晩秋の深南を満喫❕大無間山南尾根〜大根沢山〜朝日岳
- GPS
- 32:00
- 距離
- 34.5km
- 登り
- 3,781m
- 下り
- 3,869m
コースタイム
- 山行
- 10:30
- 休憩
- 0:55
- 合計
- 11:25
過去天気図(気象庁) | 2020年11月の天気図 |
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アクセス |
利用交通機関:
自家用車
帰りは寸又峡温泉からうさぎ辻までバスで戻る予定でしたが、最終バスにタッチの差で間に合わず、車道を5キロほど歩いて戻りました。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
■栗代林道入口〜尾根取り付き 色々な方の記録にあるように特に問題はない。崖崩れの場所は迂回路の階段が整備されてるので、これを利用する。ワンボックスのボロ廃車があるところから尾根に取り付く。 ■尾根取り付き〜風イラズ 稜線までは踏み跡がハッキリしないが、薮はないのでひたすら真っ直ぐ登るだけ。尾根に出てから風イラズまでは特に問題になるような箇所はない。キレットが1箇所あるが、手掛かりがあるので困難ではない。風イラズの手前はひたすら急坂で参る。 ■風イラズ〜大無間山 特に問題になる箇所は無く、快適な区間。 ■大無間山〜三方峰 大無間山から鞍部までの下りで方向感覚がおかしくなりGPSを頼った。尾根が顕著でなく踏み跡も怪しいので少し難しい。 ■三方峰〜大根沢山 夜間だったせいもあるが、三方峰のひとつ北のピークからの下りで迷い、戻って何度か下降をトライし直した。この区間は明瞭な尾根をたどるだけで簡単だと思っていたが、ピークが広く尾根の発生の仕方が複雑な箇所もあるので、視界がない場合は要注意。あとアザミ沢のコルは南北どちらからアクセスしてもこれでもか!という程下るのでウンザリする。アザミ沢の水場は稜線から下り2〜3分で簡単に水が取れる。大根沢山北のブナ沢とは大違い。 ■三方峰〜鹿の土俵場〜お立ち台下降点 三方窪への下りは尾根も踏み跡もハッキリしていないので非常に難しい。一度通っているルートなのに気がついたら90度以上方角がズレていて焦った。GPSはお守りとして持っておいた方が良い。三方窪からのルートは諸説あるが、一番確実なのは尾根を忠実に辿ることだ。薮も深くなく目印もある。 鹿の土俵場から先は大昔に斜面を巻いて、自分史上Best3となる道迷いを起こした思い出深い地帯である(調べたら17年も前だ)。今回は馬鹿正直に稜線を行ったが、正解だった。 ■お立ち台下降点〜朝日岳 地形は難しくないが、薮が酷く思ったより時間がかかるのと、意外にも細く急な岩稜が多く危険。ザックが引っかかりまくるのでイライラする。特に1717〜朝日岳の間が薮がひどいのと、足場の悪い危険な箇所が多い。全行程でここが最も注意を要した。 ■朝日岳〜寸又峡温泉 登山道なので特に問題は無いが、合地ボツから下はザレで滑りやすい。固定ロープ箇所多数。 |
写真
感想
11/3(火) 雨のち快晴、夜は一時吹雪
うさぎ辻バス停〜栗代林道入口〜大無間山〜三方峰△(11時間25分)
朝に雨はやむとの予報だが、うさぎ辻を出発するときにはまだ降り続いていた。林道を歩いているうちに止むだろうと、気にせず出発することにする。栗代林道に入りしばらく行くと通行止めの厳重なバリケードがあり、そばに階段のう回路が作られている。試しにバリケードを越えてみたが、すぐ先で道は跡形もなく崩れており垂直な崖である。歩いて何とか通れるというレベルではない。素直に迂回して進むしかない。
崖崩れ場所を迂回すると、すぐにワンボックスの廃車があり、ここが尾根へのとりつき地点だ。ここまでヘッ電歩きだったが、ほぼ予定通りであり、順調な滑り出しである。雨も上がり上空も晴れてきた。
稜線まではほぼ直登。踏み跡は怪しいがヤブがないので好きに登ってゆく。途中から北にトラヴァース気味に巻いて稜線に乗った。稜線はヤブも薄く踏み跡も思ったより明瞭で快適に歩けた。紅葉が奇麗で太陽光に映える。栗代川対岸の朝日岳も美しい三角形である。
風イラズの手前のキレットを注意深く超えると、これでもかという急坂だ。あまりに長く、重い荷物なので休憩が多くなる。ヘロヘロになって山頂部に出た。こんな事じゃ大無間まで今日中に着くかな?と心配になったが、とりあえず風イラズで大休止して食事をとった。風イラズは本当に風のあたらないピークで何とも快適。ここに泊まれれば最高の夜になるのだろうがまだまだ時間はあるので先へ進む。
大無間山まで体力の枯渇を心配していたが、ここから先はエグい登りはあまりなく、順調に歩を進められた。それにしても大無間山はなんと雄雄しい山なのか。個人的には西側から見た姿が好きだが、南からも気に入ってしまった。そして北から見る姿もいいのである。結局どこから見てもカッコイイのだ。なんとか山頂に到着、2度目の大無間は南尾根から登ろうと決めていた。達成できて素直にうれしかった。誰もいない静かなピークを満喫した。
体力も時間も問題なさそうなので、予定通り三方峰まで進む。大無間からの下りでは途中道を外してしまいGPSを頼った。大事には至らなかっただろうが、早めに気づいてラッキーだった。午後になって風が強くなってきたので三隅池に泊まろうかと思ったが、ここは夜は見るからに動物の集会所になりそうなところだ。今年は熊の出没も多いのでそちらの恐怖が先にたつ。風は怖いがピークにテントを張ろうと三方峰に進む。
三方峰は爆風になっていた。すごい音で、こんなところで寝れるのか?と思ってしまう。しかし山頂のすぐ南に一段低くなっている場所があり、そこは風がほとんど当たらなかった。そこにテントを張り無事に夜を迎えたのである。素晴らしい日没になった。ご飯も上手く作れて、風音を除けば快適な夜になる、、はずだった。
しかし、夜9時過ぎにバチバチという音で目が覚めた。爆風が荒れ狂っているがテントはそれほど揺れてはいない。なんだろうと思って外を覗いてみるとなんと雪になっている。何じゃこりゃ〜 予報は今夜も明日も快晴である。こんなんじゃ明日は大根沢山まで進めないどころか、下山も難しいことになってしまうかもしれない。困ったことになった。今更なから深い山中に一人でいることに不安を覚え始めた。眼が冴えてしまい、しばらく寝付けなかった。
‐‐‐
11/4(水) 快晴
三方峰〜大根沢山〜三方峰〜鹿の土俵場〜お立ち台下降点〜朝日岳〜朝日岳登山口〜うさぎ辻バス停(13時間50分)
いつの間にか雪は収まり、それどころか風も弱くなったので熟睡してしまった。外はこうこうと月が輝いている明るい夜だ。少々寝坊してしまったが、最高のコンディションを逃す手はない。予定通り大根沢山ピストンを狙い出発した。
ところがすぐにつまづいた。三方峰の一つ北のピークからどう下ればよいか、全くわからない。ピークからの下降を何度か試しているうちに方角がまったくわからなくなった。大根沢山と大無間山を間違えて見ている事に気付き愕然とする。これは重症だとGPSを頼るが、それでも暗い樹林の中では道を見出すのは非常に困難だ。以前に台高山脈で全く同じ経験をしているが、またも同じ目に遭ってしまっている。トライ&エラーを繰り返し、なんとか目標の尾根に乗ったが20分以上ロスしてしまった。
その先は順調に進み、アザミ沢コルを見下ろす地点でようやくヘッドライトを消灯した。アザミ沢のコルまで下り、ほとんど空になっていた水筒に水を補給する。稜線から水場までは2〜3分の下りで到着できる深南ではかなりeasyな水場である。水の少ない時期だが水量は十分。喉も乾きまくっていたので、水は五臓六腑にしみわたった。
大根沢山まで長いのぼりだったが、空身なのでスピードを落とさずに到着できた。2年前にも訪れた懐かしいピーク。そして、寸又川流域の主稜線をこれにてコンプリートしたのである。素直にうれしかった。大根沢山頂部の森は本当に癒される美しいところだ。前にも書いたが、ここには何か宿っているものがある。
三方峰まで順調に戻ったが、道のロストもあって予定より30分くらい遅れている。この時点で最終バスは間に合わないかもしれないとやや覚悟を決めた(バスがダメなら車道5キロを歩くのみである)。アザミ沢で補給した潤沢な水でラーメンやチャイを作って大休止してからテントをたたみ出発した。
三方窪への下りでまた道を失った。今度は少し重傷で、急斜面を戻るのが厄介だったのでトラヴァースでなんとか復帰した。GPSが無かったらと思うとゾッとするが、もしそうなら場所を確信できる地点まで戻るべきだしそうしただろう。GPSは時間節約のためのツールでもあるわけだ。三方窪からは17年前通ったトラヴァースの道は使わず、稜線を歩いた。しかしこれは正解だったようで、前回迷った鹿の土俵場から先も全く問題なく進むことができた。お立ち台下降点付近にあるプレハブ小屋はいろいろ荷物があり、生活できそうだったが、しばらく誰も利用はしていなさそうだった。
お立ち台下降点から朝日岳まではかなり難路であった。岩稜帯とヤブ漕ぎで最後の方は嫌になった。危険でもあるので、フラフラになっても気は抜けず、気力だけは最低限保たねばならない。1717からの下りから全く進まなくなり、この時点で最終バスは諦めモードになる。それでもエッチラオッチラのぼり、ついに朝日岳に到着した。14時半までに着けばいいな〜と思っていたが、大幅オーバー。朝日岳の斜陽が差し込む森は気持ちよく、ここでとっておきのジュースを開けた。
あとは寸又峡までの登山道を下るだけ。ヤブ漕ぎのあとの登山道って何て楽なんだろうと、今まで何回も思ったことをまた思いながら下る。見る見るうちに標高がさがり、これは最終バスに間に合うんじゃないかと思うが、陽が沈み暗くなりはじめ、だんだん登山道が見えなくなってきた。そして体力がつきかけ、登山口に着いた頃にはほとんど一歩も動けなくなっていた。あと10分早く着いたらバス停まで歩いたかもしれないが、間に合わなかったら、うさぎ辻まで遠回りになってしまう… 大事を取って寸又峡温泉には降りず、林道を歩いて朝日トンネル入り口に出た。そこから1時間ほど歩いて何とか車にたどり着いたのである。
精魂尽き果てたとはまさにこのことであった。
‐‐‐
長〜い余談:
南ア深南部の主稜線と言えば、寸又川を周回する以下の稜線を指すと思われる。
【尾栗峠〜風イラズ〜大無間山〜大根沢山〜信濃俣〜光岳〜池口岳〜鶏冠山〜三又山〜中ノ尾根山〜黒沢山〜六呂場山〜不動岳〜鎌崩の頭〜丸盆岳〜黒法師岳〜前黒法師岳〜寸又峡温泉】
この稜線を今回の山行をもってすべて歩き通し、すべてのピークに登ることができた(ただし極めて危険な鎌崩の区間は除外)。足かけ13年で全5回に分かれる。どれもこれも多かれ少なかれ冒険であり、登山道を除けば一つとして簡単だと思えた区間は無かった。今まで深南部に並々ならぬ思い入れを持って登ってきたのもあり、大きな区切りとして素直にうれしい。
2008年11月 寸又峡温泉〜前黒法師岳〜黒法師岳〜丸盆岳
2012年11月 黒沢山〜六呂場山〜不動岳〜鎌崩の頭〜(ここから丸盆岳まで鎌崩の区間は未踏破)
2013年11月 黒沢山〜中ノ尾根山〜三又山〜鶏冠山南峰
2018年11月 鶏冠山南峰〜池口岳〜光岳〜信濃俣〜大根沢山
2020年11月 尾栗峠〜風イラズ〜大無間山〜大根沢山
究極的にはこの稜線を通しで歩くことが一つの大きな挑戦だろう。おそらく8〜9泊は必要と思われるが、適期の晩秋にそんなに長い休みは取れない。また、中央を走る合地山の稜線も残されているし、諸先輩方の記録を見て意外な尾根も歩けるのだということに今更気づかされる驚きがある。
深南は奥が深い。これからも晩秋の深南の山をチマチマと楽しんでいきたい(それでも十分にきついのだが…)。
コメント
この記録に関連する登山ルート
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triglavさん、おめでとうございます!
しかも、足かけ13年というのが凄いです(笑)
深南部も、もう雪が舞うんですね。
深夜に突然バチバチだったら、寝れませんね。
2日目は14時間稼働ですか?凄い体力です。
大無間から南とか朝日岳のルートなど歩いてみたいですね。
でも、私だったら最低3日は必要です(笑)
kiha58さん、ありがとうございます。
秋は色々忙しいので、暇があってかつ気が向いたとき限定で登っているうちに13年も経ってしまったというのが真実です(笑)。でも振り返ると、色々な冒険が思い出されて充実感でいっぱいです。
今回の計画は実は2泊で計画していました。色々あって1泊でも何とか行けるんじゃないかとやってみましたが、2日目の行程はエグすぎました。2泊でもまあまあのボリュームですね。
kihaさんも登られた合地山尾根もいつか挑戦してみようと思います。他にも試してみたい尾根がいくつかあります。もうしばらくは深南部の冒険が楽しめそうです。
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