ませど　六地蔵の里

2013年01月22日 15:19山仕事全体に公開

人間、天上、地獄、餓鬼、畜生、修羅の六道を人は輪廻するという。生まれ変わりを意味するのではなく、現世、つまり日常の中に繰り返す変化を指している。それぞれの道に人を救済するといわれているのが六地蔵。日常の心の変化も仏の知恵によって救われることを、解りやすく形にしているのである。形ではないものを形で教える、仏の方便は人にやさしいものだ。

山梨県南巨摩郡南部町、福士の里にある六地蔵を仕事の合間に訪ねることができた。低い尾根の先、丘のような場所にお地蔵さんは並んでいた。晴れていれば富士山を眺められる景勝の地で、村人たちは月見に花見と事あるごとに寄り集まったそうだ。訪ねた日は曇り空だったが、誰かが被せた学童用の帽子と手編みのマフラーが暖かそうだった。

宿は谷あいの奥まった所のませど民宿だった。「ませど」とは聞きなれない日本語離れした響きだが、由来は宿の玄関に説明書きがあった。「昔、観音像から一頭の白馬が飛び出した。辺りの岩を蹴散らして荒れているその馬を、馬勢棒でようやくにとり押さえた。以来、馬勢戸の字になった。」宿の前にある岩がその証拠らしかった。

福士の背後にそびえる篠井山にも言い伝えが残っている。平安の頃、盛んになった浄土信仰の影響で、時の実力者藤原氏が頂上に経塚を築いた。山中に配下の一族を住まわせ代々塚の守りをさせたらしい。一族の里はつい近年まで人が住んでいたという話を聞いた。この話を聞かせてくれたのは、以前に篠井山を登った折に御世話になった地元の猟師さんである。後日談もあり、不心得者が財宝欲しさに経塚を暴いたが、金目のものは一切出てこなかった。経の入った筒は文化的に貴重品だっただろうに。その不心得者の家には凶事が相次いで、ろくな結果ではなかったそうな。

ホンマかいな