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西川治『マスタードをお取りねがえますか。』(河出文庫)
その一部を紹介してみる。さて、これは何の料理?
「…牛の骨を二、三本。これでスープを作るのだが、と肉屋に言えばきっと尊敬のまなざしをうけ、ごく安い値段でわけてくれるはずだ・・・しかし絶対にタマネギの縁に焦げ目などをつけないで、ゴールデンブラウン(濃茶黄金色)になるまで炒める。手を休めることない頑固さがいる。ここがなんといっても錬金の沈黙の戒律をしいられるところである。ここをないがしろにするのは、愚かなことだ。
・・・・・・さらにフランスパンを二、三切れいれる。挽いておいたグルニエチーズを一人前100グラムぐらいたっぷりふりかけ、あらかじめ180度に熱しておいたオーブンにいれる。そして、表面に焦げ目ができるまでいれておく。ふつふつとなればオーケー。さあ、食してほしい。寒気が鞭のように頬をうつ凍てつく夜に。」
答えは、オニオンスープ。匂いまで漂ってくる文章だ。
きっと奥深い味わいだろう。こんな風に書ける人は、本物が好きなのだと思う。本職は写真家かな。ほどんどがヨーロッパの食卓に出る家庭料理で、なるほどこんなものを食べているのかと思う。イギリスの料理がシンプルな深い理由もわかった。どのエッセイも味わい深い。どこから読んでも大丈夫。気づいたら全部読んでしまってると思う。
帰りの電車で読みだして、帰宅して夕食を作った。似ても似つかぬものだけど、作りながらちょっと西川さん風の独り言がでてきた。
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