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内容説明
名作の中に描かれた美しい日本の山の心象風景。
目次
文学と自然
太宰治「富岳百景」
志賀直哉「暗夜行路」の大山
「伊豆の踊子」「あすなろ物語」の天城山
芥川竜之介「河童」の槍ガ岳
瓜生卓造「金精峠」
深田久弥「G.S.L倶楽部」「雪山の一週間」
夏目漱石「二百十日」の阿蘇
泉鏡花「高野聖」の飛騨越え
横光利一「旅愁」のチロル
梅崎春生「桜島」の桜島岳
大仏次郎「旅路」の針ノ木峠
若杉慧「青春前期」の八ガ岳
葛西善蔵「湖畔手記」の奥日光
井伏鱒二「山峡風物誌」と深沢七郎「楢山節考」
山岳小説の可能性―氷壁を中心に
虚栄の山―登山家の虚栄について
山岳小説作家小論
紹介されている本は、伊豆の踊子や河童以外、私は読んだことのない本が多かった。
太宰治の「富岳百景」は富士山。志賀直哉「暗夜行路」は伯耆大山。川端康成の「伊豆の踊子」は天城山。芥川竜之介「河童」は槍ヶ岳。
この辺りは有名どころだが、それ以外は知らなかったので読んでみたくなった。
「鞍馬天狗」や「天皇の世紀」で有名な大佛次郎の「旅路」は後立山連峰の針ノ木峠が舞台だというので最も興味が湧き、早速最寄の図書館に借り出しを依頼した。
「旅路」は昭和27年、朝日新聞に連載された新聞小説である。この小説のために作者は27年8月、北アルプスの針ノ木峠に実際に登ってきている。
一人息子を亡くした父親が、その息子がよく山に登っていたことを思いだし、息子の登った山に自分も登ってみようと思い立つ。そして山に登った父親は心が洗われる。
針ノ木雪渓の描写のくだり
八月も終わりに近いのに木々の新緑は初夏のように見えた。深い森の中に、小鳥の囀りは絶え間ない。行く手の木の枝が透いて来ると、壁が立つように白いものが、冬の雪を残した雪渓であった。「これをあの喉まで登るんです」−中略−小さい山百合が咲いている崖に立って、雪渓の裾を見ると大きく雪が割れた下がトンネルのような空洞となり谷水が強い勢いで流れて出て来るのが見えた。
余り山登りに親しんでいない人が登山の道中に接した風景に対して、新鮮な感動を素直に描写しているのが初々しく微笑ましい。好ましい。
さて図書館からの予約確保の連絡が待ち遠しい。
※写真2 蓮華岳への尾根を登る途中からの針ノ木岳
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-4488360.html
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