下ノ廊下から白馬岳縦走記〜黒部ダムから清水尾根継続〜
- GPS
- 56:00
- 距離
- 48.9km
- 登り
- 4,154m
- 下り
- 4,388m
コースタイム
- 山行
- 6:00
- 休憩
- 0:54
- 合計
- 6:54
- 山行
- 11:04
- 休憩
- 0:32
- 合計
- 11:36
天候 | 初日:晴れ 2日目:雨のち晴れ 3日目:晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2018年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス
帰路:猿倉-八方バスターミナル-バスタ新宿 |
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
Tシャツ
タイツ
ズボン
靴下
グローブ
防寒着
雨具
ゲイター
日よけ帽子
着替え
靴
ザック
ザックカバー
昼ご飯
行動食
非常食
調理用食材
調味料
飲料
ガスカートリッジ
コンロ
コッヘル
食器
調理器具
ライター
地図(地形図)
コンパス
計画書
ヘッドランプ
予備電池
GPS
筆記用具
ファーストエイドキット
常備薬
日焼け止め
ロールペーパー
保険証
携帯
時計
タオル
ツェルト
ストック
ナイフ
カメラ
ポール
テント
テントマット
シェラフ
ヘルメット
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感想
9月の山はほとんど雨と台風でどこにも行けず終わった。こんなことも初めてだった。だから今度の連休は精一杯、歩きたい。束の間にできた3連休。どこに行こうか。飯豊連峰、上越、天気の予報を見ては一向に決められず。そうだ、今しか行けない下ノ廊下がいい。地図を眺め、考えた。黒部ダムから欅平を経由して清水尾根に継続すれば白馬岳に繋がる。ないない。これでは弩Мだ。でも。実現すれば素晴らしい縦走になる。週2回の10キロのジョギングを続けた。
新宿からバスに乗り信濃大町に夜着くと中学生の女の子たちが「こんばんはー」と元気に挨拶してくれた。そこから少し歩き、一昨年裏銀座を歩いたときにお世話になった民宿に泊まった。素泊りなのにご主人が珈琲を出してくれて昔の大町の話をしてくれた。翌朝、民宿の前のバス停で扇沢行きのバスを待つ。今度は男性が声をかけてきた。山?どこまで歩くの?下ノ廊下です。というと。その人は黒部ダムの職員で、これから仕事だといった。気を付けてね。何気ないことでも一人旅ってこういいうことが印象に残ったりする。
トロリーバスに乗り黒部ダムとは別の登山者用の出口から外に出て、下ノ廊下に下っていく。一緒に降りた単独の男性と話しをしながら歩くと、自分と同じ千葉から来たという。ひょうひょうとして颯爽と下ノ廊下を何でもない道のように歩いて行った。山慣れた人だった。旧日電歩道は断崖絶壁に無理やりつけられたような道だった。ルート全般に渡って細いワイヤーが岩に固定されているが、脚を滑られせ落ちたりすれば終わりである。「黒部ではケガはない。ミスはすなわち死である」と当時の現場では言われていたように、まさにそんな道が何時間にも渡って続く。想定外だったのは反対の欅平からも人が多く歩いてくることだった。すれ違う時には命綱のワイヤーを離さなければすれ違うことができない。その度に声を掛け合い、お互い譲り合う。下ノ廊下とは突然正面から現れる初対面の人に対し、全信頼を置いて命を預け、「こんにちは」と挨拶を交わすという今までに例のない道であった。正直。白竜峡あたりまで、景色を堪能する余裕はなかった。十字峡の吊り橋のあたりでようやく感覚が麻痺して来たのか、自然の奥深さを感じることができるようになってきた。花崗岩の岩壁には急な水の流れによって深いV字谷が刻まれている。そこにいくつもの急流の滝が落ち、その釜の色は蒼く澄んでいる。ナナカマドの葉は紅葉し真っ赤な実を重たそうにぶら下げている。そんなところに道を作ったのは関電がここにダムを造るため。すごいところだ。
仙人谷ダムから関電の施設内に入る。ムッと熱気が立ち込める。高熱隧道だ。ダイナマイトの自然発破で何人もの人が死んだという小説の内容を思い出し少し怖くなったが、感慨深くあたりを眺めた。ちょうど作業用トロッコが入ってくるところだった。
阿曽原温泉小屋でテントの受付をし、有名な露天風呂に入った。話のタネになると思って入ったが、純粋に心に沁みる良い温泉だった。
翌朝、雨に濡れたテントを回収し欅平へと下る。途中20名ほどのツアーとすれ違う。突然、人気観光地の欅平に着くと、気持ちが変わらないように、休憩せず祖母谷温泉小屋へと歩いた。女将さんに清水尾根の情報を聞くと「あんた、間が悪いね。今日、避難小屋を締めにいったよ。」とのことだった。10月中旬までと聞いていた不帰岳避難小屋はなんと今日で終わりだという。「すれ違うと思うから、もし使いたいなら開け方をきくといいよ。気を付けてね」と女将さんは言った。広葉樹で囲まれた百貫の下りの中盤あたりで熊鈴をリンリンと鳴らしながら長靴の男性が駆けおりてきた。「元に雪囲いを直すんだったら使っても良いよ」とのことでスマホで開け方を教えてくれ、また山を駆け降りて行った。濡れたテントが重く体にのしかかり、歩いては止まり、また歩いた。少し薄暗くなるころ、ようやく避難小屋に着いた。小屋の前にはテントを張る充分なスペースがあった。テントに転がり込み、湯を沸かして珈琲を淹れた。寒かった。気が付くと途中ガスっていた空には半月と星が光っていた。
3日目の朝。少し凍り付いたテントを折りたたみ、出発した。今日で山旅が終わると思うと少し寂しくなった。正面杓子岳の方か朝陽が昇った。眩しい。振り返ると剱岳がどっかりと座っていた。清水岳を越えると左に大きく日本海が見えてきた。その日本海に注ぐのは新潟県糸魚川市に注ぐ姫川、富山県黒部市に注ぐ黒部川が悠々と流れている。黒部ダムからここまで。この山旅をやってよかったと思った。
旭岳をトラバースすると突然、前方に見間違いようのない建物が見えた。頂上はそこから少し先だ。その頂上はガスっていて雲に隠れていたが、ここまで歩いた満足感もあり、それは大したことではなかった。とりあえず山頂に行こう。白馬山荘にザックをデポして少し登り、山頂標識に手を触れた。直後。無風なのに、なぜかガスは始めから無かったかのように晴れていった。そこには雪倉岳、朝日岳その先糸魚川まで続く栂海新道、その犬ヶ岳にある栂海山荘が見えた。剱岳の方はガスが掛かっていたが、よく見ると谷間に小さく反射して少し鈍く光っているものが見えた。歩いてきた黒部ダムだった。(おしまい)
久々の長文最後まで読んでくれた方、ありがとうございました。
makasioさん、こんばんは。
ご無沙汰していますが、素晴らしい山行でしたね。
makasioさんらしい他に真似のできないチャレンジ精神と、孤独をエンジョイしてるかの如くな図、がいつもながら素晴らしいです
それにしても下の廊下、凄いですね。
写真でも迫力が伝わってきますが、よく多数が歩かれてますね。makasioさんでも息が抜けない長歩きなのか〜 と思いました。
しかも祖母谷温泉経由で白馬に向かわれるとは、makasioさんならではのガッツを感じます。
寒くなる時期の滑り込み歩き、いいものを見せて頂きました&お疲れ様でした
Shu Maeさん、コメントありがとうございます。9月はほとんどやりたいことができなかったのでこれでスッキリです。ソロは自由を味わうことができますが、はっきり言って寂しい、不安だし、怖いです。でもやり遂げた時の充実感はこのうえありませんよね。下の廊下は痺れました。良い意味です。行かれたことが無ければ是非、行ってみてください。(^^)
日帰りで行けないか悩みましたが出発の時間に制限と車の回収が難しいから無理だと2年前に一泊で計画しました。
結局出発が遅れて阿曽原温泉ピストンになっちゃったけど下の廊下は堪能できました。
清水尾根が結構きついんだよね。
この時期ならではの山旅お疲れ様でした。
まめさん、ご無沙汰してます。日帰りとか意味の分からないことをまた!笑
まめさんなら出来るのか。^_^
清水尾根の登りは最後ほんとうにこたえました。濡れたテントが重かったです。ただ、温泉に入ったことで身体に痛みはありませんでした。大変、充実した山行になりましたよ。
(^^)
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