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2日間にわたる秋田駒ヶ岳、乳頭山の登山を終え、本日は滞在していた乳頭温泉から大曲(現 大仙市)の郊外にある母の実家へ、今年の春に104歳で亡くなった祖母の墓参りに向かいました。本来的にはそちらがメインで、登山の方がついでなのですが、ともかく仏壇に手を合わせ、墓参りも無事に済ませた後、居合わせた御年82歳になる伯母から、乳頭温泉にまつわる興味深い話を聴くことになりました。
伯母が学校を出たばかりの頃の話というから、おそらく昭和30年代初頭だと思うのですが、当時の伯母は彼女の祖母、すなわち僕のひいおばあさんの付き添いで、乳頭温泉郷の黒湯温泉に湯治で訪れたことがあるとのことでした。黒湯は現在でも乳頭温泉郷の最深部の宿のひとつです。当時のバス便がどこまで伸びていたかは分かりませんが「かなり歩いたよ」ということですから、乳頭温泉の秘湯度は現在の比ではなかったことは確かでしょう。
老人の湯治の付き添いですから、1週間とか10日とか、そういう単位の滞在だったらしいのですが、曾祖母の世話係として暇を持て余していた伯母は、現地で仲良くなった同じような境遇の同世代の子と、近くの山へ登山に出かけたこともあったそうです。登った山の名前は覚えていないそうですが、黒湯の近辺となると、件の山が乳頭山であった可能性は高そうです。あるいは山頂まで行かず、お花畑の拡がる田代平の辺りまで足を運んだのかもしれません。
前日に自分が歩いてきた山道を、70年近く前に伯母も歩いていたのかもしれないのです。もちろん年月の経過とともに登山道の位置が変わっている部分もあるでしょうから、まったく同じ道というわけではないでしょうが、急にそんな話を聴かされると、奇妙な感慨を覚えるのも確かです。
と、これだけなら登山にまつわる楽しい思い出話に過ぎないのですが、この話にはまだまだ続きがあります。湯治で滞在中のある日、伯母は曾祖母の様子に異常を感じ取ります。湯治に来たはずの温泉で、曾祖母は突然脳梗塞を起こしたのでした。驚いた伯母は自宅に電報を打ち、入り婿だった彼女の父(すなわち僕の祖父)が義母と娘を迎えに乳頭温泉までやってくることになりました。幸い、その時は危篤に陥らず持ち直した曾祖母でしたが、それ以降、彼女は認知症のような状態になり、それから10年くらい後に亡くなったそうです。
まるでNHKの朝ドラの中に出てくるような時代がかったエピソードで、正直どう受け止めていいのやら自分でもよく分からないのですが、彼の地と自分の一族にまつわる因縁を知ったことで、印象深い山行がより一層忘れえぬものになったように思える今日この頃です。
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