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2025年05月11日 14:13レビューレビュー(書籍)全体に公開

バリ山行

芥川賞を受賞した松永K三蔵(まつながけーさんぞう、と読む)さんのバリ山行を読んだ。

山がテーマになっている小説ならとりあえずおさえておこうと思いまして

舞台となる山は六甲山です

バリとあるからバリエーションルートを歩くシーンもちゃんとある。また、いわゆる日帰り登山のシーンもたびたび現れる

登場人物の中にバリを志向する人物がいる。主人公は普通の山登りをしているので、いわば対極的な存在として描かれる。バリをする人物は道なき道を歩くことで生きている実感を得ているようだ。一般的なサラリーマンである主人公は、バリは現実逃避と反発するが、思うことがあってやがて自らバリをするようになってしまう

生を実感する為の登山、という切り口は、わりとありふれている。

「五大陸最高峰を制したい」
「8000m峰を全て踏破したい」
最近ではそのような未踏峰は少なくなってきたから、
「〇〇の北壁をアルパインスタイルで登りたい」
とか欲求も細かくなっている。

クライマーは壁を登る。登りたい。出来れば誰も登ったことの無い壁が望ましい。登攀に成功すれば、クライマーの歩いたルートがその後のクライマーにとって道(ライン)となる。そのラインが美しければ美しい程良い。

ギャチュンカンで遭難して九死に一生を得て生還したクライマー山野井泰史の手記にはそんな事が書いてあった。昨夏惜しくもK 2で亡くなった中島健郎、平出和也も似たようなことをテレビで言っていた。

バリを志向する人も、ベクトルとしては彼らと変わらない気がする。ただ、活動の場がレジャー登山の鼻先で行われている所に違いがある。
本書でも、レジャー登山中に、バリ山行中の人が邂逅するシーンが印象的に描かれていてはっとさせられた。

ヒマラヤの未踏峰と違って、バリ山行は達成しても誰からも誉められないし、むしろ批判の対象となる。批判されても命を危険にさらしても、とにかく生を実感したい、と言う欲求に突き動かされている。むしろ純粋なのかもしれない。

舞台が六甲山てのもうまいね。知識として知ってるだけだが、住宅街の裏山みたいなエリアで、中には縦走路が団地の中を突っ切ってるとこもあるそうじゃないか 日常生活の隣に、非日常のレジャー登山の世界があって、そのすぐ隣で死のリスクと勝手に向き合っているバリの世界がある。

文体はさらりとして読み易い。普通の現代小説のような語り口。世界の極地で未踏峰に挑むような荘厳な文章ではない。なにせ六甲山ですからそんな文体は似合わない。

ある時、主人公はバリに連れて行ってもらう。
あくまで六甲山でレジャー登山を楽しんでる感じの文体で、バリに踏み入れ、徐々に身の危険を感じ始める。でも文体は軽いまま。このギャップが良かった。狙ってこういう軽い文章にしたんじゃないかな

正規の登山道だって危険だし、生活圏内でもいきなり道路が陥没したり、車と接触したり、刃物振り回す人と遭遇したりして死んでしまう事もある。大事なのは、どんな時にでも自分の身は自分で守ること。主人公は過去リストラに遭った事がトラウマになってて、世の中の事は自分の力ではどうにもならないと諦めている。自分の力を過小評価している。バリをする事で主人公は少し吹っ切れて物語は終わる

そう言えば、漫画の「岳」の中にもそんな回があったな。仕事辞めたくてしようがない人物がやけになってアルプスにやってきて遭難する。それを主人公の島崎三歩が助ける。死にかけたんだから怖いことなど無い、といった感じで会社に戻ると、先輩に何か変わったなと言われる、そんなストーリーだったかな

自分はバリまで行かなくても十分生を実感出来ますので必要ないかな(笑) 六甲山は機会があったら歩いてみよう 山域が広すぎてどのルートを歩くべきか、それが難しい
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