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2025年05月25日 14:33映画感想全体に公開

帰れない山

帰れない山と言う映画を観た
ヨーロッパアルプスが舞台らしい
とりあえず綺麗な山岳景観が観れれば十分て感じで観た

映像もさることながら、結構真面目で繊細なストーリー展開、詳しく知りたくなって原作も読んだ

作者はイタリア人作家のパオロ・コニェッティ。この作品で日本の芥川賞に当たるストレーガ賞を受賞したらしい

主要登場人物は、
・主人公(ピエトロ)
・父(ジョバンニ)
・友人(ブルーノ)
・母(フランチェスカ)
の4人

それぞれが山と関わるが、その関わり方が異なる

父と主人公の登山シーンでやっと美しい山岳景色を見れる。調べたら、モンテローザ山群で撮影されたようだ。小説の舞台と一緒。いやはや、素晴らしい山岳景色だった。正直、そこだけでも観てよかったと言えます

印象的だったのは、父ジョバンニの歩き方
いやにスピードが速い。子供のことなぞお構い無し。しかも山頂に着いたと思ったら、一服してさっさと下る。下りはほとんどトレラン

原作でもそのように描かれている。他もそうだが、映画は原作にとにかく忠実に作られている。100m先の先行者を追い抜く事を目標に歩く。追い抜いたら次の先行者を探す。それが彼の人生観を表しているかのよう。仕事もまったく力を抜くこと無く全身全霊で打ち込んで、当然の帰結として過労死する(あ、ネタバレしちゃった)。心のどこかでは山で安息を得たいと思っていたようだが、止まったら死ぬとでも言わんばかりに生き急ぐ。主人公のピエトロはそんな父親に反発する。まあ、当然でしょう

母フランチェスカは山を愛しているが、中腹にある村(里)での生活を愛していてあまり登山しない。人間と自然が交じり合った場所で上手くバランス取って生きている。父ジョバンニが森林限界より上の荒涼とした山岳景観にしか価値を見いださないのと対比して描かれる。

井上靖の「氷壁」でも似たような描写があったな。あるクライマーは厳冬期の絶壁の美しさを惚れた女性に見せたいという。もう1人のクライマーはその女性とは樹林帯でのんびり歩きたいと思う。

ともかく、母親は人と自然との間でうまくバランスを取って生きている。本のなかでも、どこか尖った生き方をしている男どもを繋げる役割を担っている

主人公一家は、グリーンシーズンになるとある村で長期滞在する。主人公は子供の頃からそのように夏を過ごしていて、その村で知り合ったのが友人のブルーノだ。

ブルーノは山の世界しか知らない。特に主人公一家が滞在するモンテローザ山群の1エリアしか知らない。都会で生きようとせず、結局、大人になってもその山と山麓の中で完結する生き方をする

主人公のピエトロは宙ぶらりんでふらふらしている。父のようにストイックにも、友ブルーノのようにもなれず、かと言ってどうしたいのかもわからず迷える羊のように生きる

映画も小説も、前半のハイライトは、父ジョバンニが亡くなった後に、父の夢を継いで山小屋をブルーノと二人きりで作り上げる所。その過程で、反発したまま途切れた親子が仲直りしていく。まあ、父親は死んでるので、仲直りと言うより息子の心が浄化される感じ。同時にほとんど切れかけていたブルーノとの友情も復活する。主人公が一人で山小屋近くの山頂を登頂するシーンはとても美しくて印象に残る。トラウマだった山と仲直りする大事なシーンだ

本来ならこれでおしまいで良いのだが、まだまだ続く この映画は長い。確か2時間20分以上ある(だから、このモメントも長くなる笑)

後半は友ブルーノとの関わりを描く。平たく言うとブルーノは破滅していくのだが、それがタイトルに繋がっていく

前半と後半のテーマがちぐはぐでアンバランスだと感じた。作者の自伝的要素の多い作品らしい。半生を追うなら、ストーリーがちぐはぐなのは仕方がないのかな

映画の原題「Le otto montagne」(レオットモンターニェ)は、8つの山と言う意味

途中、主人公はネパールを旅する。そこで、仏教の世界観を知る。それによると、世界の中心には須弥山と言う山があり、そのまわりに8つの山がある。須弥山一つを登る人と、8つの山を登る人、どちらがより多くのことを学んでいるか、問いが投げかけられる。どうやら、須弥山を登っているのがブルーノで、8つの山をめぐっているのがピエトロのようだ

本の中では、ブルーノ、つまり須弥山を目指すのが王道だとピエトロは言っていた気がする。映画ではどっちだったかな、、忘れた(笑)

映画のラストは物悲しい。何とかならんかったのかなあと思う。8つの頂すらトラバースしてしまいそうな意思弱な自分としては、そう思ってしまう

仏教的な死生観が取り入れられてる辺りがイタリアで受けた理由なのかも 確かに山小屋作ってハッピーエンドじゃ、陽気なイタリアンと言えど流石に最高峰の賞はあげられないか。

悪くはないし、なんとなく言いたいことも東洋人だけに分かるのだが、どうしても全体がとっ散らかってて、手放しで絶賛する感じがしない。もう少し深読みが必要なのかも
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