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前編・中編までで「会津高原」がスキーリゾート開発に端を発する名称であることを考証してきました。あわせて「奥会津」の名称を施設名に使っている自治体が、只見川沿いに多くあることについて触れました。このうち南会津町や昭和村は只見川に面していませんが、両町村には只見川に合流する伊南川や野尻川といった支川が流れているので、広義の只見川流域ということはできるかもしれません。そういえば、この記事の前編にて紹介した『奥会津の旅』というパンフレットの発行元は「只見川電源流域振興協議会」という団体でした。「奥会津」=「(支流を含めた)只見川流域の地域」という図式は成立しそうです。
ところでこの「奥会津」という名称、なんだか歴史のありそうな表現でありますが、一般的に使われるようになったのは比較的最近で「会津高原(1980年代から使われ始めた)」よりも新しい名称であるようです。「奥会津」の初期の使用例と思われるものに、旧田島町の「奥会津地方歴史民俗資料館(現在の奥会津博物館)」があります。この施設の開館が1994年ですから、既に「会津高原」の名は駅名やスキー場名として広く認知されていたはずです。
一般に「奥○○」という名称は○○の部分に入る地名より、さらに奥まった地域という意味で使われます。奥多摩や奥日光は有名ですね。比較的歴史の浅い「奥会津」に先行する形で、実はこの地域の近隣には他の「奥地名」が存在していました。それが只見川の上流にある「奥只見」です。これは1960(昭和35)年に運転を開始した「奥只見発電所(奥只見ダム)」に由来する名称です。この場合の「只見」は「(自治体としての)只見町の奥地」ではなく「(河川としての)只見川の奥地」という意味合いのものと思われます。その証拠(?)に「奥只見」の名を冠する施設のほとんどが、福島県の只見町ではなく、新潟県の魚沼市域に存在します(※)。
なにかしらの史料的裏付けがあるわけではないのですが「奥会津」という地域名称は、この「奥只見」を念頭に置いた名付けなのではないかというのが、自分の推測です。「奥会津」という地域名をPRに使っている団体が「只見川電源流域振興協議会」という水力発電を連想させる組織名なのが、その傍証になっている気がするのですが、どうでしょうか?
(※)追記
あらためて確認したところ、奥只見湖は新潟県魚沼市と福島県檜枝岐村に跨がっていましたが、福島県只見町の町域とは接していませんでした。只見町から奥只見湖に繋がる道も存在しないので、やはり「奥只見」というのは「只見川の奥地」と解釈するのが正解のようです。
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