり、短く調整したトレッキングポールを雪面に深く突き刺し、スノーシューを蹴り込み、一歩づつ確実に登って行く。
1つ目の急登を登り終え、更に2つ目の急登へと取り付く。
と、突然雪面を踏み抜き、胸まで埋まる事となった。
スノーシューが雪中の笹薮に引っ掛かりつつも、何とか穴から這い出し、ふと振り向けば、背後には低気圧の接近に伴う黒い雲が横一列に並び、迫っている。
どうやら低気圧の通過までの時間は、あまり残されていない様だ。
気を取り直し登り続けると、大峰分岐の目印となる観測塔が現れ、ここから白神岳山頂が待つ南の方角へと進路を変える。
深い雪で覆われた稜線上の環境は一層厳しく、既に低気圧による強い風が吹き荒れているが、視界は良好であり、ここでバラクラバを装着し、ウェアのフードを深く被り、ジッパーを顎まで上げた。
そして、右手からの強い風を浴びつつ、大きな吹き溜まりを幾度も越え、深い雪の中、一人稜線上を進んで行く。
振り向けば、真っ白な雪面には自分だけの深い足跡が残されて行く。
1235mのピークを越えると、視線の先には、雪で覆われた山頂手前のトイレ棟が見える。
あと少し…ぬかるむ雪面に足跡を刻みつつ歩みを進め、トイレ棟の脇を抜け、その先の避難小屋の前を通り過ぎると、白神岳山頂の小高い丘が目の前に迫る。
そして、更に深い雪を漕ぎつつ、9時58分、標高1232.4mの白神岳山頂へと到着した。
日本海から迫る低気圧の黒い雲を目の前に、辺りは遥か遠くまで連なる白神山地の美しい山々の姿が見え、二ツ井や北秋田市方面の盆地には雲海も見える。
360度遮るものもない山頂からの美しい景色に感動しつつ、記念撮影を済ませた数分後…突然真横から叩きつける雹と共に、辺りは一瞬にして白一色となり、視界は失われた。
堪らずに雪面に置いていたトレッキングポールを拾い上げ、急いで避難小屋の裏へと身を隠した。
3階の軒下まで雪に埋まった避難小屋の裏で暫く様子を窺うが、状況に変わりはなく、雪を伴った強い風は容赦なく体温を奪い、気力を削ぎ落として行く。
現在、正に低気圧が頭上を通過中なのだろう…視界は5〜8m程、幸い雪が深い為、既に不明瞭ではあるが、今ならまだ雪面に残された足跡を辿れそうだ。
更に吹雪に遭遇した場合に備え、方位角度を記し、防水処理を施した地形図とコンパスも胸のホルダーにしまってある。
現在の状況から下山可能と判断し、心を落ち着け、真っ白な空間が広がる稜線上へと足を踏み出した。
かろうじて足元に見えるスノーシューとトレッキングポールの丸い小さな穴を頼りに、ゆっくりと歩みを進める。
まるで真っ白な夢の中にいる様な感覚に襲われ、方向感覚が失われてゆく…。
時折、視認できなかった足下の凹凸に足を取られ、意図せず転倒させられるが、左手から吹き付ける氷の粒を伴った強い風は体を煽り続け、立ち止まる事を許してはくれない。
やがて大峰分岐の観測塔前に到着。
ここから西へと進路を変え、正面から吹き付ける風雪に耐えつつ歩みを進める。
耳には強い風にバタバタとはためくウェアの音と、氷の粒がぶつかるバチバチという音が聞こえ、頬には痛みが走る。
そして、急勾配の斜面にトレッキングポールを突き刺し、スノーシューを蹴り込みつつ慎重に下り、灌木が立ち並ぶ樹林帯へと身を隠した。
風雪はおさまり、ホット胸をなで下ろしつつ、今下ってきた斜面の上を見上げると、つい先程まで居た稜線上は雲に覆われ、大荒れの様相が見て取れる。
後は、往路の足跡を辿るだけだ…。
そして一息ついた後は、2025年度最初の登頂の達成感を胸に、下山の途に着いた。
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