政府は昨夜の閣議で、「若年者の登山及びそれに類似する行為等の禁止に関する法律(略称:若者登山禁止法)の法案を承認し、今国会に緊急提出することを決めた。本法案の国会審議については衆参両院で相当な難航、波乱が予想されているが、政府は強行採決も辞さない構え。この法案が可決されると、早ければ来年の山開きまでには、全国の主要山岳で30歳以下の若者の登山が全面的に禁止され、またそれと同時に現行の「中高年登山禁止法」は廃止される。(2面、15面に関連記事)
【解説】「若者登山禁止法」は、10年前に施行された「中高年登山禁止法」の影響で日本の若者が山に入り浸り、それが高じて就学、就業を拒否する者が爆発的に増加したせいで生じた、社会全体の生産性の急激な低下、国際的経済競争力の劣化、治安の悪化を挽回するため、現政権が死活と延命を賭けて成立、施行を目論んでいる法案だ。
しかし、この法律の施行にはきわめて大きな困難が横たわっている。10年前の「中高年登山禁止法」の場合とはあきらかに状況がちがう。
「中高年」の場合は、何はともあれ「相手」は「おとな」だった。彼らは、それなりの人生経験を積んで、守るべき家族も、なにがしかの財産も持っていた。それら守るべきものを守るために、「諦めること」を知っていた。10年前の施行当時、一部の過激派中高年登山者は、山小屋を占拠して爆竹を鳴らしたり、登山口で座り込みをするなど、数々の実力行動に出たが、ごくわずかな警察力で容易く排除できたし、また後に続く者もほとんどいなかった。
だが、今回はちがう。「相手」は「こども」だ。人生経験もないし、守るべき家族も財産も持っていない。言うまでもなく中高年より体力も気力もある。相当な抵抗があることは必定だ。
しかも、10年前から、就学、就業を拒否して山にこもりだした若者たちは、すでによく知られているように、山域単位で自然発生的なコミューンを形成している。これらのコミューンは「若者登山禁止法」の前に立ちはだかる巨大な壁だ。
若者山岳コミューンの規模はさまざまだが、最も大きな単独コミューンである「槍穂連峰共和国」は、警察が把握しているだけでも約7万人の構成員を有するし、あるいは単独ではないにしろ、「南アルプス民主主義人民連峰」のごときは、数十の分散した山岳コミューンの緩やかな結合体であって、総計するとその数は10万人を超えるという。また、東京なら高尾山、関西なら六甲山系といった都市に近い山域にあるコミューンの場合は、常時山中で暮らす構成員は比較的少ないが、一朝事あらば10万人、20万人単位で準構成員やシンパを動員できるという。
これらのコミューンの存在が厄介なのは、彼らがコミューン内部で全生活を完結させられる体制をすでにほぼ構築しおわっているところにある。食糧をはじめとする生活必需品はほぼ自給自足できるし、水力発電、太陽光発電、風力発電を主体にエネルギーも自前で供給できる。若手医師、インターン、医学生、看護士、看護学生も多くいるので、医療についてもひと通りの体制が整っている。
「山に入り浸ってる」と一口にいっても、単に遊びや健康づくりを目的に登山を行っていたかつての中高年登山者たちとは、その「入り浸り」具合、真剣さがケタはずれにちがうのだ。彼らを山から排除するのは並大抵のことではない。彼らはその気になれば、十年、二十年、何十年でも山に「籠城」することができる。いや、彼らはもうすでに「籠城」しているのだ。
さらに憂慮すべきは、それらのコミューンの多くが、元自衛隊員、元警察の機動隊員など戦闘のプロたちを取り込んでいることだ。
彼らの多くは、もともと、10年前から「中高年登山禁止法」にもとづいて山から中高年登山者を排除するため、全国の主要山岳に配備された者たちであるが、山中で勤務するうちにしだいに山の魅力にとりつかれ、実社会からの逃走を夢見、やがて若者たちがコミューンを形成するのに合わせて、部隊を離れ、そこに自らの意志で入って行ったのである。防衛省、警察庁ともにひたすら秘匿しているが、関係筋の情報によるとその数は二千人から五千人におよぶという。
薄気味が悪いのは、彼らの中にいる、もともと現場指揮官クラスだった者たちだ。彼らはいまだに自衛隊、警視庁、道府県警察本部のかつての同僚たちと連絡を取り合っており、今回の法案に絡む権力中枢の情報を入手するとともに、同僚たちに蹶起を促しているという。そして、あろうことかその蹶起の呼びかけに呼応する若手指揮官があらわれはじめているというのだ。それらの若手指揮官たちは、自衛隊であれば尉官クラス、警察であればまだ警部補、警部クラスの者たちであるが、しかし彼ら「青年将校」たちが何らかの行動をもし起こしたら、無視できない規模の武力を動員できることは確かだ。
首相は、昨夜の閣議後の記者会見において、「言うことをきかない若者登山者には断固とした姿勢でのぞむつもりだ。警察力で不足なら、自衛隊の投入も辞さない」と、10年前と同じ決意のほどを語ってみせたが、今度の「相手」はかつての大人しい中高年登山者たちではない。首相には、この国を、西南戦争以来の内戦状態に陥れる覚悟はあるのだろうか。
こんばんわ。これから
夜勤やのにこんな面白い日記読んでたら遅刻しそう
あぁあれからもう10年も経ってしまったのか!光陰矢のごとし
近未来小説が書けそうな筆力!
「若者登山禁止法」にも「中高年登山禁止法」にも引っかからないわ
ラッキー
でもボヤボヤしていると,明日には
“30代〜40代者の登山禁止法”
が成立しそう
何事にもそうだが,“例外”は付きものなので,
何かしらの対策はとってもらわねば
夏の参議院選にでも立候補しようかしら
>miccyanさん
毎度ご愛読(笑)ありがとうございます。
我ながら仕事中になんでこんなアホなこと書いてんねん!と情けなくなります。
>araigengaさん
10年なんてアッという間です。
私は根気がないので小説はよう書きません。
こういう小学生の悪戯書きみたいなものしか。。
>kayo-piさん
あ、その手がありましたね。
「30代〜40代者の登山禁止法」。
今度いっぺん考えてみます。(笑)
私の場合は、どちらに属しますでしょうか?
登山禁止にならぬように気をつけねば。。。
すばらしき文才に1票
>ryuryu2580さん
お見かけしたところ、ダースベイダー卿でいらっしゃいますね?
あなた様の場合は、怖くて誰も登山禁止にできないのではないかと思われます・・・。
中高年登山禁止法が施行されて早10年、定年になって家族に相手にされない私は、中高年ランニング禁止法が施行されなかったことを幸いに、ランニングで鍛えた体力を財産に古い登山用具一式とともにコミューン目指して入山したものの、高度に先鋭化した若者たちに疎まれるのでありました。結局、美ケ原あたりに構成されていた、寂しきオヤジ達のコミューンを見つけここを拠点にたまに高山に出向くのでありました。
という感じになるんですかね。
あ、町の老人登山者を装った町へのお使い係りとしてなら若者コミューンに受け入れられますかね。
>bokemonさん
老人登山者同士寄り添って、若者たちの邪魔にならないよう、ひっそりと野山を楽しみましょう。あの「方丈記」の鴨長明のように。
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