暴風と紅葉の浅間山


- GPS
- 04:57
- 距離
- 15.7km
- 登り
- 999m
- 下り
- 1,547m
コースタイム
- 山行
- 4:30
- 休憩
- 0:27
- 合計
- 4:57
天候 | 曇り後晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2018年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
タクシー
下山は天狗温泉浅間山荘に |
その他周辺情報 | 天狗温泉浅間山荘♨️ |
写真
感想
浅間山の火山活動による登山規制が3年2ヶ月ぶりに緩和されて、前掛山まで登れるようになったことを知るのは最近のことであった。規制緩和をうけて週末は大変な混みようのようだ。火曜日の朝に東京で用事があるので、月曜日の東京への移動のついでに寄り道する山を思案していたところ、浅間山の規制緩和のことを思い出す。この日、浅間山付近は1日中晴れの予報だ。
夜行バスが終着の小諸駅に到着すると、車内に残っていた乗客は私一人のみであった。時計
を見ると7時40分過ぎ、本来の到着予定時刻よりも30分以上早い。高峰温泉行のバスまで1時間以上待たねばならない。駅の周囲は閑散としており、駅の待合室で待つほかなさそうであるが、快晴の天気の中で1時間待つのは辛い。折角、早く到着したので、ここは思い切ってタクシーを使って登山口まで行くことにしよう。
空はすっかり晴れており、透明な秋空を背景に浅間山が見える。剣ヶ峰はピークまでスッキリとした姿を見せているのだが、どうやらその背後の前掛山のあたりのみに雲がかかっているようだ。
高峰温泉までの道は紅葉が真っ盛り。特に落葉松の紅葉が最盛期である。登山道に到着すると、八ヶ岳連峰の上の方のみに雲がかかっている。雲の高さは二千ニ〜三百mのあたりか。ということは‥
歩きはじめると登山道には霜柱が目立つ。落葉松の林はすぐに終わり、シラビソと思われる針葉樹林に入る。一瞬、雲が晴れて山頂に至るまで針葉樹林に覆われた黒斑山が姿を見せる。なだらかな樹林の登山道を歩くと視界が開け、目の前には絶壁の下方に火口原を見渡す。槍ヶ鞘らしい。前掛山は完全に雲の中だ。
小さな鞍部に下って登り返すと岩場の頭がある。トーミの頭と呼ばれるところらしい。ふと気が付くとポケットに入れた手袋が片方しかない。手袋をポケットに入れたのは槍が鞘だから、そこまでの間のどこかだろう。まだ5分くらいだろう。再び鞍部へ下って来た道を登り返すと、槍ヶ鞘の手前で登山道に落ちている手袋を見つけるのだった。手袋を落としたことにすぐに気がついたからよかったが、ここのまま気がつかずに先に進んでしまったとしたら、非常に辛い事態になるところだったのだ。
トーミの頭を越えると黒斑山の山頂まではすぐである。もう少し暖かければ道が泥濘んで、靴もズボンも泥だらけになるところであったであろうが、泥濘みは踏み跡ごと凍ったままであり、歩きやすい。
黒斑山の山頂はガスであたりは何も見えない。山頂で休んでおられる年配の男性は私のカメラを見て「宝の持ち腐れになってしまったな」と笑う。「晴れていたら浅間山の展望が素晴らしいんだけどな」と。男性はこの天気なので、ここで引き返されるようだ。
蛇骨岳へと外輪山を辿ると前方からソロの男性とすれ違う。あまりにも風が強いので蛇骨岳で諦めて引き返してこられたとのことであった。しっかりとしたハード・シェルを着ているように思われたが、その格好でも寒さで引き返されるとは。しかし、稜線を辿るうちに、目の前の崖の縁に蛇骨岳のピークが忽然と姿を現す。蛇骨岳の山頂にたどり着くと、先程のソロの男性には気の毒だか、山頂の風は穏やかだ。山の北側はすっかり晴れており、志賀高原を見晴らすことができる。北側の四阿山の山頂にも雲がかかっているが、みるみるうちに雲が上がり山頂が雲の下から姿を見せる。
山頂標の写真を撮っているうちに雲の中から黒斑山も一瞬、姿を現す。蛇骨岳から仙人岳への外輪山の縦走路は晴れており、北側に見下ろす嬬恋高原のあたりの紅葉が素晴らしい。溶岩からなる岩峰の縦走路は迫力があるが、意外と歩きやすい。
浅間山の本峰は先程まですっかり雲の中だったのだが、仙人岳からの下っている最中に突然、浅間山をそれまで厚く覆っていた雲が風に吹き飛ばされ、山頂が姿を見せる。雲の合間から山頂付近にさす光が火山岩の斜面に刻まれた筋を明らかにする。
Jバンドと呼ばれる急降を下ると、平らな火口平原を。ここでも落葉松が美しい。振り返ると蛇骨岳から仙人岳の斜面が青空を背景に荒々しい姿を見せる。左手には浅間山の山頂が雲の中から姿を見せたり隠れたりを繰り返す。
賽の河原分岐に達すると、いよいよこここらは前掛山にかけて長い登りとなる。登山道は落ちた落葉松の葉で絨毯を敷き詰めたようになっている。落葉松の林を過ぎると荒涼とした岩稜帯となり、斜面をトラバースしながら登ってゆく。目の前に広がる景色は全く変わらない。
景色が単調なせいもあるが、新たなトレラン・シューズの助けを借りて登りを飛ばす。足が大き過ぎるせいで(29cm)、シューズを選択する余地がない。いろいろな種類から選ぶことが出来る人が羨ましいのだが、今回のシューズはそれまでのシューズの後継モデルなのだが、足との相性が遥かによいようだ。
上からは続々と人が降りてくる。すれ違う方々は口を揃えて「上は風がきつくて寒かった」という。確かに上に登るにつれ、風がかなり強くなる。片方だけでも手袋がなければ大変だったであろう。
岩陰の少し風がマシなところで、レイン・スーツを着る。私の足が大き過ぎて、普段は靴を履いたままレイン・スーツの下を履くことが出来ないのだが、この日はトレラン・シューズであり、靴の上からズボンを履けるのは何とも有難い。て
浅間山への分岐、立ち入り禁止看板のところに来ると、突然、第2外輪山の荒々しい火口壁が視界に入り、その奥に前掛山のピークが見える。前掛山からもピークからは続々と多くの人が下ってくるが、登っている人は見当たらない。最後の方とすれ違うと荒涼とした光景を私一人が独り占めすることになった。
浅間山の噴火口付近も雲に覆われていたのだが、雲の合間から一瞬姿を見せる。晴れていれば噴煙も見えたのかもしれないが、この天気では雲と見分けようがない。
下りは広い火口原と黒斑山を正面に見ながら下る。再び落葉松の林が近くなると急に風の勢いが 弱くなる。落葉松の林に入ると風に舞う落葉松の葉が驟雨のやうに降りかかる。
草すべりへの分岐が近づくと、あたりは一面のかやとの原に覆われる。金色の綿毛を纏った鬼あざみがかやとの草原に浮かぶ。やがて熊笹があたりを覆うようになると、あたり熊笹の灰緑色と落葉松の二色のコントラストで占められ、雲の合間から陽が射すと落葉松が仄かに輝くのだった。
一の鳥居では不動の滝を経由する沢ぞいのコースへの分岐があるので、躊躇なく沢沿いのルートを選択する。それまでは落葉松がほとんどだった林はカエデやカツラの樹が混じるようになる。沢沿いの渓相と紅葉を楽しむうち。やがて林道に入る。下るにつれてズミやカエデの紅い葉が混じり、ますます紅葉は色とりどりになってくる。
振り返ると先程まで山の上にかかっていた雲はどこへ行ったやら、空はすっかり晴れ渡り、秋晴れの蒼空がどこまでも広がっているのであった。天狗温泉で温泉に入ると、沢の色と同じ赤茶色の温泉であった。
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