槍ヶ岳 (飛騨沢ルート)
- GPS
- 56:00
- 距離
- 24.5km
- 登り
- 2,245m
- 下り
- 2,244m
コースタイム
-15:00槍平小屋
2日目:5:20槍平小屋-10:00飛騨乗越-10:30槍ヶ岳山荘
3日目:6:30槍ヶ岳山荘-6:45飛騨乗越-10:00槍平小屋-17:30無料駐車場
天候 | 2日:晴れ 3日:晴れ後ガス&強風 4日:晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2014年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
新穂高温泉へ、登山者用無料駐車場を利用しました。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
今回GWのこのルートは積雪は去年と大きく変わらないと 感じましたがデブリは多かったです。 また登りの途中で大きな崩落に遭遇したり地震があったりと 山行中は緊張する場面もありました。 飛騨沢の雪面はクラスト気味で去年のようなモナカよりは 歩き易いですが滑落には十分注意が必要です。 |
予約できる山小屋 |
槍平小屋
|
写真
感想
毎年恒例となったGWの北アルプス山行ですが
今回も妻と飛騨沢をつめ槍ヶ岳を目指しました。
5月2日の明け方に新穂高の無料駐車場に到着し
軽く仮眠し妻のお弁当を食べた後出発です。
白出出合いを越えてから右保谷を進んで行くと
所々去年一昨年には無かったデブリや落石後などが散見されます。
ちょうど南岳辺りが右手に見える付近では
大きいデブリが続きます。私たちが丁度そこを
通過している時、右手山頂付近で「バーン!!!」と
爆発音の様な音が鳴りましたのビックリして
音の鳴った方を見上げると大きな崩落が始まりました。
このまま規模が大きくなって私たちの居る場所まで
届く事があれば危ないなと思いましたが中腹で大体は
吸収されたようで大きな落石なども無いようでした。
しかし土交じりの雪崩れのようなものが麓に近いところまで
流れてきていました。私たちはその状況を見つつ
「大丈夫だな」と確信し先へ進みます。
暫くして無事に槍平へ到着しました。
この日はテン泊されている方も疎らで場所は選り好み
する事が出来ました。早速設営場所を決めて夫婦で
テントを設営します。何だかんだと結構疲れたので
少し昼寝をしてのんびりと夕食の準備をします。
夕食は私が仕込んだチキンのトマト煮です。
アルファ米に掛けてカップに注いだワインと共に頂きます。
日が沈んだ後は風も無く静かに眠る事が出来ました。
翌朝、早起きしたのは良いのですが去年と同じく
夫婦でヘッデンを点けてトイレ探しです。
既に槍平小屋の方々がトイレを掘り出し使用可能となってます。
朝食も取って空が明るくなりだした頃出発の準備ですが
今回はテントやシュラフ等をデポして行きます。
ゆっくり半日掛けて飛騨沢をつめて行くのですが
今回の飛騨沢の雪は硬かったですね。
アイゼンが効かない程ではないのですが少々厄介な
コンディションだと感じました。
妻は1日目にサングラスを落としたようで途中
私のを貸してあげました。私はと言うと
雪目にならないように薄目にしたりしながら
行動していたのですが目の負担は軽かったようです。
そして飛騨乗越に到着しました。
槍ヶ岳山荘は目と鼻の先です。もうひと頑張り最後の
急坂を登って行きます。
無事2日目もぼぼ予定通りに行動できました。
ですが山頂付近はガスが頻繁に掛るコンディションで
穂先アタックのタイミングを計っていました。
山荘の部屋で休憩し少し外が明るくなってきたので
穂先アタックの準備をします。
妻にロープをセットして穂先へ向います。
取り付きから順調に登ってきたのですが、またまた
ガスって来ました。と同時に穂先中腹の積雪部で軽く雪を
払ってみると氷が出てきました。
少し思案しましたが「撤退」を決めました。
別のルートから行こうかとも考えましたが気候も含め
少々妻には厳しいコンディションだと判断したのです。
山荘に帰り妻はがっかりした様子です。
本人は行けると思っていたようなので悔しかったようです。
私も単独で穂先へ行っても良かったのですが止めました。
夕食を頂きまだ明るいので外へ散歩に出掛けます。
が、外は猛烈な風で吹き上げる風雪が顔に刺さります。
ですが空は見事に晴れていました。
妻は夕日が見てみたいと言い出し、私もそう言えば
お山でキチンと夕日を拝んだことは無いかなと思いました。
夕暮れが近くなり穂先が赤く染まり日が沈もうとしています。
風は相変わらず強いのですが風で吹き上がる雪と
夕日の光線が見事に調和して素晴らしい光景を見る事が出来ました。
翌日朝食を頂いた後は下山します。
下山も妻にはロープをセットして行きます。
特に飛騨沢中腹まで、今回は宝の木の辺りまでは
注意したいと思いロープを持っての下山です。
やはり朝の斜面はクラスト気味なので慎重に
丁寧に下ってきて緩斜面になってくると緊張も解けてきました。
妻は「もうロープはいいよ」と、
私も「もう大丈夫やな」とロープを外した後
私が先行し下り始めました。
少し休憩しようかと思った瞬間妻が私の横を滑り落ちて行きました。
声も音も無く一瞬の出来事で対処のしようがありませんでした。
「滑落体勢を崩すなよ」と念じながら滑り落ちていく妻を
追いかけ始めましたが途中で段差があり視界から消えました。
100m位走った所で妻は止まっていました。
私は走りながら「大丈夫か!?」と問いかけましたが
残念ながら妻は首を横に振りました。
傍まで行くと妻は「左の足首が痛くて立てない」
と深刻な顔で話しました。私は左足首が動くかと聞いたのですが
少し動かせたので靴を脱がせテーピングをしました。
が、テーピングをしている時に凄く痛がるのでこれは骨折かもしれない
と内心考えていました。すかさず靴を履かせて足首を固定するようにして
痛みが和らぐようにしてあげましたが痛みが和らいでも歩くことは
出来ません。妻も試しに歩こうとしましたが全く駄目なようです。
「足首がグラグラで歩けない」とも言ってました。
周りの登山者の方々にも心配を掛けたようで
「大丈夫ですか?」と何人かの方に声を掛けて頂きました。
その時既に私は妻を担いで下るかレスキューを頼むか
しかないと考えていたのですが、担いで下るのは
幾らなんでも一人では不可能(何日か掛ければ行けるかも知れませんが
妻の怪我を方っておく事は出来ない)また装備もあり
デポしても取りに帰ることを考えたら妻を待たせる事になる・・。
結果、110番する事にしました。
妻は岐阜県警に電話するというとビックリしていましたが
今の状況が理解できたのか大人しくしていました。
幸いにもSoftbankのiPhoneから電話する事が出来ました。
110をコールすると受付につながり詳しく状況と現在地を
伝えると一旦電話を切り折り返し電話をくれるとの事でした。
数分で電話が掛ってきました。今度は山岳警備の方のようで
状況と場所の再確認等とレスキュー時の注意を受けました。
途中携帯の電波状況が悪く掛け直したりと電話で梃子摺りましたが
ヘリが別件で近くを捜索中との事で先に救助するから5分で行くとの事でした。
5分足らずでヘリの音が近づいてきました。
私たちはザックをピッケルで固定したりして
ヘリを迎える準備をしていましたが近くまで来ているのに
中々機体が見えません。後で聞いた話ですが私たちの場所より
少し下った所で似たような男女の方がいて間違ったそうです。
暫くしてヘリの音と共に真正面に機体が姿を現しました。
夫婦で緩斜面ながら斜面にへばりついているので
ヘリは真正面から近づいて見えました。
私が大きく手を振ると直ぐ気付かれたようで私たちの真上
10m程の高さでホバリングしホイストで県警の方が降りてきました。
手際よく妻にホイスト用のハーネスを巻きつけヘリに収容しました。
私は自分と妻のザックを抑えながらヘリを見送ります。
ヘリの去り際に県警の方が機体の扉を閉めるときに私に
会釈してくれました。それを見て私は凄く安心しました。
ヘリを見送った後は私一人です。妻のザックを持って
槍平へ向います。槍平でデポしていたテント、私と妻のシュラフや
マット等を2つのザックにパッキングしました。
問題はこれから何時間で下山できるかです。妻には「5時くらいには
下山できると思う」と話していましたが妻は恐らく高山市内の病院へ
行くと思っていたので出来るだけ早く下山しなければと考えていました。
ですが中々上手く行きません。妻のザックは白出沢まで右肩に掛けて
抱えるように持っていました。ロープで2つのザックを縛って担いだり
体の前後で2つのザックを担いだり試しましたが
この方法が一番現実的でした。
残り少ない水を飲み干し白出沢まで辿り着きましたが
林道ではザックを体の前後に担いで歩きました。林道では
足場が安全なので前が少々見難くても体の負担が軽くすみます。
林道からは給水も出来ずひたすら重い足取りで駐車場へ向いました。
穂高平でも休息せず17時過ぎに登山指導センターへ到着
下山届けを投函しザックを登山指導センターへ置いて
車を取りに行きました。登山指導センターへザックを取りに行き
そのまま高山市赤十字病院へ向います。
(林道途中で妻よりメールで連絡がありました)
高山市内に入ったところでコンビニに寄ってジュースなど1リットルほど
一気に飲みました。私も体力は限界に近い感じでした・。
何とか高山市赤十字病院に到着し妻と再会する事が出来ましたが
容態はヤマレコ日記にも書いている通りで
骨折の度合いから重傷扱いのようでした。
実は今回の山行で凄く嬉しかった事があります。
事故後すれ違う登山者の方々の思いやりも嬉しかったのですが
最も印象的だったのは今回関わった高山(岐阜)の人々が
暖かい人ばかりだった事です。
妻から聞いた話では救助ヘリの中では
「同じ北アルプスでも岐阜の人気は低いけど
怪我が治ったらまたおいでね」と県警の方。
他にも妻の装備を褒めてくれたり気を落とさないような
気遣いを頂いたそうです。
高山市赤十字病院では私と妻が病院を後にする時
ベテラン看護師(女性)の方が「また山登りに来てね!
滑落はもうダメだけど」と妻の怪我を知っていながら
笑顔で元気付けて送り出してくれました。
他にも登山者の気持ちを汲んでくれる細かな対応を頂きました。
妻も感激したのか帰宅後せめて岐阜県と高山市に
「ふるさと納税」をしたいと言ってました。
私はなんとしても再び岐阜側からのアプローチを
計画したいと思っています(新穂高好きです)。
今回大きな宿題をお山から貰って帰ってきた心境です。
でも必ずまた行きます。妻と共に。・・・・(単独でも!)
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