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宮之浦岳(みやのうらだけ)

世界自然遺産に登録された九州地方最高峰

"宮之浦岳"
"宮之浦岳"

宮之浦岳は屋久島の中央部に立つ山です。九州地方最高峰で、標高は1936mです。
また、日本百名山の中では最南に位置し、百座目に数えられます。

高い山を擁する屋久島

"栗生岳付近より:左から翁岳(1860m)、安房岳(1847m)、投石岳(1830m)"
"栗生岳付近より:左から翁岳(1860m)、安房岳(1847m)、投石岳(1830m)"

宮之浦岳がある屋久島は、鹿児島県に属し、大隅半島の南方沖約60kmにあります。周囲およそ130kmの島ながら、中心は山岳地帯で、標高1500m以上の山が連座します。
高い峰々は総じて「八重岳」と呼ばれたり、「洋上のアルプス」とも評されています。また、宮之浦岳、永田岳、黒味岳の三座は「三岳(みたけ)」や「奥岳」と呼ばれています。奥岳は麓から見えないことを意味します。

"花崗岩がごろつく稜線"
"花崗岩がごろつく稜線"

屋久島は花崗岩の隆起でできた島で、上昇は現在も続いています。
宮之浦岳を含む山塊もすべて花崗岩で構成されており、山中にいると巨大な花崗岩をあちこちで見かけます。

特異で豊かな自然を誇り、島全体の約21%が世界自然遺産に指定されています。登録されたのは1993年で、白神山地や姫路城と併せて日本で初めての出来事でした。

"ひと月に35日雨が降る"島

"淀川(よどごう)小屋:雨の中の登山者"
"淀川(よどごう)小屋:雨の中の登山者"

屋久島は多雨です。主な理由は山が高く、周りを囲む海が暖流のためです。黒潮からの暖かく湿った空気は、山岳にぶつかると冷やされて、雨雲をもたらします。
「ひと月に35日雨が降る」は屋久島を語るうえで有名な決まり文句です。この言葉は、小説家・林芙美子(はやしふみこ:1903-1951年)の著作「浮雲」で述べられた表現に基づくとされています。
高い山と圧倒的な雨量は、多くの渓谷を生み出しています。沢登りもよく行われているほか、島内の電力のほぼ100%は水力発電により賄われています。

小型動物の宝庫

"ヤクシカ"
"ヤクシカ"

島の9割を占めるのは森林です。野生動物に出会うこともしばしばで「人2万、シカ2万、サル2万」が住むと例えられるほどです。
代表的な動物は、ニホンジカの亜種であるヤクシカと、屋久島に固有のヤクザルです。どちらも小柄で、大型動物の種類が少ないことも屋久島の特徴です。

杉の巨樹が育つ独自の生態系

"くぐり杉"
"くぐり杉"

屋久島登山のみどころのひとつが、大きな杉の木です。一般的な杉の寿命は500年ほどですが、それよりはるかに年を重ねた杉がいくつも立っています。
樹齢1000年以上とされる杉は「屋久杉」、それ以下は「小杉」と分類されます。名付けられた屋久杉も多く、「紀元杉」「夫婦杉」「くぐり杉」などがあります。

"縄文杉"
"縄文杉"

「縄文杉」は現在確認されている中では最大の屋久杉です。周囲は16mを超え、樹齢は2000年から7200年と推測されています。杉が長寿である要因は、花崗岩の痩せた土地で成長が遅く、材が緻密になり腐りにくいからとされています。

"ヤクシマリンドウ(固有種)"
"ヤクシマリンドウ(固有種)"

山域は植物の種類に富み、"ヤクシマ"を冠する植物や固有種も多く、屋久島を分布の南限とする植物は200種以上とも言われています。近年は新種の発見も相次いでいます。

"照葉樹林帯"
"照葉樹林帯"

また、標高ごとに植生の分布が変化する垂直分布が顕著です。
海岸部はガジュマルやアコウなど亜熱帯の植物が自生します。低山地は照葉樹林帯が広がり、高度を上げると針葉樹の森へと遷移します。標高1700m以上の山頂部はヤクシマダケ(ヤクザサ)の草原が広がり、亜高山帯の草花が見られます。

"ヤクシマシャクナゲ"
"ヤクシマシャクナゲ"

ヤクシマダケと共に自生するヤクシマシャクナゲは、屋久島の固有種です。花期は5月下旬から6月上旬で、笹原と花崗岩と共に美しい風景を作り出します。

"花之江河"
"花之江河"

「花之江河(はなのえごう)」は国内の高層湿原の南限です。

見どころに事欠かないトレッキング

"白谷雲水峡"
"白谷雲水峡"

屋久杉の他にも名所は多く、ピークハント以外の楽しみも盛りだくさんです。
「白谷雲水峡」は、苔むした森と澄んだ川が神秘的な森です。長編アニメーション映画「もののけ姫」の舞台のモデルになったと言われており、見ているだけで心が洗われるような魅力があります。

"トロッコ道"
"トロッコ道"

また、トロッコ道を歩く貴重な体験もできます。
「荒川登山口」から縄文杉や宮之浦岳を目指した場合、しばらくはトロッコの軌道上を歩くことになります。
トロッコはかつて、資材として切り出した屋久杉を運ぶために稼働していました。現在も現役の森林鉄道で、トイレのし尿搬出や物資運搬の目的で不定期に往来しています。

"ウィルソン株内部より"
"ウィルソン株内部より"

「ウィルソン株」は中が空洞の大きな切り株です。
空洞の中には泉が湧きだし、祠が据えられています。ここから空を見上げると、角度によっては光がハートの形に降り注ぐことから、フォトスポットとして注目を集めています。

"トーフ岩"
"トーフ岩"

花崗岩の造形美も、目を喜ばせてくれます。
高盤岳(こうばんだけ)山頂には「トーフ岩」と親しまれる岩があります。

"投石平"
"投石平"

「投石平(なげしだいら)」は、巨岩がまるで舞台のように露出しています。

山岳信仰が息づく

"益救神社"
"益救神社"

屋久島の山々は、古くから神々が住むとして信仰されています。
集落ごとに定まった山へ登り、豊漁豊作や無病息災を祈る「岳参り(たけまいり)」なる風習があり、現在もいくつかの集落で行われています。
宮之浦岳は、宮之浦集落の信仰対象であることから付いた名だそうです。さらに「宮之浦」の名は、集落に鎮座する益救神社(やくじんじゃ)にちなみます。益救神社は別名「救いの宮」で、これがある浦(=入江)を意味します。

海を望む大パノラマ

"宮之浦岳山頂:海越しに種子島を望む"
"宮之浦岳山頂:海越しに種子島を望む"

宮之浦岳の山頂は、花崗岩の巨岩がごろつく中に一等三角点が設置されています。
そばの巨岩の割れ目の中には、益救神社の奥社である一品宝珠大権現(いっぽんほうじゅだいごんげん)の祠があります。
遮る物がない眺望で、屋久島の峰々を見渡します。海を挟んで望むのは種子島や口永良部島、トカラ列島、九州本土などです。

各所にある水場と避難小屋

"高塚小屋"
"高塚小屋"

屋久島では登山道には"歩道"の名が付けられています。
宮之浦岳へ通じる行程はどれも長く、多くの登山者は山中で一泊します。
山小屋は無人の避難小屋のみで、白谷山荘高塚小屋新高塚小屋鹿之沢小屋淀川小屋石塚小屋の6箇所です。小屋の混雑時などは、周辺にテントを張ることができますが、それ以外での幕営は禁止されています。

"新高塚小屋内部"
"新高塚小屋内部"

小屋の中は、ヤクシマヒメネズミが出ることがあります。小型で可愛い姿ですが、食糧やごみを荒らすことがあり、匂いのする物は天井に吊るしておくのが無難です。
水場は山域の随所にあり、困ることはありません。

"携帯トイレブース"
"携帯トイレブース"

近年はオーバーユースによる混雑や、トイレのし尿処理の負担、歩道の踏み荒らしなどが問題になっています。そのため、山岳部環境保全協力金の納入が任意で求められています。また携帯トイレブースもいくつか設置されており、携帯トイレの使用が推奨されています。

"積雪期:宮之浦岳山頂より永田岳を望む"
"積雪期:宮之浦岳山頂より永田岳を望む"

冬季も登ることができますが、雪が降ることがあります。積もることもしばしばで、しっかりとした装備で入山する必要があります。

モデルコース(淀川登山口〜宮之浦岳〜白谷雲水峡)


1日目:6時間 9.9km
淀川登山口(36分)→淀川小屋(87分)→花之江河(111分)→栗生岳(21分)→宮之浦岳(47分)→平石(58分)→新高塚小屋

2日目:6時間1分 10.7km
新高塚小屋(62分)→縄文杉(51分)→ウィルソン株(16分)→大株歩道入口(101分)→楠川分れ(62分)→辻峠(21分)→白谷山荘(48分)→白谷雲水峡

島内観光も楽しみたい

"大川の滝"
"大川の滝"

島外から訪れた登山者の多くは、せっかくならと屋久島観光も満喫しています。
水源が豊かな屋久島ならでは、カヤックやキャニオニングなど川のアクティビティも人気です。
「大川の滝」や「千尋(せんぴろ)の滝」などの名瀑も一見の価値があります。

"平内海中温泉"
"平内海中温泉"

シュノーケリングなどの海遊びも盛んですが、夏季は浜辺でアカウミガメの産卵が観察できます。
また、海岸沿いには温泉がいくつか湧出しています。
「平内海中温泉」は、海の中から湧き出ている珍しい温泉です。利用できるのは1日2回、干潮の前後約2時間のみ温泉が現れます。荒磯を間近に、開放感たっぷりの湯あみを堪能することができます。

"カメノテ"
"カメノテ"

トビウオや「首折れサバ」などの新鮮な海の幸にも注目です。首折れサバは、水揚げ後すぐに首を折り、血抜きをしたゴマサバです。鮮度が抜群のため、刺身でもいただけるほどです。
カメノテは"漁師のおやつ"と称される珍味で、亀の手のような見た目はインパクトがあります。
登山口 荒川登山口
淀川登山口
白谷広場
ヤクスギランド入口
花山歩道入口
永田歩道入口
周辺の山小屋 ※すべて無人の避難小屋
白谷山荘
高塚小屋
新高塚小屋
鹿之沢小屋
淀川小屋
石塚小屋
基本情報
標高 1936m
場所 北緯30度20分09秒, 東経130度30分15秒
カシミール3D
山頂

山の解説 - [出典:Wikipedia]

宮之浦岳(みやのうらだけ)は、鹿児島県の屋久島中央部の山である。
標高1,936 mで、屋久島の最高峰であり九州地方の最高峰でもある(九州本土の最高峰は大分県の九重連山・中岳で標高1,791m)。
山域は、ユネスコの世界遺産「屋久島」として登録されている。
日本百名山、一等三角点百名山の一つでもあり、西日本では、四国の愛媛県・石鎚山 (1,982 m)、徳島県・剣山 (1,955 m) に次いで、第3の高峰である。山名の由来は、益救神社の建つ湊の集落が宮之浦と呼ばれるようになり、宮之浦集落の山岳信仰(岳参り)の山として登られたことから
熊毛郡屋久島町内にあり、永田岳 (1,886 m)、栗生岳(1,867 m)とで、屋久島三岳と呼ばれる(栗生岳ではなく黒味岳を屋久島三岳とする例も見られる)。1,000万年以上前に地殻変動によって隆起したといわれており、主に花崗岩で形成されている。
屋久島ではモッチョム岳・愛子岳など麓より見える山を「前岳」、麓より見えない山を「奥岳」と呼んでおり、宮之浦岳は奥岳の一峰で屋久島最高峰である。永田岳を除き、奥岳は海岸沿いの人里からはその姿を望むことができず、山の上か海上からしか見ることができない。
地質は花崗岩からなり、山上では侵食された奇岩が多く見られる。植生は、標高約1600m以上の山頂部はヤクシマダケ(ヤクザサ)にヤクシマシャクナゲ・アセビ・ミヤマビャクシンなどが点在する風衝草原で、その下に屋久杉・ヒメシャラなどの樹林帯が広がる。
長年、宮之浦岳の標高は「1,935 m」とされ、屋久島島内では「いつも(1)曇って(9)見えんで(3)ござる(5)」と覚えられてきたが、2001年に国土地理院が標高を測量した結果、それまで最高地点としていた三角点。

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