アルピニスト・クライマーの彼が自己の内面と向き合って書かれた文章が一冊に纏められている。読むと特に滝谷や前穂高登攀が好きだったことがわかる。
クライミングの登攀紀行としても読めるが、自己の精神の葛藤が多く書かれている。
クライミング登攀紀行を読むと、彼が相当にレベルの高い優秀なクライマーであることが判る。
そして一人の女性を中心に恋心に揺れる無骨な若者の内面が赤裸々に描かれている。
また自分一人だけ好き勝手に山に入り、家族のことを帰り見ない自分への葛藤も描かれている。
死を見つめるクライマーの気持が素直に描かれている。
登攀中に疲れからトップを変り、トップになった友人が滑落し一本のピトンで二人が上下に吊り下がり九死に一生を得た場面では、自分を強く責める心の悶絶が見事に描かれている。
まさに死と紙一重の状況におけるクライマーの心の動きが描かれており、読んでいる読者の私がハラハラしてしまう臨場感だ。
また所々に挿入されている詩は、いかにもアルプの世界である。実際この本には彼が昭和33年アルプ第二号から第六号までに掲載された文章が含まれている。
滝谷登攀とは無縁の私だが、自分がかつて前穂高や奥穂高、北穂高に登ったときの景色や自分の気持を思い出しながら楽しく読み終えることが出来た。
著者
青柳 健(あおやぎ けん、1930年6月9日 -)は、日本の実業家。書店創業者、登山家、詩人、随筆家。
1950年に長野県松本深志高等学校を卒業後、東京外国語大学フランス語学科入学。哲学科教授であった串田孫一に出会い、山岳部創設に関わる。東京外国語大学山岳会会員。まいんべるく会創立会員。もんたにゆ会(1971年 - 2011年)主宰。1968年穂高書店を創業する。2017年現在は同社の会長を務める。
写真1:当該の古書
写真2:涸沢からの奥穂高モルゲンロート
写真3:北穂高岳へ登る途中に見えた前穂高岳
写真2と3は以下の自身の山行レコから
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-3388518.html
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