槍ヶ岳


- GPS
- --:--
- 距離
- 37.0km
- 登り
- 1,729m
- 下り
- 1,724m
コースタイム
天候 | 26日昼過ぎまで雨、のちに快晴 27日昼過ぎまで曇り、のちに雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2014年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
予約できる山小屋 |
横尾山荘
|
写真
感想
25日
深夜に沢渡の駐車場に到着。
後部座席からすばやく降りて車の脇にさささと手早くテントを張る。
いつもの狭いけれども楽しい我が家が完成、ちょびちょびウイスキーをやりながら寝袋に潜り込む。
車の中の2人はシートを倒して車中泊、休めそうで休めないんだよね。それに比べてオレときたら手足を伸ばしてパタパタ。
最近のスマホの導入によってテント内での文庫本をめくる楽しみがおかされつつあるが、今夜はとにかく眠らなければ。
26日翌朝
車中泊組の「起きてるかー」の声でむくむくと活動開始。おにぎりを口に放り込みながら一晩お世話になった我が家を車に投げ込む。
投げ込み放り込みの流れで3人はタクシーになだれ込む。
話好きな運転手の横に座った僕はたまに合いの手を入れながら上高地へ。たしか固定料金4200円。
3年ぶりの上高地。
友人の案内で徳沢ロッジに立ち寄り一服。なじみの人がいるらしく挨拶。しばし談笑しつつ山の情報を聞かせてもらう。小屋主らしき方に「雨で川がひどくなっていたら無理しないでビールを呑みに戻ってきてください」と優しく言ってもらう。こういうのは実は本当にありがたい、撤退するときもなんかしらの理由が必要だったりするからね。
その日、休日との事で小屋のスタッフの方と共に横尾まで。
段々と雨はひどくなり気は重い。
横尾からふたたび3人となった僕らはぼそぼそと話しながら平場を抜けて少しずつ高度をあげていく。依然として雨はやまない。
眺望は望めず、たまにまたぐ流れ込みは既にちょっとした川や滝になりつつある。むーん、いやだなあ。
地元神奈川の丹沢にあるようなゆるやかな浅瀬を渡渉するならまだしも、ここで膝まで捲り上げて渡るのはしんどいなあと生ぬるいことを考える。
突如開けた槍沢のババ平(いい名前だ)ではテントが2張り。ひと気がないので日帰りで槍にでも向かっているのか。
石室は現在では機能していないらしい。
そういえば復路では少年らが石室によじ登り飛び跳ね記念撮影をしていた。当然オレは崩れてくれないかなーと思ったけど若い時ってそういうはしゃぎ方が大好きなのもよく知っている。
でもまあ、年食ってもどえらく面倒で不躾な人もいるからね。
やっかいなのは別の場面では正直で立派なおじちゃんだったり、はたまた聞き分けがよくて勉強の出来る子だったりするわけだ。
足を進める。
雪渓の手前では派手に流れ込みが作りだされていた。どちらかのガイドさんが苦労して皆を引率しているが思うようにはいかないようだ。
気にしないで先行してくれと合図を出してもらったのでさっさと動く。
もはや雨があがる気配は微塵もない。
斜め左上に眺めていた雪渓に足を踏み入れてダラダラと登る。長い雨に濡れてゴアテックスもすでに重たいのだ。シャツもじわじわと水分を含み地味に腹を冷やす。
おにぎりを口に放り込み代謝をあげる。
見上げると殺生ヒュッテ。
もうね、わざわざ槍ヶ岳山荘まで行かなくても殺生でゆっくりお酒でも呑めばいいのではないか?先を行く2人の背中に念を送るが雨のせいで届かない。
私は朝から股関節が痛いのだ。やむことのない雨の中槍ヶ岳山荘まで進む必要があるのだろうか。いや、ない。
反語も使いたくなるのだ。
話はそれたが、残りの道程は地図を出すのも億劫なので頭の中を探る。
最後40分とかだった気がする。
冗長な折り返しを進みながら高度計に目をやる。気圧は下がっているがそんなに高度計に影響はないようだ。
槍ヶ岳山荘の手すりがガスの向こうでうっすらと浮かび上がった。
前回はテン場でお世話になった槍ヶ岳山荘だけれども今回は小屋泊まり。小屋泊まりの9500円。燃料やら調理器具、食材や寝具にテントの重量を考えると天国のようだ。
それでも次回はまたテントにしよう。可能ならばそうしたい。
設備の整った乾燥室に濡れ衣装を干し、身支度をしなおしビールを購入、談話室に進む。先客らをジロリと睨み「おうおう、ここの開いているテーブルでオレ達はビール呑んで談話をするけど文句はあるまいな?」とドカリ座る。
半島やら大陸の人から文句の来ない談話を始めるのだ。
この時午後3時ではあるがここまでの健闘をお互いに讃えあい、オレ達もやる時はやるなあと悦に入り窓の外に目をやると晴れているのだ。
晴れているのだー。
雨があがるどころかガスも晴れているのだー。
「申し訳ないのだけど今月は給料を出せない」と貧相な社長に告げられた月末に、給料と臨時ボーナスまで出た感じだ。(多分この社長一家心中することになると思うがそれは別な話)
1人の友人は登ってくる!と言い残し小屋を飛び出していった。もう1人はというとゴロリ手枕でお休みになられているのだ。
高いところのビールは効きますねえ、なんつってさっきから背後で楽しげに談笑していたおねえちゃん達に目をやると跡形もなく消えていて、はげ散らかしたおっちゃんとかつてはガールだった今ではUMAみたいな物体がテヤテヤ顔でウイスキーの水割りなんぞをやっているのだ。
空の様子をみつつ窓から槍を見る。
わらわらと人々がよじ登っていく。
丸の内のオフィスビルとなんも変わりはねえなと目を細める。涙があふれる。そしてあくびがとまらない。
今朝も早かったしあんまり寝てねえもんな。
17時過ぎ。
むくりと起きた友人と、いかり肩で小鼻を開き槍から舞い戻ってきた友人と共に食堂へ。
長テーブルには既に食事が用意されている。
メインは酢豚。副菜に生野菜とコーン、ポテサラにプチチーズケーキ。テーブルの中央にふりかけとカリカリ梅ちゃんが鎮座して上座に味噌汁鍋がどんといるのだ。
小屋の飯である。
何杯お代わりをするかでおかずの消費配分が決まるのだ。おもむろに梅干を4個茶碗に放り込む。カリカリ、パクパク、カリカリパクパク、カリパクカリパク・・・・
味噌汁をすすりながら梅干だけでかなりいけるのだけど、あまりにも貧乏くさいし病的なので、それなりに平均的におかずをつまみつつご飯を食べ進む。計3杯を腹に納め、まあまあだったなあと食堂の周囲を冷静に見回す。
長い年月の間登山客らの空腹を満たし、朝には送り出してきた歴史ある食堂。
鉄骨の太い柱が等間隔に配置され見上げるとブレースがえいやと手を取り合って支えているのだ。
すでに込み合う槍に参拝し終えた友人は放っておいて僕らだけ外に出て今一度見上げてみる。
「むこうでブロッケンでていますよ」と小屋の女性に教えてもらう。
満腹の腹を抱えてよろよろと槍に近づく。おお、ああ、うう、むむむ。
先ほどの混雑は嘘のように解消されていて、今岩にとり付いている人はいない。風も優しく陽はまだ小1時間は沈まないように思える。
隣に腰を降ろし、目を細めて北穂を見ている友人は実はいまだ槍には登っていないのだ。というよりも先ほど小屋に着いた時にガスに阻まれてその先にある目の前の槍が見えなかったときも、「ここから槍まで30分ぐらいで行けるの?」と聞いてきていたのだ。目の前にホントはあんの!!と言っても信じてくれなかったのだ。
ビールでグニャグニャしていた空気頭も若干マシになったので冷静に考えた。
どう考えても今行くべきではないか!
そんなわけで久しぶりの槍のうえで静かにぼんやりした時間を過ごせた。
長年ここに来たかったという友人は感慨深げに夕日を眺めているようだ。と思いきや「こええ・・・」とさっさとハシゴを降りたがっている。
まあいいやと尾根を越えていく雲に別れを告げて降りる。
降りた後もしばらく持参したウイスキーをなめながら双六方面に眺めている。陽は完全に落ちて遠くの小屋たちがチカチカとお互いを確認しあうようにそこにいる。
前回休憩させてもらった双六小屋に野口五郎の小屋も、水の美味しい三俣もまた行きたいものだ。前穂も涸沢も行かなくちゃいけないし立山にも。
消灯時間が過ぎた後もぼそぼそとロビーでゆっくりさせてもらった。
天の川、久々に見た。前回はどこの山でだったか。
27日
翌朝、雨は降っていないもののガスで視界は15mほど。朝食を頂いて身支度をのそのそと行う。
雨が降らなきゃいいやとひとりごちて乾燥室へ。
昨日は熱帯ジャングルの草木のようにあふれていた衣類や靴もさっぱりとなくなっていた。皆どこにいってしまったんだろう。
6:40
小屋をあとにする。小屋の直下100mあたりに雷鳥。
昨日、あふれまくっていた流れ込みも消えずんずん下って行くことができ、昼ごろに徳沢ロッジに再び顔を出せた。
雨に降られることもなく河童橋まで戻ることが出来、気が遠くなるほど久しぶりのソフトクリームを舐めながら今一度穂高を見上げてみる。
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