これは私が常々思っている事ですが、現実はルート整備をした事がある人自体が100人に一人いるかどうかというレベルでしょう。
都レンジャーなど仕事でやっている人を除けば、9割以上はその山に愛着を持つ高齢者です。
その100人に一人ですら、組織的な行動にはならず、ほぼ単独での作業です。
大きな倒木があると、毎年少しずつ片付いているのに気付くでしょう。
極稀にチェーンソーを持って歩く人もいるようですが(知り合い以外では未だに一人も見た事がない)、一人でやる作業には限界があります。
台風の後など、確実に荒れていると分かるタイミングでは、作業装備を持って歩く人は多いはずですが、そういうタイミングでザックや普通のハイキング用の装備(手袋など)すら持たずに、ただ走るためだけに山に入る人もいるなど、「一体何考えてんの?」と首をかしげたくなる事も多いです。
■ なぜ若い人はルート整備をしないの?
高尾山に何百回と足を運ぶ人は、高尾山に相当な愛着があるはずですが。
『山道は誰かが整備してくれるもの』
という甘えが無いでしょうか?
高尾山の何号路と名が付くようなルートは、そもそも個人がルート整備するような状況にはなりません。それ以前に、そうなってしまったらすぐに通行止にされてしまいます。
しかし、名のある山に繋がる道で、管理されているルート(登山口などに行政による矢羽根が設置されている)は甘く見てもせいぜい2〜3割で、その中でも高尾山のように迅速な対応や整備予算が付くルートは「稀」と言っていいレベルです。
多くは年に数回しか巡回されず、台風被害の倒木などがあっても対応に数ヶ月かかるのが実態です。
それ以外の大部分のルート(1日数人〜せいぜい数十人しか通らない)は、林野庁などの地権者がたまたま仕事の都合で対応する場合を除けば、誰か心ある人の勝手な応急整備を気長に待つしかないのが現実です。
■ ルート整備は敷居が高い?
やってみたいと思っても、どこでやればいいのか、どんな装備が必要なのか、違法行為にならないか、悩む所は多いでしょう。
いっそどこかの団体(山岳会や都のサポートレンジャーなど)に入会するのも1つの選択ですが、団体は特定のエリアに限定されているのが最大のネックで、課題である管理されないルートの整備はしません。なので、この選択は無意味です。
法的には、森林法と都市公園法で禁止行為が定められています。共通する禁止行為には「竹木を伐採し、又は植物を採取すること」というのがあります。
「竹木の伐採」とは何か。そこで悩むでしょう。
森林法では、下刈り・枝打ち・倒木枯木の損傷は許可が不要とされています。
植林では、10センチ以上の雑木も刈り払いされる事もあります。
管理されているルートなのかどうかを見極めるには、何度か同じルートを歩いてみるのが手っ取り早いのですが、薮になっていた時点で管理されていない事は明白です。
公有地でない事が分かっている場合は、「地元で話を聞く」というのが鉄則です。
農家やお寺が地主である事も多いので、気軽に話を聞いてください。
■ ルート整備初心者向けの装備
写真は、普通サイズのザックに無理なく入る4点セットです。
使用頻度の多い順に手前から、
・枝切り鋏:1000円以下のもの。ホルダーはダイソーですが既に廃盤
・剪定用ノコギリ:24センチ以下、2000円以下。折り畳みでも良い
・草刈り鎌:ホームセンターブランドで200円程。笹薮程度まで
・片手鍬:浅香工業で800円程度。打撃にも使え、1センチ程の木の根を切断出来る
※鎌と鍬は、刃先が危険なので、プラバンでハードケースを自作するのがお薦め。
これだけ揃えておけば、7〜8割のルート整備が可能です。
定点作業になると、虫(特にブヨ)に絡まれるので、アースジェット薮蚊用(8時間)があると安心です。
誰とは言いませんが、以前のミッションで、カタナボーイ(刃渡り650mm)を電車移動で持って来た人がいました。
普通のザックには入らないので、持ってくるだけでも大変ですが、大木があっという間に切れるのは魅力です。
そこまでの覚悟は必要ないという事ですが、某アイドルグループの傷害事件以後、ノコギリ自体が電車の持ち込み制限品である事は、若干敷居が高いでしょう。あくまで自己責任で。
ここまで読んで「自分もやってみたい」と思うのは、10人に一人いるかどうかでしょう。
その程度で十分です。
■私がなぜ山道整備を始めたのか
私が山道整備をしているのは、八王子城に関係する範囲だけですが、その範囲は八王子の西半分から最大で相模湖東部までを含みます。
そもそも、なぜ戦国城山の古道探索を始めたのかという話もありますが、
先人が地図に残した古道を歩くと、ことごとく薮や倒木、土砂崩れにより塞がれ、まともにルートを測れないのです。
「このままで道として記録していいのか?」という罪悪感すらあります。
やり始めると、しまいには林野庁の使い捨て作業林道による古道破壊(断崖)で通れなくなったのを土木工事までする羽目にもなりました。
地図に記載した道が台風や植生により倒木・薮で通れなくなるのは、更に残念な状況なので、基本的にエンドレスという事でもあります。
「この城の山道を整備するには、1000人のボランティアが必要」
というのが、団体名『八王子城1000人隊』の元になっていますが、
実は私はボランティアという言葉が大嫌いで、単に自分がやりたい事だからやっているに過ぎないのです。
健康のために運動してカロリーを消費するのが目的だとしても、他に何の役にも立たない無駄な運動をするよりは、やったらやった分だけ結果が残せる方が建設的という事です。
まだこの城には未発見の遺構や軍道跡があります。
そこを明らかにする事で、知的好奇心が満たせるのも楽しいのです。
「山は一度嵌まると底無し」
という話はありますが、ピークハントやバリハイは、正に底なし沼です。
自分のホームポジションを持って、そこに集中的にアクティブに関わって行く人が増えれば、微々たる行政の予算に頼る事無しに、山道はもっと綺麗に安全に保たれるはずです。
自分も、登山道に覆い被さっている倒木で一人の人力で動くモノなどはよけたりもします。が、基本的には自然のままを登るのが登山なのかな?と思います。
整備が行き届いた所を歩きたいなら公園内を歩けばイイんじゃ?
まあ、高尾山辺りだと公園内と変わらんって事でしょうかね。
コメント有り難うございます。
山を楽しむという事では、なるべく自然のままである事に越したことはないですね。
楽しみ方は人それぞれなので、茨薮・倒木・崩落をそのまま突破するのが快感と思う人がいるのは否定しません。
整備されているはずの高尾山でも、何千人の靴で踏まれて擦り切れた、たった5センチの根っこが大怪我に繋がる場合もあります。
無駄に怪我をするような場所を残したくないと思うなら、可能な範囲の装備を持って山に入って欲しいと思う次第です。
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