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2016年12月30日 20:06読書全体に公開

リンゴ追記と十二月の読書

前回の日記でヒントをいただいたアップルパイとリンゴチップス、そしてリンゴジャムを作る。
アップルパイはリンゴを煮てパイシートに挟むだけ。といってもパイシートってものがどんなものか、作ったことがない者には想像もつかない。
とりあえずレシピ通りに。麺伸ばし棒?がないのですりこぎで代用したら、ややいびつ。上と下で径が違うから当然ですね。卵を塗って照りをだすとか、四角くしたあと端を縫い目状にするやり方とか、小技も少し。
30分程オーブンで焼いたら、ちゃんと膨れたけど、形が…サクサク感とできたてホカホカ感のほうは満点。何回か作った。脇にあるのはミニミニクロワッサン。
チップスは、スライサーで卸して、レンジで二回温めてみたが、パリッと乾燥させるのが難しい。焦げたり、ふにゃっとしたり。全部カリッとなるには、やっぱりオーブンかな。リンゴが凝縮した感じで甘みが凄い。
ジャムは普通に作ればまず失敗しないと思う。
残りのリンゴはあと20個くらい。

<12月の読書>
虫明 亜呂無「女の足指と電話機 」(中公文庫)
*はるか1970年代、学生のころに「話の特集」と「面白半分」という雑誌を交互に買って読んでいた。虫明さんの名前はその頃に知った。多分どちらかに書いておられた記憶。
この本は一つずつが3〜5ページほどのエッセイ集なのだが、実はほとんどが30年以上前に書かれたもの。それが2016年11月に文庫化された。なぜ?仙台の本屋巡りをしていてこれを見つけてちょっとびっくり。虫明さんが亡くなったのは1990年頃じゃなかったっけ。登場する人たちや作品群の極一部だけど:

 唐十郎/都はるみ/ピアフ/市川崑/坂東玉三郎/植草甚一/ヴィスコンティ/志ん生/寺山修司/アニーホール/はなれ瞽女おりん/石岡瑛子/リトル・ロマンス/午後の曳航/飛ぶのが怖い/レニー・ブルース/競馬/宝塚/パゾリーニ…

映画、スポーツ、演劇、小説、芸能が縦横無尽に扱われ、それぞれに深い愛情が注がれている。対象をどう語ろうかを本人がまず楽しんでいる。だから例えば市川崑の「東京オリンピック」を語るときは、こんな文体に。
  たとえば、色彩であり、光であり、肉体である。
  瞬間に、色が爆発し、閃光がきらめいた。その光はひたすら、
  ゴールめがけて突き進み、十秒のうちに、澄みきった空のなかに、
  音もなくとびちっていった。
          (「スポーツを越える美学を」昭和40年5月)
多分100mのボブ・ヘイズのレースのこと。市川のこの映画は小学6生時に見ていて、幾つもの場面を今でもはっきりと覚えている(タマラ・プレスの脇毛とかね)。虫明さんは、やはり本職の映画評論が一番面白い。女優を語らせたら、右に出る人はいないと思う。
久しぶりに虫明亜呂無を読みだして、時間のたつのを忘れた。そしてもちろん無為に過ごした自分の青年期も振り返っていたのである。
 

NHKスペシャル取材班「日本海軍400時間の証言」(新潮文庫)
NHKスペシャル取材班、北博昭「戦場の軍法会議」(新潮文庫)
*「巻を措く能わず」とはこんな本なのか。まことに力作。力のあるルポ、取材記録であった。「日本海軍」も「軍法会議」もNスペでご覧になられた方もいらっしゃるだろう。番組では取り扱えなかった多くの証言、記録、そして記者たちの足跡と苦労も余すところなく描かれていて、テーマとはまた別に「ジャーナリズム」とは何かを、実に具体的に教えてくれる。
「日本海軍400時間の証言」は、エリート軍人たちが戦後に「海軍反省会」を何度も開きそれを録音したものがあるという話を聞き、NHKの記者たちがテープを探し出し、本人たちに会いに行き(90歳台の方々)その発言の真意と背景を探りだす記録。真珠湾攻撃がどう始まったか、ミッドウエイ、レイテ沖と回天のこと(回天の話はなかなか重い)。そして戦後、東京裁判でなぜ陸軍と異なり海軍はみな免責されたのか、極めて日本的な無責任体制が炙りだされてくる。
「戦場の軍法会議」も胸に迫る。敗戦間近のフィリピンで、食料も武器も断たれた日本軍がやがて軍隊の体をなさくなっていく過程で、多くの日本兵が銃殺刑に処せられた事実があった。裁判記録も焼却され、その実態は謎のままだった。記者たちが当時の法務官が残した証言テープを手掛かりに、遺族、元軍人に取材し、旧日本陸軍の闇を解明する記録である。戦犯を裁く「法務官」がなぜ証拠も無く味方を死刑にしたのか、そしてその法務官たちは戦後どのように体制の中に入り込んでいくのか。
読みだすと止まらない。戦争の闇の部分の解明もそうだが、なにより記者たちの真実を目指す姿勢に、ジャーナリスト魂をみた思いがした。TVで見られた方はご一読をお勧めする。今年読んだベストの2冊。

宮城谷昌光「草原の風 上中下」(中公文庫)
*有名な「三国志」は後漢の終わりからの話だが、この「草原の風」はその後漢の開祖、光武帝の生涯を描いた本。中国歴史小説と言えば、まず宮城谷さんの名前が挙がるが、「重耳」「孟嘗君」「呂不韋」など長編だけどあっというまに読める中国英雄譚の達人だろう。
光武帝その人は、(前)漢の劉邦の遠い子孫だが平凡な育ちで、若いうちはひたすら農業に打ち込み、農民を助け指導していただけだったが、やがて人に推され長安にでて官吏を目指すうち、当時の皇帝に対する反乱軍を指揮するようになる。徳をもった人間が天子になるべく、天に導かれていく美しい物語である。
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コメント

RE: リンゴ追記と十二月の読書
cheezeさんが読まれた、今年読んだ本のベスト2冊、奇しくも日本の過去の戦争に関するものになりましたね。
「戦場の軍法会議」は単行本を読みました。重たい中身ですが、戦争の実態、現実をまざまざと伝えてくれている本だと思います。
日本海軍400時間の証言を受けて、澤地久枝・半藤一利・戸高一成の三氏が鼎談した本があります。でも「証言」の本が文庫本で出ている、そちらは来年読んでみます。

ほとんどの史料が消失した中で、コツコツと証言や史料を拾い集め、私たちに教訓として示してくれる「ジャーナリスト魂」には頭が下がりますね。

反面、「日本人はなぜ戦争へと向かったのか メディアと民衆編」新潮文庫 にあるように、検閲を受けて好きなことを書きたくても書けなかったといわれるメディアの側で、実際は軍部に積極的に協力したり、検閲を受けることで都合が良かった面もある。このあたりも今、もっと明らかにされるべきでしょう。

今年もcheezeさんからたくさん学ばせていただきました。ありがとうございます。来年もよろしくお願いいたします。
2016/12/31 13:52
RE: リンゴ追記と十二月の読書
kamadamさん、こちらこそお世話になりました。10月に久しぶりに秋田でお会いできてよかったです 太平山は今年の紅葉のベストでした。
山を歩き、畑の世話をして、ご飯を作り、本を読む、理想の生活の筈でしたが、なんだかとても物足りない感じ。貧乏性なんでしょうかね。
読書してすぐに感想を書くと、どうしても読後の高揚感に引っぱられてしまいますので、少し時間をおいて(一週間とか)反芻しながら書いていました。
Nスペはどちらも見ていないので、ウェブのNHKオンデマンドで見ようかどうしようか迷っているところでした。

防衛大臣が靖国について、「国の為に命をささげた人たちに…」と発言していましたが、この方たちは戦争の真実も何も知らないのでしょうね。ポツダム宣言の内容もしらない総理もいたくらいです。フィリピンでの生き地獄、せめて大岡昇平ぐらい読めよと言う感じ。大東亜戦争で日本人は300万亡くなりました。アジアでは1000万の方が命を落とされています。無為に。国の為に命をささげることができたなら、それはまだ幸せだったかもしれません。でも嘘ですね。戦争とは無残なものです。

しばらく音楽から離れていたので、またギターを再開しようかなと思っていました。古いチューナーを探し出して、まだ音合わせの段階ですけど。
kamadamさんも、お仕事ひと段落して、天気が安定してきたら、また素敵な山の記録を読ませてくださいね。時々は本のお話も。
では、良い年をお迎えください。
2016/12/31 19:41
RE: リンゴ追記と十二月の読書
明けましておめでとうございます
今年も宜しく御願い致します

遅いコメントで申し訳ございません (^^ゞ
りんごの保存方法の情報です
作り方はよくわかりませんが
家内はリンゴをペースト状(ジャムの手前状態かな?)にして
様々な料理の隠し味として使っているそうです
どんな料理に入っているのかはよくわかりませんが
カレーに入れた時は気が付きました
「りんごとハチミツとろ〜り溶けてる・・・」とあるように
カレーの質がガクンとレベルアップしたのにはビックリでした
ある程度の料理に応用できるとの事です
私は料理はカラッキシですけど
2017/1/6 18:34
RE: リンゴ追記と十二月の読書
shunさん、あけましておめでとうございます。
リンゴの隠し味いいですねえ。濃い味のものだといろいろ深みがでてきますね。私もすりおろしりんごをカレーにいれます。ペースト状にするのは少し手間ですが、保存もききますね。ありがとうございます。
ようやく一箱食べて、まだまだありますので、いろいろ試したいと思います。
こちらもようやくスキー場オープンです。寒の入りですので、これから雪がつもってきますね。
今年もよろしくお願いいたします。
2017/1/7 15:08
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