記録ID: 24050
全員に公開
無雪期ピークハント/縦走
白馬・鹿島槍・五竜
蓮華温泉から、朝日岳・雪倉岳縦走
1993年08月06日(金) 〜
1993年08月09日(月)


- GPS
- 80:00
- 距離
- 27.7km
- 登り
- 2,622m
- 下り
- 2,022m
天候 | 雨 |
---|---|
アクセス | |
コース状況/ 危険箇所等 |
梅雨明け後も前線が列島南岸にどっかりといすわり続け、観測史上の新記録を更新するたいへんな冷夏・多雨の夏休み。それならば、なるべく前線から遠い山へ行こうと、北ア最北の朝日・雪倉縦走に挑んだ。全行程の4分の3は雨と霧と風で、雨具を身につけることになったが、ときには晴れ間に稜線が顔をのぞかせ、豊富な残雪と、列島でも指折りの高山植物の多さに魅了された山行だった。 8月6日は、秋川市から車で蓮華温泉まで。310キロメートルを休みを入れて7時間で走り、午後3時半に到着。親子4人で1200円の料金を払って、温泉から400メートルほど先にあるキャンプ場で幕営した。テント慣れした我が家族は、木立ちの間に雨よけのタープを張って、その下でてきぱきとテントの設営の終える。さっそく樺の木が繁る場内にキノコの観察に。この日のテントは21張で、1張を除いてみんな登山者だった。夕食は、ツバタケを入れた炊き込み御飯と、わが家の家庭菜園でとれた野菜炒め。雨が降り続くが、天候がよければ、明日は14キロの長丁場で朝日岳に直接、向かうコースをとることにした。 7日。鳥の声で目が覚める。木々の間から雪倉岳が姿を見せ、上空ではガスの割れ目に青空が見える。もち入りラーメンの朝食後、撤収・荷作りをすませ、7時出発。歩きだしてしばらくの「兵馬ノ平」の湿原では、ヒオウギアヤメなどの花が満開。バックに朝日岳の残雪が映える。 道は、樹林に入ったり、小沢や湿地にでるということをくりかえし、どういうわけかどんどん高度を下げていく。木の根、苔のついた岩が道をふさぎ、峻二にはつらい。 しかし、朝日岳は北アでも自然がよく残されているところだけに、子どもたちの楽しみのタネには、事欠かない。休憩した樹林では、NHKの白神山地の特集に出ていた「ギンリョウソウ」(葉緑素をもたず土の養分だけで成長する白い植物)を岳彦が見つけ、「あっ、『白神山地』がここにもある!」と声を上げる。標高差350メートルをくだり、橋を渡った登りでは、ヤマカガシ(ヘビ)が出、切り株にはヒラタケの大きな株が見つかる。もう1つ橋を渡った樹林の登りでは、先にすすんでいた子どもたちが、「おとうさーん、ネズミだよー!」と声を上げている。追いついてみると、カメラのフィルムくらいの大きさしかないヒメネズミが、体に似合わぬ大きな目を動かしつつ、両手でなにやらつかんで無心に食事をしている。「かわいいね」「おとうさん、ぼくの親指くらいしかないよ」。オランダイチゴに似た大きな粒のノウゴウイチゴ(可食)も実をふくらませていて、峻二の足を止めた。 カモシカ坂をひと登りでカモシカ原に出ると、ニッコウキスゲの濃い黄色が鮮やか。出発して5時間ほどかけて、蓮華温泉の標高(1500メートル弱)をようやくとりもどす。花園三角点(1754メートル)から五輪尾根の登りでは残雪が現れはじめ湿原が多く、ワタスゲ、チングルマ、ヒオウギアヤメ、ハクサンコザクラ、シナノキンバイと色とりどり。ミズバショウがちょうど、時期だった。八平衛平へは、五輪山(2261メートル)をトラバースしつつ、残雪、小沢、樹林の連続。重荷に私も遥子もあえぐ。 ここで、予期せぬ事件が起こった。標高が2000メートルちょっとの場所で、私に高山病症状が出始めたのだ。例によって空気が薄く感じ、動悸・呼吸が荒い。苦しい。頭痛も出てきて、いよいよ本格的。これまでは2600メートル以下では、まず大丈夫だったのに、6、7月のトレーニング不足、そして、重荷がたたったか。何度も休憩をとり、16時35分、ようやく稜線へ。雨もふりだしたため、栂海新道との分岐点(標高2260メートル)の岩陰にテントを張る。ひと休み後の17時すぎ、富山県側の朝日池のそばの沢へ水をくみにいくが、幕営地に引き返す150メートルばかりの登りがつらい。吐き気も出て食欲なく、21時すぎまで眠って、ようやく回復した。遥子にも、子どもたちにもだいぶ、心配させた。おかげで、ウナギ丼の夕食を食いはぐれたが、その分、おそい晩酌で挽回した。 8日。快調な目覚め。やはり高山病は、入山初日が要注意。雨は一時的にあがるが、カレーライスの朝食を食べ、荷作りを終えると、また降り出す。7時10分発。朝日岳山頂(2418メートル)に8時02分着。横なぐりの雨で、すぐまた歩き出す。ここで誤って朝日小屋方面に下りかけて、遥子と子どもたちの注意でまた山頂にもどり、縦走路を見つけて、下降する。 雪倉岳との間にある赤男山(2185メートルくらい)は西面にトラバース道があるが、ここは小桜ガ原と名がついた湿原で、ハクサンコザクラ、ミズバショウの花、それに「お茶碗のような」(岳彦)イワイチョウの濃い緑色の葉が、池溏のまわりを埋めている。 2070メートルほどの鞍部からは、いよいよ雪倉岳へのガレ場と湿原の登りとなる。とりつきのザレでは、大雪山に見られる氷雪作用の地形の紋様が、地表に見られる。冬季の気候の厳しさを感じる。この1帯からは縦走路で屈指のお花畑が続き、タカネマツムシソウ、シロウマアサツキ、タカネナデシコ、ミネウスユキソウ、ウルップソウ、ヨツバシオガマ、クルマユリ、ツガザクラ、タテヤマウツボグサ、ハクサンフウロ、コマクサなどが、いっせいに開花している。 驚いたのは、北海道の海岸に咲くハマナスそっくりの鮮やかな赤い花があったこと。この晩、図鑑で調べたら、タカネバラと呼ばれる「清楚で華麗」な花だった。 山頂の手前では、雨の中で、三脚を構えて一生懸命、花を撮影している人がいる。カメラは、あまり見栄えのしない黒っぽい花に向けられている。横目で通りすぎながら「なんで、こんな花を撮るのか?」と思ったが、これも後で図鑑で調べてみたら、ミヤマアケボノソウと呼ばれる、なかなか見つからない「人気の花」とわかった。避難小屋の近くにも、幾株が生えていて、そういう目で雨上がりに見ると、なかなか品のある花である。 図鑑でもう1つ、気づいたのは、「北アルプス北部以北」とか「中部山岳では朝日岳・雪倉岳の1帯だけに」という花がいくつもあり、撮影地に朝日岳、雪倉岳が選ばれた花も多いこと。その花の稜線に、いちばんの開花期にやってこれたのだから、雨は大目に見てもいい、という気持ちになった。(この項は、避難小屋で水割りを飲みながら感じ入ったこと) 雪倉岳(2611メートル)山頂には、13時10分着。横なぐりの雨に富山側からの風がくわわって、冷たい。まっすぐ歩けないくらい、風が強い。下山し始めると、岳彦が「あんな所に鳥がいるよ!」と声をあげ、近づいていく。雷鳥の母子だが、ヒヨコのように小さい雛鳥は1羽しかいない。「キツネにでも襲われたのかな?」「こんな厳しいところで、何を食べてくらしてるのかな?」「おとうさん、雷鳥って、えらいね」などと話しながら、強風に負けず足をすすめる。すると、今度は、6羽の雷鳥がハイマツの茂みから飛び出してきた。子どもも親鳥と変わらぬ大きさに成長して、どれが親か区別がつかない。それにしても、悪い天気なりに、楽しめる山である。そして、息子たちは、けっこう荷物を担がされているのに、とにかく体力も精神力も、たくましくなってきたと感じる。 13時45分、ガスの切れ間に、ようやく雪倉岳避難小屋を見つけ、模様ながめの大休止とする。 続きは以下にあります。 http://trace.kinokoyama.net/nalps/yukikura.93.8.htm |
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