今日は生まれて初めてお菓子作り、ニンジンのパウンドケーキである。といってもケーキミックスを利用して、ニンジンをすりおろして混ぜただけ。バターを尋常じゃない位使うのには驚いたけど、とりあえずオーブンの前で本を読みながら待つこと30分。いい匂い。サワークリームを添えていただく。高カロリーですけど。
ニンジンは使い勝手がよくて、煮ても焼いても茹でても蒸しても、勿論生でも、そして何に合わせてもいい最強野菜の一つ。嫌いな人はご愁傷さま。
これでいつでもお客さんを迎える準備はOK。神室や鬼首付近の山の帰りにでも遊びに来てくれる人いるかな。(ケーキは要予約です)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
最近読んだ本。山形のMOK氏からお借りした2冊。
「ラスト・マタギ」志田忠儀(角川書店)
「第十四世マタギ 松橋時幸一代記」甲斐崎圭(ヤマケイ文庫)
朝日連峰大井沢の志田忠儀さん、北秋田阿仁比立内の松橋時幸さん、いずれも伝説のマタギである。
志田さんは磐梯朝日国立公園の管理員でもあり、大井沢自然博物館館長もなさっていたのでご存知の方も多いはず。朝日の狩人との異名もあり。98歳で書かれた本だとか。優しい語り口で、クマ猟に限らず、ウサギやテン、イワナ、カジカ採りの話など、メインのフィールドである天狗角力山周辺の沢や尾根を舞台に、狩りをする志田さんの姿が目に浮かぶよう。
松橋さんの本は作家の甲斐崎さんが評伝として書かれたもので、小説仕立てになっている。ちょっと古い本の復刻版。北秋田の方言そのままの会話がなかなか重い。太平山地の奥、白子森の奥深くにクマを追うマタギの生き方、昭和の特に戦後史の中で最後のマタギとして、銃規制、環境保護、過疎化など時代の荒波を生き抜いてきた最後の山の民の姿が逞しく美しく、少し悲しい。冬のブナの森をさすらっているよう。なかなかの力作。
マタギがすなわち「山の民」ではないと思うけど、彼らもまた失われた(ゆく)日本人たち。何代にもわたって伝わってきた人々の物語と精神の在り処について、読後しばし沈思する。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「『戦後80年』はあるのか」(集英社新書)
朝日新聞と集英社のジョイント企画、「本と新聞の大学」の講義録をまとめたもの。一色清と姜尚中がモデレーターとなり、内田樹・東浩紀・木村草太・山室信一・上野千鶴子・河村小百合の講義を起こしQAをつけたもの。どの論考も極めて刺激的で、一つ一つが短く読みやすい。
内田さんは「比較敗戦論」、比較の対象は例えばフランス、ドイツ、イタリア。
フランスは第二次世界大戦の戦勝国ということになっているけれど、かなり危ない綱渡りをしていた。当時のフランスのヴィシー政権は、ナチスに協力してフランスのユダヤ人をアウシュビッツに送り込んでいたわけで、ドゴールが「自由フランス」を組織していなければ、敗戦国だったかもしれないほど。それをきちんと清算していないから、アルジェリアの惨劇が起こり、現在もイスラムへの侮蔑的感情がテロ事件を招くきっかけになっていると言う。ヴィシー政権の中枢にいた人間がそのまま、ド・ゴールの新政権にもぐりこんだいきさつは、日本の戦後史と同じよう。印象的なカミュのこんな言葉、
「アルベール・カミュは最初期からほんもののレジスタンス闘士でしたけれど、戦後その時代を回想して、『本当に戦ったレジスタンスの活動家はみな死んだ』と書いて、生き残って『レジスタンス顔』をしている人間に対する不信感を隠そうとはしませんでした」
敗戦という現実を受け止めない、あるいは自分に都合のいいように塗り替える。勿論それは1945年のフランスのことだけでない。
上野さんは「戦後日本の下半身」。相変わらずの舌鋒で、日本政府の的外れな少子化対策をバッサリ。シングルマザーの支援が全く見られない点を指摘しつつ、最終的には少子化はもう取り返しがつかない傾向なのだから、「おひとりさま仕様」の制度設計をするしかないという意見。
日銀の金融政策の是非については、いくつか読んだけど、日本総研の河村さんの「この国の財政・経済のこれから」は2020年までに起こりうる最悪のシナリオを端的に述べておられ、わかりやすい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「人口と日本経済」吉川洋(中公新書)
21世紀日本の最大の問題の一つが人口問題である。一般には「少子化で経済規模が小さくなり、高齢化で働く人がおらず、社会全体が衰退し、社会保障や年金もいずれ破綻するのでは」という悲観論があるけれど、吉川さんはそうではないと言う。
とても示唆に富む、勉強になる面白い本なのだが、ちょっとまとめて語りにくい。歴史資料、比較統計データ、経済学理論が次から次に引用され、どの話題をとっても実に興味深いのだが、やや「とりとめなく」語られていく印象。
「イノベーションこそ今の時代の経済成長のカギ」という、書いてみても、ホントかという結論である。ピケティも一行でバッサリ切られていて、この人は多分増税派。小泉内閣のブレーンの一人だった方で、結構財務省寄りかも。ただ結論以外は読みごたえあり。データ類が充実しているのと、もう一つ人口問題と経済学の「歴史」がすっきりわかる。その意味でとても「勉強になる」本。何より、経済に関する様々な立場の言説を満遍なくとりあげており、とてもフェアな本だと思った。
ところで、次の文章、いつの時代、誰が書いたものだと思いますか。
「現在では全国にわたって子どものないものが多く、また総じて人口減少が見られる。…我々の間で長期の戦争や疫病があったわけでもないのである。…人口減少のわけは人間が見栄を張り、貪欲と怠慢に陥った結果、結婚を欲せず、結婚しても生まれた子供を育てようとせず、子供を裕福にして残し、また放縦に育てるために、一般にせいぜい一人か二人きり育てぬことにあり、この弊害は知らぬ間に増大したものである」
実は、紀元前二世紀ギリシャのポリビオスの言葉だとか。まさに歴史は繰り返す。豊かな国の人口減少は、かくも昔からあったのである。
cheezeさん、こんばんわ。
にんじんケーキ美味しそうですね。
にんじん食べると視力がよくなるのでしたっけ
いつか頂きに行きたいです。
奥信濃の秋山郷には東北から来たマタギの方が住みついた、と聞いた事があります。
sakusaku様、せっせとニンジンを食べています。寒くなってきたのでこれからほうれん草の甘みがましてくるはず。ほうれん草レシピをググっているところでした。野菜が高いので少しだけ家計の足しに
それにしてもケーキって高カロリーですね。バター60gだって!ほとんど塊ですよ レーズン、クルミを入れたので、山の行動食にぴったりかも。
うちは200名山の栗駒山、船形山の登山口から1時間強ですので、いつか「登る前に」お尋ねくださいね。高カロリー食、用意しておきます
戦後フランスの綱渡り・・「新・映像の20世紀」に描かれていて知りました。責任を取らないで生き残る姿はどこかの国とまったく同じですが、ナチスに協力した人たちを戦後に皆でいじめる姿も悲しいものだと感じました。
人口減少の原因としては見栄を張ったこと・・今は面白いことが多いからなあ。子育ては大変だけど喜びも大きいんだけど
今、地震がありました。大事ないでしょうか。今日はこれから仙台へ向かいます。ただ日帰りなので、ニンジンケーキはまた今度ご馳走になりたく存じます
kamadamさん、今日は仙台でしたか。もう出発されているでしょうか。私も今日は仙台へ。母の命日でお墓参りでしたよ。地震は久しぶりでしたが、もう平常運転ですね。
フランスという国は、日本ではフランス革命を高く評価し、自由と平等、博愛という気高きものを世界で初めて体現した国のように思われていますが、それは多分一つの見方に過ぎないと思います。たまたま内田さんの講演にも、そして吉川さんの本にも、フランスの別の一面が書かれていました。吉川さんの本「人口と日本経済」では、古今の学者が人口問題をどう見てきたかを詳述されていくのですが、「人口論」のマルサスに触れて、マルサスがフランス革命を強く批判していることを紹介されています。
アメリカの大統領選挙の「意外な」結果は、実に示唆的で、多くの事を考えさせてくれますね。
子どもを生まない社会、決して新しい現象ではなく、豊かさの結果の一つ。少子化と長寿化、多分歴史的必然です。古代ギリシャのようになるのかどうか。上野さんは、日本の少子化対策は、結局男目線で、どうしようもないと嘆いておりましたよ。
今度の仙台出張の帰りには、お茶しにきてくださいね、ICから10分もかかりませんからね
バター60グラムは、僕のケチなパン食十回分くらいで、勿体無くてケーキは作れません。人参は、いま、ぬか漬けで毎日ぽりぽりやっています。ピーラーで薄剥きして、レモン汁と塩胡椒和えの作り置きもやります。
内田氏の負けっぷり比較は、他の本で読んで、イタリアについては知らないことが多かったです。フランスは戦後、植民地からの引き揚げで大やけどしましたね。日本も、中途半端な降伏だったら戦後、大陸や半島の植民地のテロ警戒でくたびれ切っているだろうかと想像しました。
yoneyamaさん、トースト枚数で考えると私なら20枚位になります。が、これ無塩バターなので、おいしくないです あと100g残っているので、2回くらい作るかも。恐ろしいですね。美味しいんですけど
ニンジンはそれだけでも十分いけますね。味噌汁とかヒジキとかキンピラとか煮物とか、とにかく何にでも入れて食べてます。今日も収穫して、畑も大分寂しくなりました。食いきれないのが、辛くなりすぎたダイコンとラディッシュです。
イタリア、実は戦勝国で日本にも宣戦布告していた、なんてこと私も知りませんでした。三国同盟しか習わないからね。イタリアの現代史もフランス同様面白そうですね。
戦争の真実から目を背けたり、なかったことにしたりすれば当座の自尊心は満たされるだろうけど、「押し入れの中の死体」が腐臭を放ってきます。うすっぺらな「国民の物語」しかない、厚化粧の国になってしまうということ、いつもの内田さんのお話でした
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する