「古(いにしえ)の所謂(いわゆる)善(よ)く戦う者は、勝ち易(やす)きに勝つ者なり。ゆえに善き者の戦うや、奇勝も無く、智名も無く、勇功も無し。」
[テキストは銀雀山漢簡孫子に基づく]
『孫子』形篇第四より。
古代中国の大古典、『孫子』が教える兵法とは、以下の三つである。
〇勝つこと。
〇最後に勝つこと。
〇楽して勝つこと。
孫子の兵法は、目先の勝ち負けや格好つけにこだわることを忌み、時間をかけてもよいから最後に楽に勝てるところまで体制を持っていくことを教える。「劣勢だから努力でカバーする」「頑張れば道が開ける」、こういった言葉は、孫子の兵法からは最も遠い。孫子は、戦いを水の動きにたとえる。高いところにある水は、必ず低いところに落ちていく。よく戦う者は、自軍の位置を高いところにある水のように置くことに勤めなければならない。ひとたび自軍の位置が高いところにあれば、敵軍の将兵がどんなに努力しようとも、無駄である。敵軍はなすすべもなく敗れ、屈服せざるをえない。大日本帝国は、1941年12月時点でアメリカに追い詰められたとき、すでに敗れる位置に置かれていた。そこから見事な作戦を立てようが、兵隊が命を散らして奮闘努力しようが、結局は無駄であった。これが戦の非情な法則である。
では、高いところに行くためには、何をなすべきだろうか?
それは、一つに明確な目標を定めて、時間をかけてもよいからそこに行くために日々の行動作戦を集中させることである。二つに一度や二度の撤退や後退は気にとめず、むしろ命を全うして情報を収集した点を評価することである。三つに基礎的な力を蓄えて、いつのまにか敵を凌駕するとき勝利となることを念頭に置くことである。これらのことは、山登りという作戦にも役立つことであろう。私のような山登り初心者は、孫子の兵法を心がけたいものだ。
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