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妹ふたりはそれぞれ結婚し、実家を出た。
元気だった祖母は、転んで手首を骨折してから
畑仕事へ出る機会もほとんど無くなってしまい、
縁側の椅子に座っている時間が長くなった。
ちゃみはヒト年齢に換算するとシニアに入り、
「あんたもお母さんと同じ位の歳になった。」と
その頃の母がよく言っていた。
さすがに子猫の頃の様に家の中を走り回ったり
する事は殆ど無くなり、縁側の祖母の膝上に
居る事も多くなっていた。
外に出ることがめっきり減り、変化の乏しい
日々は、既に齢90代半ばだった祖母の身体を
次第に弱らせてゆく。
心疾患治療による血圧低下効果が、度重なる
意識混濁を招いてしまうというジレンマを生む。
自宅療養は困難となり、祖母の入院が決まった。
その事を、母がちゃみに一生懸命説明していた。
言葉が分かる筈もないのだが、今となれば、
雰囲気で祖母の状況を何となく察していたのかも
しれないと思ったりもする。
ひとり黙って小さくなっているちゃみが、
心なしかとても寂しそうに見えた。