この一冊は吉村昭ファンにお勧めの新書である。
「破獄」「長英逃亡」「海の祭礼」「桜田門外ノ変」「天狗争乱」「ニコライ遭難」「生麦事件」「戦艦武蔵」「陸奥爆沈」「深海の使者」
これらの作品にまつわる裏話や苦労話等が書かれている。
上述の吉村昭作品を全部読んだ私にとって、とても面白い随筆集だった。
いつもながらの淡々として冗長にならない文体、大仰な表現もなく気持ちよく読み進められる文体だ。
そして吉村氏がいかに丁寧に史実を集め回っていたのか、また資料提供者等協力者への心配りをいかに大切にしていたかがうかがい知れた。
私は平成17年から20年まで山梨県甲府で勤務した。
山梨勤務の最後の頃、吉村氏の「休暇」という作品が山梨県で撮影されたということで、ロータリーだったか商工会議所だったか、どの伝なのか覚えていないが、映画「休暇」のリーフレット配布の協力かチケット購入の協力かがあり、初めて吉村昭という作家のことを知ったのだ。
一人の作家の一つの作品を読み気に入ると、その作家の他の作品を読みあさる癖がある私、「休暇」という短編小説を読み、じわっとした感銘を受け、その後吉村昭作品にのめり込んでいった。
学生の頃は夏目漱石や小林秀雄などなど、社会人になってからは池波正太郎、吉川英治、司馬遼太郎などを読みあさっていたが、少し前までは吉村昭の作品を読みあさっていたものだ。
東京都荒川区にある吉村昭記念館を訪れるほどのめり込んで読んでいた。
(最近は強いて言えば幸田文や高村薫かな。)
過去の事実を可能な限り事実に即して作品に仕立て上げるというのが吉村流である。創作はしない事を基本としている。その時の天気も調べて表現するのだ。
だからこそ登場人物に話させる一言にも多いに悩んだとある。そして各地の方言は上っ面な方言になってしまう危険があるのですべて標準語にしたとあった。
薩摩の武士でも標準語、東北の人でも標準語とうことだ。
今の大河ドラマとの違いを感じたところである。江戸時代の武士を描きながらすり足をさせないで西洋走りをさせてなんだこれは、である。
「史実を歩く」は作家という稼業の大変さと面白さを感じさせてくれた一冊だ。
作品を読んだだけでは解らないことを知るともう一度作品を読みたくなってくる。
何十冊か在った吉村昭の本をブックオフなんかに二束三文で投げ売りしなければ良かったと後悔する私であった。
何十冊かをブックオフで投げ売り🤭
かつて池波正太郎の本が投げ売りされており、みかん箱一箱位、1冊100円で買いました。繰り返し読んだので本はボロボロです。
我が家の隣は大きな図書館。新田次郎は全集で読みました。吉村昭も数冊読みましたが、いい印象を持っています。24cさんがそうおっしゃるなら全集で読んでみたくなりました。
でも近頃、毎週のように山に出かけているせいか、気持ちのゆとりが無くて、本を読む時間がなくなってしまいました。
「大峯奥駈道」を歩くことができ、満足したので、山との向き合い方を考えたいと思っています。
素敵な本の紹介、ありがとうございます^_^
私は今、山に行く気力が出ないので読書が少し出来ているだけです。
山や大峯奥駈道を歩いている方が幸せです。何といってもリアルですからね。
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