写真は赤子の私を連れて両親が越して来た、谷戸の古家の縁側です。
人の記憶は不思議なもので、父のアルバムを整理していてこの写真を見つけた瞬間、「ジョン」という犬の名前が記憶の底から浮かび上がって来ました。
母の話しでは、ジョン はご近所の飼い犬で、よく我が家へ遊びに来て私を子守してくれたそうです。
当時は犬を放し飼いにしている家も多く、私は物心ついた頃から毎朝近所の犬たちを呼び集め、近くの里山を散歩していました。
ジョン以外にも「アラス」「マリ」「タケ」などと言う名の犬たちが私の友達でした。
時には散歩のついでに山から枯れ枝を拾って来て、竈(へっつい)と羽釜でご飯を炊いているお隣のお婆さんに渡し、焚き付けのごほうびに飴玉をもらう楽しみもありました。
この時代、子供たちはガキ大将のお兄ちゃんの下で徒党を組んで遊んでいましたが、一番下っ端の私にとって、犬たちだけが私に従ってくれる家来でした。
のどかな谷戸と古家の縁側は、幼年時代の私の揺り籠でした。
今ではすっかり老爺となり、携わってきた仕事や関わった人の名前などは記憶から剥がれ落ち、学生時代や幼いころの何気ない記憶が塗装の下地のように表れてきます。
いづれ「ジョン」の名が記憶から剥がれ落ちる時、私自身も現世から剥がれ消えるのでしょう。
【写真 ジョンと私】
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