裏表紙には「さわやかな山行紀集」とあるが、とてもさわやかではない。
この本を上梓すると相前後して、彼「加藤保男」は行方不明で遭難しているからである。
エベレストやアイガー、グランドジョラス、マナスル等の雪山を踏破した最高レベルの登山家の山行紀行文である。紀行文と呼ぶのがふさわしくない厳しくも輝いている山行記録集だ。
エベレストを中国側からとチベット側からの両側から登ったのは彼だけである。
人並み外れた根性と体力そして技術を持っていることは、いきなり初登山が「槍ヶ岳東稜積雪期第四登」であることからも驚かされるし、その証左ともいえる。
読み進めていくと、淡々とした文章の中から厳しい寒さや強風、そして身体の痛みを感じ取ることが出来る。とても辛く寒い文章だ。彼には怖さと言うことは無いのだろうか。
凍傷で手足の指先が失われてもへこたれるそぶりは全くない。
疲労と酸素不足で朦朧とした意識となり、視界が効かなくなり、歩いているつもりが20分も同じ処にじっとしていたなどとは死と背中合わせの登山だ。
滑落も怖くない様な書きぶりである。
自分の登山とは全く異なる世界の登山を、書籍の中から感じることが出来た。
これから自分は軽い冬山には登るだろうが、自分なりに山を楽しむと共に山を恐れて山行を続けていこうと身を引き締め直した。
参考
https://acore-omiya.com/katoyasuo/
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