(中略)
「何?鈴蘭台への道が見つかった?」。
6年1組美化委員・鈴木生徒の報告を聞いて、山田教頭はうわずった声をあげた。
「はい、そうであります、大隊長殿」。鈴木生徒も興奮気味に答える。
「私は以前、家族と一緒に菊水山から鈴蘭台までハイキングをしたことがありますが、確かにここを通ったおぼえがあります」。
神田が、鈴木の目を覗き込むようにして言った。
「証拠はあるのか?」
その口調には(いい加減なことは許さぬぞ)と言わんばかりの厳しさがこもっていた。そう聞かれた鈴木は、ちょっとムッとしたような表情を浮かべて神田に向き直った。
「はい、中隊長殿。証拠は、あれ、あそこに落ちている〈うまい棒〉の空き袋であります」。
鈴木生徒が指さすほうを見ると、密生した下生えの中に、〈うまい棒〉の空き袋がひとつ転がっていた。「たこ焼き味」であった。
「おお、確かにここを人が通った証拠だ」。山田教頭の声はふるえていた。その顔には、喜びとも驚きともつかぬ何か憑かれたような表情が浮かんでいた。
神田は、またしても(まずいな)と思った。
「大隊長殿、しかし、このような菓子の袋はごく軽量でありますから、風に飛ばされてきたものであるやも知れず、必ずしもこの袋の存在をもって判断を下すのはいかがなものかと・・・」。
「出発!!」。
山田教頭の甲高い声が、薮の中に響き渡った。
「鈴蘭台への道が見つかったぞ!菊水山暑中行軍隊は、これより当初の計画通り鈴蘭台へ向かう!」。
神田は思わず天を仰いだ。炎暑の只中にあって、神田の胸を冷たいものがおりていった。
(続く)
〈お断り〉
お読みいただいた小説には、現代においては不適切と思われる表現がありますが、執筆当時の時代背景や原作者の意図を勘案し、オリジナルのまま掲載させていただきました。
今日の展開はほぼ想定内ですが、文章力は大したものです。
これからがdonburiさんの奇想天外な閃きの世界に入っていくんでしょうね。
なお、三田部隊は兵力の損耗なく、シルバースター中佐以下全将兵無事帰営せり。以上。
>silverstarさん
中佐殿、無事ご凱旋、慶賀の至りであります。
それにしても、今日は天気がもって良かったですね。
一日ちがいで明日は雨みたいですから。ツイてますね。
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