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白井聡「永続敗戦論」(atプラス叢書04)
原発への怒り、政治への怒り、そして敗戦を終戦としてしか受け止めてこなかった日本人総体への怒りを、生の資料をもとにストレートに、しかも詳細に説明された気持ちがする。
戦後とは、「平和と繁栄」の時代であったのは疑いがない。なぜその平和と繁栄が日本にだけもたらされ、例えば他の東アジアの国にはもたらされなかったのか、考えたことがあるだろうか。日本人は優秀だから?真面目だから?勤勉だから?それは人種差別(レイシズム)ではないのか?
筆者の答えは明瞭である。それは日本がアメリカの庇護の下にあり、アメリカ追従の政策をとり続けてきたから。自国民に対し大きな嘘をつきながら、である。アメリカの顔色を見ながら、その容認の範囲で日本という国ができあがってきた。戦後一貫してそうであった。太平洋戦争の責任を誰がとるわけでもなく、アメリカの世界戦略の中で、日本はその戦略を補完しつつ生き延びてきたのである。
だが平和と繁栄の時代は終わった。「高度成長時代」はもうやってこない。利益は外に流れる戻って来ない。上に吸い上げら降りてこない。格差はすでに固定化しつつある。ほとんどの日本人はもう経済的な豊かさを誇れない、そんな時代になると思う。
著者はまだ30代半ばのようだ。パワフルな政治学者が、現実の政治について強くコミットメントしている。そのエネルギーは好ましい。ただし…新宿裏街の飲み屋で会った酔っぱらいの老人の話はどうかな。そのような人生を送ってきたのだ。下劣ではないと思う。自分がそう言われているようで辛い。
でもそういう若い人がいるっていうのも、もしかしたら悪くないことかもしれない。
日本の領土問題、北方領土、尖閣諸島、竹島をきちんと考えたい人は読むべき。
原発は再稼働せざるを得ないのではと思う人は読むべき。
TPPを疑う人は読むべき。
天皇制はどうして戦争を生き延びたのか、秘史を知りたい人は読むべき
でも、左翼嫌いなら読めないと思う。
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