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ウーン、一言で言うと山岳小説と言うより、山を舞台に借りた陳腐な男女の恋愛小説だ。火曜ミステリー劇場、或いは山岳探偵ドラマのようだった。
ということで読後の私の評価は合格点は無理、並・△だ。
とはいえまだ歩いたことがない谷川連峰の蓬峠から茂倉岳や大障子ノ頭や万太郎山が出てくる。将来歩いてみたい稜線だ。
時折素敵な表現が出てくる。
・山に入って、美しい自然を見、きれいな空気を吸っていると、無性に歩きたくなる。重い荷物を背負って、肉体的にずいぶんつらい思いをしているのにかかわらず、心では歩こうとしているのだ。それが結局は過度の疲労につながるんだな。はやる気持ちを押えて。むしろ歩くことなぞ意識せずに歩くことが登山の秘訣なんだ。
歩くことを意識せずに歩く−彼女は森の音を聞いた。鈴かな森の中にも音はあった。かさこそと散っていく落ち葉の音が森の暗い茂みの中で寄り集まって、それはかなりな音になるけれど、山は依然として静かであるとしか感じられないのは、その日が、谷川岳としては珍しいほど好天気に恵まれていたからであった。
・朝日がそのあたりを照らしていた。山はいっせいに眼ざめて、その日の仕事にとりかかったようだった。一夜のうちに冬になった山々は、忙しそうに動いていた。山そのものが動くのではなく、昨夜降り積もった雪が地吹雪となって移動しているのである。稜線を飛雪がしのびやかに這って行った。朝日が当たると、、燃えるように見える、まさしく、それは雪の炎にように壮麗であった。
雪山のモルゲンロートが雪の炎だったのだ。
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