鍋割山-塔ノ岳-三ノ塔


- GPS
- --:--
- 距離
- 17.9km
- 登り
- 1,602m
- 下り
- 1,597m
コースタイム
天候 | 晴れ(強風) |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2011年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
□連休など多客期は必ず渋沢駅〜大倉直行の臨時バス便がピストン運行するらしい |
コース状況/ 危険箇所等 |
表尾根は連休の好天ともなると、パーティーのすれ違いなどで“渋滞”が頻発するので、健脚組は時間を多めに見た方が良さそう。なお、寄〜後沢乗越は登山者チラホラ、三ノ塔尾根は人影まばらだった。 |
写真
感想
連休初日は出勤せざるを得ず、山行計画を練る余裕がなかった。漠然と犬越路あたりの避難小屋1泊山行をイメージしていたのだが、さて、地図をにらむとなかなか適切なコースが組めない。何より水の補給が困りそうだ。で、ふと天気予報を見ると5月1日は雨が降るという。雨の中を歩きたくはない。結局、以前鍋割山からの下りに使った栗ノ木洞の尾根を逆行してみようと思い立ち、日帰りプランを練ってから急いで布団に潜り込んだ。
4時間寝て4時20分起床。前回の山行記録を参考に小田急へ乗り継ぎ、新松田駅前に降り立った。バス停3番線に立つと真っ白な富士山の上半身が大きく見える。15人ほどを乗せたバスは定刻に寄に到着。バス停でモタモタ身支度していると、運転手さんが「本読んでいませんでしたか?」。座席に文庫本を忘れてきていた。
さて、以前の記憶を呼び戻しながら茶畑の中を登り始めた。里の山は明るい萌黄色の模様に彩られ、八重桜や桃?の木の花がアクセントを添える。15分ほど登って登山口。「土佐原のしだれ桜」という案内があるが、曲がってすぐの若木の並木のことなのだろうか。だとすると、いささかしょぼい。
舗装が切れた所で茶畑の中に入り、急斜面を登り切るとやがて東屋がある。右が土佐原集落へ戻る道らしい。こちらは左へさらに茶畑の脇を辿り、鹿柵のゲートを開けて登山道に入った。ジグザグに標高を稼ぎ、杉林に至れば間もなく出口のゲートがあって林道に出る。面白みはない尾根だが、時折木々の間に遠くの山が見え、富士山の姿も覗く。まだ大半が白く雪に覆われていた。
風が無いのでひどく暑い。檪山の少し手前で初めて先行の登山者が見えたが、早くも息が上がり気味で追いつけない。そのまま草地の山頂に着いた。木々の梢が伸びて西側の視界を遮ってしまい、ここから富士ははっきりとは見えない。学生3人のパーティーと抜きつ抜かれつ杉林の中の栗ノ木洞を過ぎ、後沢乗越への下りに入ると、彼らが地図を広げて声を掛けてきた。急勾配の下りに道を間違えたか不安になったらしい。「大丈夫なはずだよ」と先行。一度登り返してしばらく行くと、登山者の声が聞こえて無事、後沢乗越に着いた。
ここから緊急連絡用標識「鍋割山稜7」の所まで、標高差150mほどにわたって最もきつい胸突き八丁となる。登山者の影も増え、時おり道を譲りながら15分余りかけて通過。たまに木々をすかして富士山が遠望できるが、既に山体の上半分を雲で隠している。道端の山桜を慰めに、なおもかなりきつい勾配を辿ること25分、道が右に折れてようやく坂が緩んだ。振り返れば西丹沢と富士の絶景が望めるはずが、もはや全体が霞んでしまっている。
花盛りのアセビが連なる最後の坂を詰め、鍋割山頂に到着した。ざっと見て40人の登山者が既に昼食中で、かなりの人が名物の鍋焼きうどんを啜っている。当方は本日はパスし、いつものお握りとカップ麺などで腹を満たした。小屋の裏手の資材置き場に陣取り、積んであったタイルをテーブル代わりに湯を沸かす。
この時、突如として一陣の風が起こり、30秒ほど激しく吹き荒れた。5分ほどして再び突風が襲う。しばらく静まるが数分後には吹くということを繰り返し、山頂を辞すころには間断なく風速5mほどで吹くようになった。そこに時々卓越風が混じる。南西から吹いてくるようで、遮るもののない稜線では帽子が飛びそうになるほどだ。
風が当たりにくい所で一息つき、左手に聳える山々の山座同定を試みた。真北のわずか西寄りに見えるのは盟主蛭ヶ岳。すると左は臼ヶ岳でその左に檜洞丸、さらに左の目立つピークは同角ノ頭か。蛭の右は不動ノ峰など1600m級の尾根で、その右が丹沢山となる。蛭の手前にドンと鎮座するのは弁当沢ノ頭だろう。
樹高5mはあるかというアセビの木を右に見て進み、小丸から二俣分岐を経ると、なだらかな大倉尾根が目の前に望まれた。花立がほぼ同じ高さに見え、向こうに大山と三ノ塔が覗く。予定では三ノ塔尾根を下るのだが、まだまだはるか彼方だ。大丸を過ぎ、ほどなく金冷ヤシで大倉尾根の道に合流して、にぎやかな老若男女のハイカーの声に包まれた。
この先塔ノ岳まで人の姿は絶えることがなく、ところどころ片側交互通行になって渋滞が生じた。そうでなくとも一番遅い人のペースになるから、スピードも上がらない。下山者の波がとだえた隙に何度か追い抜きを試み、やっと前へ出て塔ノ岳山頂に躍り出た。文字通り“躍り出た”のであって、実は吹きさらしで腰を伸ばした瞬間、左からの強風にあおられ「おっとっと…」と、ぶざまな舞を演じてしまった次第。
山頂は人であふれていたが、その風の強さは真っ直ぐに歩けないほど。長居は無用と日の出山荘跡の廃墟の陰で汗だけふき取り、レインウエアの上を羽織って早々に出発した。まだ続々と登ってくるが、この強風ではかなり消耗するだろうと気の毒になる。下り基調の当方も、気をつけないと時おり体を持っていかれそうになる。特に行者ヶ岳手前にあるザレ場の階段は風の通り道で、アセビの群落が激しく揺れていた。
少々疲れてきて、鎖場を「よっこらせ」と登って行者ヶ岳。足元に可憐なイワザクラを見つけて心を和ませ、小ピークを越して行けば烏尾山だ。三角形の小さな山小屋には一度泊まってみたいものだが、今日は休憩もそこそこに先を急ぐ。山頂と名がつく所では、とにかく風が強くて休むどころではない。標高1060mほどの最低鞍部に降り、最後の登りは三ノ塔。これまた風の強いガレ場をあえぎ登り、頑丈な山頂休憩所に飛び込んだ。
薄暗いが風の来ない休憩所でホッと一息入れ、逃げるように三ノ塔尾根の下山路に曲がった。振り返ると外のベンチに人影が三つ。小屋の中から出てきた当方に驚いていたようだから、中に入れないと思っていたのかもしれない。さて、杉林の尾根道を下ると、5分もしないでピタリと風がやんだ。やれやれだ。道は初めこそ深くえぐれていてどうなるかと心配だったが、間もなく延々と続く木製階段に変わった。壊れている所も多いが原型はとどめており、迷う気遣いは無い。登山者の姿はめっきり減った。
三ノ塔から50分、ようやく牛首の林道に出た。集落による植林の石碑が立つ林道終点は、乗用車なら3、4台は止まれるスペースがある。疲れもしたし、この先は何の変哲もない尾根のようなので、林道経由で下山することにした。コンクリート舗装は膝に負担とも聞くが、尾根通しの登山道は登り返しがあって、膝どころか当方の脚全体に“負担”になる恐れがあるので、まあやめておいた。
延々と林道を歩くこと30分、視界が開けて右下に風の吊橋が見えた。渡れば大倉バス停だ。下の水無川で遊ぶ子供たちの嬌声が響く橋の上をゆるゆる渡る。遠くチラリと頭を覗かせる峰は表尾根の稜線なのだろうか。ここからの山座同定は無理だった。
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