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静かな入り江の町にあります。昔の捕鯨基地の町ならではの、鯨の生態と海の文化について特化した博物館です。けっして大型の規模ではありませんが、総合博物館では掘り下げられないところまで見せてもらえる貴重な施設です。自然科学も、専門性こそが学問の価値なのかと思わせてくれます。
近代捕鯨の休止直前に、山田町の湾で捕獲されたマッコウクジラの雄の標本がメイン。実物大の模型(写真��)と軟骨組織まで復元した骨格(写真��)の展示が、地元の自慢だそうです。世界的に見ても貴重なんだとか。
その骨格、中2階のテラスから側面と前面を、1階フロアから腹面の詳細を観察できます。そのほか生態と体組織の解説展示は度肝を抜かれる内容でした。
もともと、マッコウクジラは鯨界のスーパースターみたいな生き物です。
スター性その� ．�スは深度３０００ｍまで潜ることが出来る。原子力潜水艦の作戦深度以上の潜行を生身でやってしまう。ボンベ無しの素潜りでこれはちょっと…
その�◆．�スは深海にエサを求めることで、中深度と浅深度の豊富なエサ場をメスと子供に譲っている説。なんというジェントルマンだ。
その�ぁ―品悗�時価数百万円の香料にも漢方薬にもなる。「龍涎香」だそうだ。ウンチで稼げるとは…
その�ァ‖猟垢�30％以上を占める頭部に、脳油と呼ばれる生体油を使ったバラストタンクがある。潜行も浮上もこれで制御。ほかにこんな生物が居るのか？現生生物だから良かったけれど、もし化石生物だったら、頭骨だけ見ても解らないぞ…
館内の展示はスター性の詳細を、とことん解説してくれます。なんでも頭部の脳油はミサイルの慣性誘導装置に使える純度なんだとか。帰ったら誰かに説明したくなるはず。
いつも通り、展示物に見とれて数時間を費やしてしまいました。繰り返しになりますが、総合博物館では得られない感動です。
話はすこしかわりまして、、写真��
2011年3月11日、東日本大震災の津波被害はこの鯨の博物館も飲み込みました。円筒形の建物の中を渦が巻くように海水が暴れたあと、多くの収蔵物が流失し破損するなか、マッコウクジラの骨格は奇跡的に残っていたそうです。鯨の魂のなせる業か、地元山田町ではこの鯨を「荒波を泳ぎ切った鯨」として尊重し、復興の励みとしたそうです。洗浄と防腐処理を経て、元通りの展示となったというエピソードに、胸が熱くなりました。今は入り江を囲う巨大な防波堤が、長城のようにそびえる岩手県の海岸風景。地元の悲願、守るべきは何かと問われる旅でしたので、ご紹介が遅くなりました。
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