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これが剱岳登頂へのキーフレーズだった。
今でこそ日本最難とは言えど一般登山道として開拓されているルートがある剱岳。当時は誰も登ったことがない前人未到の山とされ、決して登ってはいけない山などと恐れられてた剱岳。
そんな中、陸地測量部から剱岳登頂および測量、三角点設置を至上命令として言い渡された主人公の測量官や測夫の人たち。
みんな軍隊経験者で当時は発足間もなかった山岳会に先を越されるなど言語道断というぐらいプライドが高く、当時の地図の空白部分を埋めることに躍起だったこともあり、とても大変なプロジェクトだったと想像できた。
個人的には小説だけに留まらず映画化されてもいいのでは?と思うぐらい読み応えを感じたストーリーだった。
まず富山県の関係職員への挨拶回り、芦峅寺での根回しや案内依頼、現代のような物流も無い中で数多くの精密機材運搬など気が遠くなるような下準備から始まった。当時から芦峅寺は立山ガイドで有名な拠点だったが、剱岳となると芦峅寺の人ですら恐れていて反対だった。弘法大師ですら登れなかった、剱岳登頂を試みて生きて帰って来れた人が居ないなど怖い話ばっかりだった。それでも剱岳に登ったことがある人が居るのではないか?という伝説も薄々あったようだが信じる人が極端に少なかった。
やがて室堂を拠点に地形偵察が積み重ねられた。積雪期はまず仕事にならないため、それ以外の期間で見通しが利く日を見計らって立山や大日岳など地理的に剱岳に近い山々から剱岳をスケッチするなど忍耐や我慢が求められる骨な作業が丹念に積み重ねれた。積雪期を過ぎれば再び作業再開。
やっとのことで地形偵察が終わり三角点の撰点が出来るようになった。そして最終的には24箇所も三角点を撰んだ。すべては至上命令を果たすための足掛かりだった。
それでも剱岳登頂への道筋は見つからず、岩登りが得意な人ですら登れるかどうかというぐらい困難を極めていた。他にも五色ヶ原での濃霧で迷って遭難しそうになったり梅雨期の大雨で天幕が壊れるなど自然の恐ろしさが生々しく描かれているところも多い。何ヶ月も家族から離れて大自然の中で仕事と向き合う、大自然と向き合う、自分と向き合う測量官たちの一行に降りかかる困難はきっと文章では描写しきれないぐらいのものだろう。
今でこそ整備された登山道やGPSアプリもあって幅広い客層が楽しめる登山だが、物流も交通も全然現代ほどではない中で機材を運んだり、悪天候の中でも本来は人間が野宿すらしないような場所で天幕を張って過ごしたりと現代では想像すら出来ない世界だったと思う。
他にも様々な困難があり、早月尾根、別山尾根からのアプローチを試みるも上手く行かず、大雪渓を登った先の岩壁を攀じ登る最終選択肢を選ぶことになった一行。これを選んだキッカケは一行の閃きからだった。これこそがキーフレーズの本当の意味だった。長い間丹念に積み重ねた地形偵察や撰点作業など、まさに努力が報われるまで努力を重ねた結果として閃きが生まれたのだろう。
サッカーのリオネル・メッシ選手が「努力が報われないのではない。努力が報われるまで努力するものだ。」と力説している。これはその名セリフを体現してる小説だと思う。
そして梅雨期の中でも中晴れする日を予想して早朝から行動を開始して見事に剱岳登頂に成功した一行。
なんとなんと!!奈良朝時代のものであろう物が見つかった!!今でこそ歴史的事実として知られてるけど、陸地測量部の幹部は山岳会より先に登れたことを喜ぶどころか、物凄く衝撃を受けた事実だったようだ。
一方で測量官たちの一行は山岳会の人の晴天を見通す術を質問してくるなど謙虚な姿勢に共感し、剱岳登頂の本質をよく理解している集団だと認め、競争相手と見なしたことを反省するなど山岳会との雪解けムードに変わっていった。
三等三角点を設置するための機材を運ぶことなど、とても出来もしないことから四等三角点止まりになった。それでも積雪期が来る前に測量の仕事を済ませられたこそ剱岳登頂が叶ったことを喜べた一行、そしてそれを祝った山岳会。
ハッピーエンドで締めくくられるものの、骨な日々が生々しく描かれてて読み応えがあった。
最後に、添付した写真のうち1枚は自分が大天井岳に行った時に剱岳を望遠レンズで撮影したものだ。
「劒岳 点の記」、私も昔読んで感動しました。さすがにこれは映画化できないだろうと思っていましたが、2009年に映画化されています。もちろん見ましたが、映像美に圧倒されましたね。
さて、パイオニアスピリット溢れる作品がお好きなら「芙蓉の人 〜富士山頂の妻」もおすすめです。こちらは映画化はされていませんが、4回もTVドラマ化されています。こちらも参考に
https://www.yamareco.com/modules/diary/255871-detail-311365
おはようございます。
コメントの程ありがとうございます。
映画化されてること全然知らなかったです。情報提供ありがとうございます。
個人的には新田次郎さんの小説が好きなので、他の作品も合わせて読んでいきたいです!
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