岩籠山北東尾根〜乗鞍岳〜猿ヶ馬場山南尾根☆海の國から湖の國へ静寂の尾根を縦走
福井県
滋賀県
山猫
体力度について
- GPS
- 08:29
- 距離
- 20.3km
- 登り
- 1,519m
- 下り
- 1,445m
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| 天候 | 曇りのち晴れ |
|---|---|
| 過去天気図（気象庁） | 2022年01月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関：
電車 バス
下山は白谷温泉から高島市営バスで湖西線マキノ駅へ |
| コース状況／ 危険箇所等 |
・大岩権現から岩籠山への尾根はca360mの大岩の登攀が核心部。左手から登ったが、かなり難度が高いと思う。右手の斜面をトラバースして大きく岩を巻く方が登りやすい ・岩籠山〜乗鞍岳〜芦原岳〜猿ヶ馬場山の稜線はアップダウンはあるが危険箇所はなし ・猿ヶ馬場山からの南尾根は尾根上に掘割の古道があるが、最後の林道への着地が難しい。谷の左岸をトラバースしたがかなりの急斜面であり、しかも倒木が通過を困難にさせている。滑落の危険性があるので、可能であれば堰堤の上か下を対岸に渡渉する方がいいように思う。 |
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晴れていれば絶好の展望が広がっているのだろう
岩籠山（右）はすっかり晴れている
夕暮山（中央）と西方ヶ岳（左）
感想
岩籠山と乗鞍岳の間を南北に伸びる稜線はこれまで二回縦走してはいるがいずれも無雪期であり、改めて積雪期に歩いてみたいと思っていたところだ。この日は南の方は若狭のあたりでも昼過ぎまでは天気が良いという予報を信じて、岩籠山に向かうことにした。
早朝の新幹線からは雲ひとつない茜色の朝の空を背景に鈴鹿の山々のシルエットが浮かび上がる。北陸本線に乗り換えて北に向かうと金糞岳や横山岳は綺麗な姿を見せているにも関わらず、マキノの高島トレイルのあたりは山々にはしっかりと雲がかかっているのをみる。どうやら山行先の選択を誤ったようだ。午後の好天を期待するしかない
岩籠山に冬季に登るには駄口からのルートが一般的だが、大型のトラックが高速で行き交う国道を新疋田の駅から登山口まで歩きたくはない。ここは躊躇なく大岩権現からの冬季限定ルートを選択する。
駅の西側の住宅地を抜けると尾根の取付きにある浄水施設までは除雪されている。まずは施設の大岩権現に立ち寄る。案内板によると、慶応二年（1866年） に山津波が生じ、その後で村人が山に登ると、この大岩が山から流出する岩を堰き止めて村を救ったということがわかり、以来、大岩権現として岩を崇め奉っているらしい。
浄水施設の裏側から取り付くと、尾根の右手にかつての古道の跡があるようだ。尾根の下部の雑木林を過ぎるとまもなく樹高の高いケヤキの壮麗な樹林となる。ca360mあたりで尾根上には�堯覆�ら）とも呼ぶべき大きな岩が現れる。左側から�瑤魎�いて、最後は樹を掴みながら攀じ登ったが、右手に斜面をトラバースして、隣の尾根から大きく巻き上がる方が良かったかと思う。
�瑤鬚垢�ると尾根はケヤキの大樹の疎林が続くが、尾根の上部になるとブナの樹林が広がる。雲の中に入ったのだろう、あたりはガスに包まれるようになる。三角点629.4に上がるとピークの北西側は植林のようであるが、南側は草木のない雪稜が伸びている。草木は雪に埋もれているのだろう。
インディアン平原にかけての登り返しの尾根も無雪期には濃密な藪が広がっている筈だが、低木は既に雪に埋もれているようだ。頭上の雲は明るく、山頂部分のみにかかる笠雲であることは明らかななのだが、なかなかガスが晴れないのが残念だ。晴れていたら絶好の好展望が広がっていたことだろう。
雪稜を歩いてインディアン平原にたどり着くと、インディアン平原は昨日のものと思われる多数のトレースがある。ガスの中を歩いて山頂に向かう。トレースにつられて山頂の南東の小ピークca760mに寄り道することになる。晴れていれば絶好の好展望が広がるところではあるが、景色は雲の中だ。
叢林を抜けて山頂にたどり着くと、一瞬、雲が切れて青空の下に野坂岳から芦谷山へと続く若越国境の稜線が姿を見せる。なんと野坂岳から三国岳に至る若越国境のあたりはすっかり晴れていて、どうやら雲がかかっているのはこの岩籠山だけのようだ。
敦賀の市街と敦賀湾も一瞬、幻影のように雲の中から姿を見せるが、残念ながら写真に撮り損ねる。待っていればそのうちに晴れそうな感じではあるが、風も非常に強いので早々に山頂を退散し乗鞍岳に向かうことにする。
駄口へのルートの分岐となるp677までは多くのトレースがあるが、そこから先は当然のごとくトレースはない。次のピークca660mにかけては尾根芯には濃密な藪があるので、無雪期は尾根の右手を巻きながらトラバース気味に進むことになるのだが、その藪もすっかり雪に覆われている
前回この稜線を辿ったのは昨年の初夏であり地形や植生はまだ記憶に残っているところが多い。前回の山行の記憶と目の前に広がる雪景色とのあまりの違いに驚きながら稜線を辿ることになる。
三角点△739.6（点名 西近江）にかけては東側の雪庇の張り出した尾根芯を歩くことが出来る。無雪期はここも到底歩くことは出来ないような低木の藪が繁茂しているところだ。三角点ピークのあたりから振り返るとようやく歩いてきた稜線が雲の中から姿を現す。
なだらかな台地状のピークの南端部ca730mで尾根をほぼ直角に左手に曲がる。その先に広がる広々とした尾根のなだらかな雪原の下にはユズリハの濃密な藪が広がっているとは想像し難いところだ。ここから次の三角点ピークにかけてはいくつもの小さなアップダウンを繰り返す。
岩籠山から乗鞍岳を目指して南下して場合、無雪期には三角点ピーク△786.6m（点名は中山）が乗鞍岳の間の最大の核心部だろう。というものこのピークに至る稜線は濃密なリョウブの藪に覆われているからだ。前回は藪の手前で尾根を北側に回り込んで藪を回避しながらアプローチしたのだったが、今やその藪は完全に雪の下に隠れており、呆気ないほど容易にピークに達することが出来る。
山頂にいる間に雲が切れて、まずは芦原岳が姿を見せる。乗鞍岳は雲の中と思っていたが、突然、カーテンを引いたかのように雲が取れて、乗鞍岳が姿を現す。山頂へと至る光り輝く雪稜を目にすると乗鞍岳はかくも壮麗な山だったかと雪を纏った山容の見事さに瞠目することになる。
この三角点ピークはさほど高いピークには思われなかったが、風の通り道なのだろう。山頂の周囲の樹々には霧氷がしっかりと発達している。折しも急速に青空が広がり、陽光に照らされて白く輝く霧氷が蒼空に映える。
乗鞍岳への登りに差し掛かると再びブナの疎林が広がる。ブナ林を抜けるととすぐにも最初の送電線鉄塔が現れ、左手には大きく眺望が広がり、上谷山、左千方、横山岳といった湖北の山々を俯瞰することが出来る。
尾根を辿るとすぐにも前方に琵琶湖の湖面が視界に入る。西隣の野坂岳から三国岳にかけての縦走も同様であるが、この江越国境に辿り着いて琵琶湖の眺望が大きく視界に飛び込んでくる瞬間はなんとも感動的であり、湖国にたどり着いたという感慨が沸き起こる。
無雪期は低木の藪が視界を遮るので琵琶湖をすっきりと展望出来る場所は意外と少ないのだが、琵琶湖の眺望を眺めながら歩くことが出来るのもこの季節ならではだろう。北湖の最奥部と余呉湖の間にある賤ヶ岳は広く切払いされた山頂部が真っ白になってるので同定が容易だ。視線を右手に向けると昨日歩いた山本山から賤ヶ岳へと続く尾根が続いている。背後を振り返ると岩籠山の純白に輝く山頂部の彼方には青い敦賀湾が見える。
左手からは風に乗ってスキー場からアナウンスの声が聞こえてくる。国境スキー場の駐車場はほとんど満車であり、ゲレンデには大勢の人が見える。昨年と一昨年は雪が少なかったので営業期間も少なかったのではないかと思うが、さすがに今年は既に十分な積雪があるのでスキー場も賑わっているのだろう。しかしゲレンデのスキー客の多さを見ると国境に下降するのは躊躇われるところだ。
乗鞍岳の山頂に至るとスキーとスノーシューによる数人分のトレースがある。トレースの真新しさからするとおそらく今日のものだろう。急に滋賀県側から雲が登ってくる。乗鞍岳の山頂の西側は物々しく電波塔が立ち並びぶところだが、電波塔が霧に包まれると荒涼とした雰囲気になる。
トレースを追って芦原岳へと向かう。スキーのトレースはp779の手前から南西の尾根に降っているようだ。p676を経て白谷に降るのだろう。時間に余裕がなければ芦原岳からこのルートを辿るつもりでいたが、時間には十分に余裕があるので先に進むことにする。
芦原岳への登り返しは林相の美しいブナ林となる。ブナ林を抜けると忽然と、送電線鉄塔のある広々とした雪原に出る。先ほどまでは雲の中だった乗鞍岳が再び姿を見せる。再びブナの叢林を抜けて、大きく雪庇の張り出した送電線の鉄塔広場に至るとそこが芦原岳のピークだ。
再び空は晴れて、左手に野坂岳、右手に岩籠山を望むことが出来る。この二つの山の間を流れる黒河谷を俯瞰するのに一番の展望地だろう。彼方には黒河川が注ぎ込む敦賀湾の蒼い海も展望することが出来る。
芦原岳から先は再び全くトレースがない。山頂を後に江越国境稜線を西に辿ると再び南側には琵琶湖の眺望が広がる。琵琶湖と敦賀湾を同時に眺めることが出来るのはここだけだろう。
送電線鉄塔の立ち並ぶ尾根を下降してゆく。尾根が琵琶湖に向かって南側に突き出したところが本日の最後のピーク猿ヶ馬場山だ。山頂部分は雪原が広がり、積雪したマキノの平野とその先に午後の光を受けて白い光を放つ琵琶湖の展望が広がる。
下山は猿ヶ番場山から南に伸びる尾根を下降する。歩きやすい尾根を直進しそうになるが、すぐに右手に曲がるのがポイントだろう。すぐにも尾根には掘割の古道の跡が現れるのでルート・ファインディングに苦慮しない。尾根の下部は急下降ではあるが、九十九折の古道が続いている。
古道を辿ると尾根の末端では右手の堰堤に降りてしまう。左手には林道が見えるのだが、林道との間はかなりの急斜面となっている。斜面を強引にトラバースし、最後は樹を掴んでなんとか林道に着地したが、ここは堰堤の上を対岸に渡渉した方が良かったのではないかと思う。
林道を歩くとすぐにも黒河峠からの道に合流する。積雪した道には多くのツボ足のトレースがあるが、所々で大きく踏み抜いた跡がある。踏み抜きは膝近くまで沈みそうだ。
白谷温泉に到着するとまもなくバスが来るところだった。温泉に浸かってゆっくりしたいのは山々であるが、このバスはマキノ駅で新快速に接続するのに対して、次のバスになると接続する湖西線の列車がないので、帰宅が大幅に遅くなる。温泉を諦めてバスに乗ることにする。
メタセコイア並木は相変わらず大勢の人で賑わっている。バスがメタセコイア並木を抜けると夕陽が大谷山から南に延びる尾根に沈んでゆくところだった。
今回辿った岩籠山から乗鞍岳への稜線はやはり積雪期がいいのだろう。それにしても岩籠山への大岩権現からの北東尾根は天気の良い日に捲土重来したいものだ。
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大部分がノートレースのロングな雪山山行、前日の疲れなど全く感じさせない健脚振りには驚愕とともにますます尊敬の念をもってレコを拝見させていただきました。
ちょうど前の日に賤ヶ岳山頂の手前でハナさんと岩籠〜乗鞍の美しい銀稜を眺めながら、あそこを歩いてみたいね、と話していたんですよ。積雪期でないと薮も多いらしいしチャンスは今ですね、とか。
>乗鞍岳はかくも壮麗な山だったかと雪を纏った山容の見事さに瞠目する
賤ヶ岳から遠目に見ていても、やはり乗鞍岳は格好いい！と感じていたのですが、岩籠山から幾つかのピークを越えながら次第に近づいてくる山容はさぞかし壮観だったのでしょうね。
無雪期でも以前よりはブッシュが切り拓かれている、トレールランナーが多くなったからだと、naojiroさんからお聞きしました。またいつかこの稜線を繋ぎたいと思います。
赤線繋ぎは私よりハナさんの宿願なのですけどね。
＞あそこを歩いてみたいね・・・
仰って頂ければ、宜しければ無雪期の藪を抜けるルート案内でも雪のラッセル担当でもさせて頂きます。
無雪期における藪を隠してくれるので、確かに積雪期はいいのですが、無雪期もブナの新緑や紅葉の季節など、季節ごとに魅力のあるところで、野坂岳〜三国岳の稜線と共にここは何度でも訪れたくなるところです。
△786.6の藪の中にはkol-yosiokaさんのトレッキング・ポールが横たわっているかと思いますし、その北の尾根には私が長年愛用した真鍮の熊鈴も眠っていることと思います。
先週の賤ヶ岳では私が足を引っ張りご迷惑をおかけしました。同行させていただき感謝しております。
岩籠〜乗鞍は私の宿願ですがいつ実行できるやら。乗鞍〜猿ヶ番場の壮麗なブナ林の雪景色も頭に描きながら拝見させていただきました。
しれっと歩かれてレコには書かれていないのですが、雪の状態はどうだったのでしょうか、特に岩籠山前後はどうでしたか？
実は昨日、野坂を山ルートで攻めたのですが余りの積雪で
鉄塔尾根では、以前の雪も先週積もった新雪も全然締まっておらず、膝上ラッセルで体力を消耗し嫌気が差しての撤退でした（稜線に乗ればそこそこ締まっているのかな）。鉄人山猫さんならこれくらいは想定内なのでしょうね
こちらこそ賎ヶ岳〜湖辺歩きにお付き合い下さり、どうも有難うございました。途中、西野水道からは湖辺歩きを諦めようか・・・という話もあったのですが、砂州に寄り道していた我々に気がつかず西野水道をnaojiroさんが真っ先に乗り越えられたので、その時点で湖辺歩きを完遂することが決定いたしました。naojiroさんに感謝です。
重要なことを書いていませんでしたね。雪はほとんどの箇所でスノーシューで10cm程度の沈み込みですが、実は今回、MSRのLightningにtailをつけたせいでスノーシューの沈み込みが少なくて済んでいるのだと思います。
確かに岩籠りの山頂付近では積雪が多くなりますね。一般登山道はトレース・ハイウェイとなっているので問題になりませんが、北斜面よりも南斜面が吹き溜まり状態となっているので登山道を外れると深く沈みました。上述のtailのせいもあってこれは既に出来上がったトレースの上は非常に歩きにくいのでした。
先週から今週の間にかなりに雪が供給されたのではないかと思います。野坂は近々に参りたいと思います。宜しければ是非、またお付き合い下さい。
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