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ピューリツアー賞のノンフィクション部門を今年受賞した。筆者は雑誌「ニューヨーカー」の女性記者で、時間と気合の入ったよい作品である。地球がこれまで5回の生物大絶滅を経験しているのはよく知られている。一番最近では白亜紀の終わり、恐竜が突如姿を消したあの大量絶滅が有名である。
カエルツボカビ菌による「パナマの黄金のカエル」の絶滅から、オオウミガラス、サンゴ、最後のスマトラサイ、コウモリ、筆者は世界各地に飛び、種の絶滅を防ぐ科学者たちの声を聞きながら、離島へ、ジャングルへ、砂漠へと分け入っていく。種が1年に一つ滅びていく…自然なサイクルの1000倍以上の速さで。スピードを更にあげながら。
自然環境の中にある生物群は、閉じた生態系の中でゆっくりと進化する。もしそこに、この地上をもの凄いスピードで移動する「種」が現れたとしたら。その種が、貪欲で冒険心に富み破壊的で賢い種だとしたら。
筆者は起こりつつある六度目の大絶滅の原因を、ヒトの中の「狂気の遺伝子」に帰している。
筆者は、ネアンデルタール人のゲノム解析をし、私たちの中にネアンデルタールの遺伝子が残っていると告げたペーボをマックス・プランク進化人類学研究所に訪ねる。そして25000年前にヒトがネアンデルタール人になしたことを考える。
今この世界でも、チンパンジー、ゴリラ、オランウータンなど大型類人猿はほぼ消えかかっている。ヒトは自分達に一番近いものを消し去ろうとしている。
気づいている人はたくさんいて、その原因もわかっていて、答えも知っていて、それでもどうにもならない。もどかしさより、暗い何か。
*ジャーナリストの視点で書いており専門書ではないが、多少この分野に関心がないと読むのが辛いかも。
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