大半の登山者はGPS利用はスマホが初めてかと思われます。
一部の人の中には「登山アプリの初公開は○○」・「GPS専用機は低性能」・「gpxナビでGPS専用機不要」・「gpxナビで紙の地図不要」などと、「スマホだけ登山」に過剰誘導する人がおります。
それぞれの特異点を論ずることもなく使用目的の相違点を論ずることのない争いには関わらないためにも地図読みの遷移を示してみます。
*:過去の日記との重複内容が含まれることをお詫びしておきます。
_______________
⚫:アイテムの説明
🔘「コンパス(方位磁石)」:
*:ヤマレコのコンパスと区別するためこの表記とする。
精度を上げるには真北への補正が必要。
補正機能付きコンパスを使うか、周縁部に角度表示付きコンパスを使う。
コンパス(方位磁石)アプリでも代用可能。
☆:角度表示付きコンパス(方位磁石)のN針に0°を合わせてから角度表示を補正値分回転修正すると0°目盛り方向が真北となるため地図への磁北線記入は不要となる。
*:よほど精度が必要な場合以外はおおよその方位でも対応可能。
🔘「高度計」:
アナログ式とデジタル式がある。
気圧計を兼ねているものが多いため使い方のクセを知る必要がある。
センサー非搭載のスマホもある。
🔘「斜度計」:
登山では主に冬山での傾斜角度から雪崩に巻き込まれる危険を知ることができる。
コンパス(方位磁石)アプリに機能搭載されることもある。
🔘「地形図」:
1/2.5万 地形図は地形情報の確認に必要。
旧地形図は測地系が異なるため緯度・経度の修正をしないと役に立たない。
稀に地図の修正が遅れているものがある。
カラー化された地域もありGPSツールの高機能化により組み合わせて使いやすくなってきた。
なので紙の地図の利用目的はまだ残っている。
🔘「登山地図」:
1/5万 地形図が標準ベースで耐水性。
出版社により更新頻度が異なる。
登山道情報が豊富。
🔘「電子地図」:
地形図や登山地図のデジタル判。
出版タイムラグがないため最新の情報が反映されやすい。
その為には入山者からのGPS位置付き情報提供が必要であり欠かせない。
🔘「GPS専用機」:
「ハンディタイプ」・「腕時計タイプ」・「衛星通信タイプ」があり、GPS性能も色々とある。
カラー / モノクロ、地図表示(詳細・簡易) / 座標表示、電池 / 内臓バッテリー、タッチパネル / ボタン操作、対応衛星の種類、ルートナビ、トラックバック…等々それぞれの特徴を理解しないと宝の持ち腐れとなる。
現在はスマホ連携が大半となっている。
腕時計タイプにはスマートウォッチも含まれる。
🔘「スマホ用 登山GPSアプリ」:
山岳マップ表示上で現在地を把握できるがスマホ機種により性能が左右する。
gpx形式ファイルによりルートナビが可能なことや、家族等が登山中の現在地を知る機能や現在地の送信、登山届の連携機能を持つものもあるため使い勝手が良い。
「山座アプリ」も有効性が高い。
🔘「救助要請システム」:
「ココヘリ」オーセンティックジャパン
「インリーチ・システム」ガーミン社
「スポット・システム」グローバルスター社
「フィールドコネクト」ポータルフィールド
コスパ的にはココヘリだろうが、テキスト通信可能なものは状況の送信ができるため救助側としては有り難いことだろう。
但し、送・受信できるものばかりでは無く、送信のみや事前設定のメッセージのみ送信だったりするため導入前の事前確認は欠かせない。
_______________
地図が出回っていなかった頃は山に精通している人以外の一般者は山に入ることなどありませんでした。
🔘初期の地形図の作成にあたっては締め切りに追われて未調査のまま作られた場所もあったため入山者からの指摘により修正された地形図も存在しました。
有名なのは「3沢が合流して出口が無い」というものです。
登山には地形図や登山地図+コンパス(方位磁石)と言われた時代が長かったのは高度計が一般普及しなかったからでしょうか?
🔘地図読み・読図と言われて大半の人は勘違いするのですが、A山の角度とB山の角度から現在地を特定するクロスベアリングという技術はAとBの山を経験から知っていなければならない技術であり知っていても荒天により見通しが悪ければ使えない技術です。
私は使ったこともないし使っている人を見たこともありません。
🔘基本的な使い方は登山前に《 登山口→分岐点1→分岐点2→山頂 》の各場所を地図で事前に確認することです。
等高線の密度から斜面の傾斜具合が把握できるので登山ルート周辺の地形を事前に3Dイメージします。
尾根筋と谷筋(沢筋)を判別しやすいカラー地図により地図読みも簡単になってきました。
実際の登山では分岐点を地図で確認して進行方向を見定めて進みます。
次のポイントまでの地形を見定めておけばルート逸脱の回避に繋がります。
よくあるのが下山時に降りる尾根を間違えることですがコンパス(方位磁石)を使えば間違った方位に進んでいることがわかるのでルートミスしても早めに元のポイントへ戻ることができます。
似たような地図とコンパス(方位磁石)の使い方ですが、現在地からA山が見えたとき地図から進行ルートへの角度もわかるのでその方向へ進むと別ルートへ進むことはありません。
こちらの使い方は過去の登山本で時々拝見しますが間違った場所にいることを認識せずに進んで遭難するリスクがあります。
冬山でこのような事態に陥っていることに気付かずに仲間から捜索願いを出されても全く違う山を捜索することになるため無線機の資格を取得する人が山岳会にはそれなりにいたそうです。
🔘GPS専用機が市販されだした頃はスキャン地図を入れて使える機種や地図の緯度・経度線に重ねて利用できるユニークな機能を備えたものもありました。ガーミンの日本進出以前の輸入販売やカシオのプロトレックも当時からありました。
大半のGPSは座標表示メインでしたが機種により簡易地図表示によりナビ・ログ取りも可能でした。
しかし衛星ロストや悪条件下での位置ズレ(3〜5km)が激しくクセを把握して利用する必要があり、この頃のGPS性能の実態を知っている人の中には今だに「GPSの誤動作」という表現を使う人もいます。
🔘私がハンディGPSを購入したのは2000年のことですが座標を読み込んで地図から現在地を知ることに留めて、ログ取り機能は利用しませんでした。
なので地図から尾根筋と沢筋を読んでおおまかにどのエリアにいるかの補助としてのGPS利用でした。
この後に南極でのブリザード時にGPSによりルートミスを防いだ記事が紹介されると購入する人が増えましたが、実際にGPSを所持している山菜採りを見たのは3人のみです。
この3人とは別の登山グループは冬山でGPSのバッテリー切れを起こしており当時からバッテリーの問題性は言われてきました。
私が最初に購入したGPSは現在の使用・仕様にはそぐわないため別のGPSに更新しています。
_______________
登山アプリの利用者の中にはgpxナビとルート逸脱通知に頼り切る人がいますが電子地図の地図読みができるほうがルートの危険把握には有効と考えられます。
広範囲を一度に把握できる紙の地図を利用したほうが簡単なので登山アプリとの併用により安全度が増します。
予備としてスマホの2個持ちやGPSツールの中ではスマートウォッチとの連携が有効度が高いようです。
スマホもGPSツールも実用年数があるため最新のほうが性能は高くなります。
山菜・キノコ採りの中にも巧みに登山アプリを使っている人がおり、登山アプリを知らない人には私もヤマレコを紹介しています。
🔘私は現在ガーミンのForetrex601を予備として併用していますがコレは使用者を選ぶGPSです。
Garmin FT601 表示例
┏━━━━┳━━━━┓─
┃TP ┃TP ┃
┃積算距離┃合計時間┃
─┣━━━━╋━━━━┫④
┃ 高度 ┃進行方向┃
③┣━━━━┻━━━━┫─
┃ 経緯度 ┃
─┣━━━━━━━━━┫②
┃ 校正気圧 ┃
┣━━━━━━━━━┫─
┃ ┃
┃ 時間 ┃①
┃ ┃
┗━━━━━━━━━┛─
(○内数字は画面表示項目数)
・高度補正のときは校正気圧を使う。
・TP表示は休憩を含むデータ。
・WGS84(経緯度)↔MGRS(UTMグリッド)。
🔘日本では山岳等の住所で指定されてもわからない救助要請のエリア座標にはUTMグリッドという独自の測地系を使いますが実態はMGRSであってUTM/UPSではありません。
簡単に説明すると、
エリア+座標値(3桁-3桁〜5桁-5桁)
での表示となりWGS84より簡便に表現できます。
(正式にはエリアと呼ばない)
UTMグリッドは東日本大震災の救助での混乱から採用されました。
外国ではUTM/UPSに移行しているようです。
*:ココヘリ等、救助要請システムに加入していれば利用価値の低い情報です。
_______________
登山アプリのgpxナビの有効性は認めますが、山菜採りのようにルートをそれたり目的地を変更する人にはこちらの使い方は残念ながら用途には合いません。
スマホの予備バッテリーや紙の地図等バックアップ装備も使用して遭難や不慮の事故を防ぎましょう。
_______________
楽しい思い出と共に安全下山することを願って。
eof 29
丁寧な情報をありがとうございます。
未だ2.5万図か2500図等でしか歩かない私にとって、とても勉強になります。(私の場合ヤマレコアプリは単なる軌跡の記録目的でしてσ(^◇^;)
【地形図と登山マップを見比べると初心者はもっと地図読みが楽になる】
今回古いカタログを引っ張り出したり、行政機関の捜索規格統一を再確認していたら実はもっと長文になってしまい過剰文章の削除や表現の見直しによりここまでサイズを縮小しました。
昔からGPS座標+紙地図だったためスマホ画面と紙地図を並べたり座標を確認したりと相変わらずのアナクロイドです。
同じ山への入山なのに事前に1/2.5万地形図を確認する癖が抜けません。
スマホ画面も状況によっては操作性に影響がでるようなので小型GPS FT601は手放せません。
尚、ハンディGPSは初心者こそ高級機を使わなければ混乱するのですが実用年数と価格を考えるとスマホアプリで間にあう気がします。最高級機以外はスマホと統合されるかGPSスマートウォッチになるでしょう !?
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する