冬の赤岳入門
- GPS
- 27:12
- 距離
- 18.9km
- 登り
- 1,496m
- 下り
- 1,522m
コースタイム
13日(日):6:50行者小屋−8:44美濃戸山荘8:50−9:40美濃戸口駐車場
天候 | 曇ー快晴・稜線で風があるも弱い |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2013年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
全般的に雪は少ない。美濃戸口から上は凍結箇所多し。行者小屋まではアイゼンなしでも大丈夫だが、凍結箇所要注意。アイゼンで登る人もいる。 行者小屋から文三郎尾根では、まず入口付近に左に入る踏み跡があり、そこを進むと途中で踏み跡が途切れ、戻って樹林の中を下ると文三郎尾根への道と合流する。左折しないで直進が正規ルートのようだ。雪は少ないものの、 尾根の階段はほぼ埋まっており、雪はさらさらで乾燥している。稜線付近から風が巻いて下から吹きつけ、あられのようなものが吹きあげてくる。 稜線から赤岳:山頂直下の岩場は若干凍結しているが岩はむき出しで、ホールド、スタンスに苦労するところはなさそう。 赤岳ー地蔵ノ頭:急斜面の部分もあるが、アイゼンがよく効く。強風の際は注意。 地蔵ノ頭ー行者小屋:急斜面の下りが続くがアイゼンワークを利かして下ることができる。鎖はところどころ出ているが埋まっている場所が多い。階段は埋まっており、下の方(最後)に出ている箇所がある。 |
写真
感想
冬山ステップアップとして、M登山学校にお願いして赤岳テント山行でトレーニング。冬山初心者でテント山行も数十年ぶり、重いザックも数十年ぶり、果たして無事赤岳までたどり着けるだろうか??週末から連休は下り坂の天気と不安だったが、連休始めの天気が悪くなさそうなので、出発を一日早めて金曜夜スタート。出発に際し、あわてて購入したグレゴリーパリセード80Sに必要と思われる荷物を詰め込むと、18kg近くなり、重い。これで歩けるのかーー?
美濃戸口駐車場に1時過ぎに到着。その先はチェーンの不調で、美濃戸口からのスタート。仮眠して4時過ぎの起きるが、不用品を車に残し、ビーコン(レンタル)などを装備し、共同装備品の炊事道具を追加し、必要最小限のものを詰めなおす。ハーネスとヘルメット等は置いていく。私が荷造りにもたついて、出発が6時45分過ぎになってしまう。45分も予定オーバー、大きな荷物を詰めるスキル不足。重量は15kg位か?行者小屋までは凍結しているがアイゼンなしで歩行する(富士山で練習した)。
美濃戸口を出発すると、いきなり急坂を車がスタック、四駆のスタッドレスだがチェーンなしで登って動けなくなっている。後ろの車は諦めてここから歩きになる。近年では最も重いザックを担いで、行者に向かって進む。冬山をステップアップしたいなら、20kgの荷を背負って、登山地図のコースタイムより1割り増しか、CT通り歩けるくらいのトレーニングをしないと先にはいけないと師匠の当然ながら厳しいお言葉ーー。
美濃戸の北沢・南沢分岐まではCTに近い1時間強で進めたが、南沢沿いに行者に向かうと、少しづつ遅れる。予定時間よりかなり遅れており、まだ晴れていないので、赤岳までいけるかどうか微妙な情勢。分岐から行者までの中間点手前、標高1900mあたりの河原付近で一本(休憩を一本取るという登山用語はボッカが休憩時、重い荷物を降ろすことができず、立ったまま一本立ちする姿勢から来ているとの解説)。
中間点からしばらく急な岩混じりの登りで、凍結箇所に注意しながら進む。しばらく沢から少し離れ、再び南沢沿いの道を進むと、大同心方面が見えてきた。傾斜が緩んで、雪道となる。途中、先行していたベテランの高齢登山者の休憩中、挨拶し、話をする。御年74歳の大ベテラン。山岳会の若い仲間から、北アルプスなどは遅くなっているのでダメだと言われ、自分でも歩ける冬の赤岳に来ているという。70を過ぎても冬の赤岳を登るのが凄い。見習いたいものだ。このように自分の体力をよく考えながら歩くコースを決めるのがベテランだと師匠。
ここからが結構長く感じる(昨年夏、始めてこのコースを歩いたときに感じた)。10時を過ぎ、小屋が次第に近づきつつあるとき、ペースが落ちていると叱咤激励。予定より遅れ、天候もはっきりせず、風も出てきそうなので、今日は行者止まりかと考えていたら、晴れてきて大同心の稜線に日射しがあたっている。それに励まされ歩き続け、最後は10時50分過ぎになんとか行者小屋前に出た。
急いでテントを建てる実習。自分ひとりでは夏場、ツエルトを使った経験しかない。支柱を張り、シートを敷き、外張りをつけてザックの不要物を中に入れる。予定時間は30分以上遅れているが、天候がよくなったので出発となる。出発準備をしていると、トレーナーK氏の弟子数名がやってきて、師匠との会話。どうやら横岳手前の石尊峰へのバリエーション・ルートを登るそうだ。
遅い出発だが、アイゼンをつけ稜線を目指す。はじめ、踏み跡が二手に分かれたので左に進むと、踏み跡が消え、間違い踏み後に入ってしまうが、すぐ下で正規ルートに出る踏み跡があり、文三郎尾根に向かう。階段は雪に埋まり、鎖はところどころ上に出ている。急斜面を極力フラット・フッティングの逆ハの字など12本爪アイゼンを効かせて進む。フラットフッティングで真直ぐ登降するのが基本中の基本と繰り返し、指導される。急斜面で怖い感じもするが、アイゼンがよく効く雪面だった。
稜線方面を見上げると、少し雪煙が見える。風が少し出て、あられが降っている。時々、風が強くなり、あられが目に入って痛い。途中、一本取り、水分と行動食を補給して、一気に稜線を目指す。阿弥陀と中岳が大きく、とりわけ阿弥陀はカッコイイ。山頂方面の姿に迫力がある。時々、上から下ってくる登山者とすれ違う。地蔵尾根などから登って、こちらに下る登山者の方が多いようだ。すれ違う登山者の姿を見て、アイゼン歩行の基本ができていない初心者ハイカーが多い、と師匠が嘆く。この程度の斜面は怖いようデモフラットで斜面に対して重心を真直ぐに保ち、真直ぐ下るのが基本で、歩行の基本ができていればアイゼンがよく効いて、滑らないという。腰が引けている方がバランスを崩して危ないのだという。
1時半前、稜線に出る。ここで体調確認、ここから赤岳まで30分、時間がないのでここで引き返すか赤岳まで進むか、自分ですぐに決めろと師匠。まだ体力には若干余裕がある。写真だけとって進むことを決意。
山頂直下の岩峰まで気持ちよく雪面を進む。
師匠から「ガンバ」の声がかかる。直下の岩場に出る。岩場のアイゼン歩行、ピッケルとホールドに関する注意を聞きながら、岩場を進む。岩場はホールド、スタンスが豊富で登りやすい。ほどなくーーついに山頂に出る。ヤッター!!
師匠とハイタッチ。「ハイスピードで足取りも軽く」とは行かなかったが、ともあれ、冬の赤岳初登頂は自分でも驚き。よく体が持った。天候にも恵まれた。よく晴れて気温が比較的高く、稜線での強風もほとんどなかったので、なんとか歩けたのだと思う。師匠に山頂での写真を撮っていただく。周囲を展望するとなんと富士山やが見えている。阿弥陀が大きく、権現もやや遠くだがはっきり見えている。このあたり、キレットなどの落ち込みが大きく、標高差の大きい登下降の多い、南八ヶ岳の核心部だろう。冬はいっそうの迫力を感じる。
しかし終わったわけではない。これからの下山が大切。事故は下山時に多い。地蔵尾根を目指し、まず赤岳山頂小屋に下る。登山者グループがここで休憩中。私たちも一息入れて行動食を補給し、下山に備える。展望荘から地蔵の頭にかけてが風が一番強まる場所と師匠。フラット・フッティングで下っていくと、突風が吹く。しかし師匠は、この程度で停まるな、風は大丈夫と叱咤。確かに飛ばされるほどではないが、霰が目に痛い。地蔵の頭に出る。登ってくる人が多いが横岳方面に向かう人の姿はない。ここからが急なくだり。当初は怖く感じたが、この程度の急斜面はフラットでアイゼンを効かして十分歩けると師匠。鎖の頭が出ている急斜面をアイゼンをフラットで下る。途中、トレースの消えているナイフリッジがあったが、先端の少し谷側を進む。師匠が見ている。フラットでがんばる。
途中、多くの登山者(グループ)が登ってくる。この時間だと展望荘どまりなのか?「アイゼン歩行の初心者が多い」と心配顔の師匠。
少し下ったところですれ違った若い登山者にピッケルの持ち方が逆だと師匠が注意するも、その登山者は「こうやって滑落防止するのでこれでよい」と答える。滑落してからでは遅いーー滑ったとき、滑落する前にすぐ止めるには、持ち方が逆で、「登りはピック側、下りはブレード側を進む方に持つのが基本、滑落した後では遅い」、というが、ハイカーはこれでよいと突っぱね、師匠当惑。赤岳の冬は初心者が多く、心配だという。
急斜面の下りも程なく終わり、安心する。最後は樹林帯に中でシリセード、グリセードの練習だが、初めてだとなかなかうまくいかない。師匠は初めてでも一発でできたというが、私はだめでした。斜面が蛇行すると曲がったり止める自信がない。
4時過ぎに行者小屋付近のテント村に戻り、食事の準備。テン場近くの水場になんと水が出ていることが登りのときにわかった。テン場で再び師匠の弟子チームが石尊峰ルートから戻ってきて、話が始まる。私は途中で水を採りに行く。プラティパスの中に入っていた水分が凍結し、蓋の下の氷が詰まって水が入らない。まずこの氷を溶かして取り出すので一苦労。なんとか出して水を汲む。指先がぬれて冷たい。凍傷にならないよう気をつける。幸い気温はさほど低くないし風もないのがラッキー。
テント内では師匠が用意した肉じゃがのような豚汁のような料理の具材とスープを取り出し、煮込み始める。私はゾウ足をはき、師匠は料理にも手抜きをしない本格派。夏なら米から炊くという。すごいーー。重い荷物が苦にならないとできない。暖かい料理が出来上がり、ご飯もいっぱいいただく。お茶を飲んで一呼吸してから雪を集めて溶かし、明日の準備。テルモスにお湯を移した後、明日の朝食用などにもう一度雪を溶かす。
翌朝、3時45分頃目が覚め、師匠はすでに準備中。よく眠っていたというが、前の晩も車中あまり寝ておらず、やはり疲れているようだ。うどんを昨晩の残りのスープに入れて、平らげ、出発準備。まずシュラフとカバー、マットなどをたたんで荷物を全部外に出す。次にテントをたたむのだが、すでに当方はもたついて時間がかかり、師匠に叱責される。昨晩、帰り準備を頭の中で少し考えたのだが、疲れていたせいか、考えがぼやっとしたまま眠ってしまう。荷物はスタッフバッグにいくつかに分けるが、私の場合は分けすぎで、時間がかかりすぎということだ。テント収納前は荷造りではなく、全部まとめて入れて、外でトンと収納後に荷造り作業を手早くするのが基本ということ。テント収納後、荷造りとアイゼン装着。ここでも荷造りに手間取り、予定時間を45分も大きくオーバーーー情けない。4時起床、6時出発が6時45分にもなっている。すでに明るい。なんということかーーそんなに時間を食っていること自体に気がついていないとはーー、頭も体も働いていないのは疲れのせいかーー言い訳もできない失態ーーしかし自分の実力がそうだと言うことを認めるしかないーー。
7時前に出発、予定を大幅にオーバーしているので、というよりも練習として早足で下山、アイゼンをつけても早く下る練習が大事という。文三郎尾根や地蔵尾根のような急斜面でもうまくアイゼンを利かせばほぼフラットで下降できるという。
岐路はそこまでの傾斜もないので余計早く下れるはずのだが、現実は簡単ではない。私より5kg以上重そうな荷物を担いで軽がると下降していく。なんとか後を追って下り、分岐に8時40分頃到着。休憩を入れると二時間近くかかっているようだ。コースタイムとほぼ同じで、これでは遅い、ということだ。下山中、これから登る多くのハイカー(グループ)とすれ違う。明日は大雪のはず。どうするのだろう?はやでの人は日帰りできるが、美濃戸に近づいても、まだまだ登るハイカーつ次々に出会う。今日中に行者か鉱泉まで下れれば何とかなるだろうがー、時間が遅いとそれも大変で展望荘どまりだ。そういえば13日(日)、今日が展望荘の閉まる最後の日だ。明日は下山に苦労することだろう。雪がよるどれくらい積もるのか(予報では14日の積雪量、八ヶ岳80センチ)だが、風も強くなりそうでそれも心配だ。
分岐・美濃戸山荘に8時40分頃到着、一息入れて9時半過ぎに美濃戸口の駐車場に戻る。美濃戸ではアイゼンをはずすかどうか、問われたがはずさずに下る。アイゼンははずせるならはずして下るほうが、疲れないし早いと師匠は言う。しかし私の技量では林道とはいえ、凍結路をアイゼンなしで下る自信は今はない。美濃戸口に到着してもまだまだハイカーは次々に到着、9時半過ぎには茅野からの定期バスも到着し、大勢の登山者が降りてきた。アイゼンをはずし、駐車場代金を払い、荷物を整理して出発、道の駅小淵沢の「延命の湯」で疲れを癒し、帰路に着いた。
なんだか私、凄く厳しい指導者のよう
厳しいところは厳しく。でも根は虫も殺せない温厚派ですよぉ
ご指導のおかげでなんとかアイゼン・ピッケルワークの基本、初歩を少しは会得し、無事赤岳登頂できました。ありがとうございました。
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