JR比良駅を降りて歩き始めたのが午前8時頃、湖西の原野を歩いて登山口のイン谷口へ向かう。この日は平地でも10cmほどの積雪があった。イン谷口から金糞峠まではガレた谷道、比較的しっかりとしたトレースが刻まれている。
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JR比良駅を降りて歩き始めたのが午前8時頃、湖西の原野を歩いて登山口のイン谷口へ向かう。この日は平地でも10cmほどの積雪があった。イン谷口から金糞峠まではガレた谷道、比較的しっかりとしたトレースが刻まれている。
最初は軽アイゼンでしのぎ、岩がゴロゴロの急斜面が始まる青ガレからは、12本爪アイゼンに履き替える。
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2/1 12:10
最初は軽アイゼンでしのぎ、岩がゴロゴロの急斜面が始まる青ガレからは、12本爪アイゼンに履き替える。
岩は雪に埋もれ、人の歩いたトレースは踏み固められた雪の急斜面となり、ピッケルを突き刺しながら登らないと転がり落ちそうになる。
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2/1 12:32
岩は雪に埋もれ、人の歩いたトレースは踏み固められた雪の急斜面となり、ピッケルを突き刺しながら登らないと転がり落ちそうになる。
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金糞峠に到着すると、強風がまともに吹き付ける。
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2/1 12:37
金糞峠に到着すると、強風がまともに吹き付ける。
峠を降りて下った谷からコヤマノ岳南尾根に取り付く。
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2/1 12:56
峠を降りて下った谷からコヤマノ岳南尾根に取り付く。
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2/1 13:17
尾根を登りながらも、時折、粉雪が降りしきる。
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2/1 13:25
尾根を登りながらも、時折、粉雪が降りしきる。
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杉の大木は分厚い雪の衣を纏い、凍てついた姿で立ちすくんでいる。
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2/1 13:54
杉の大木は分厚い雪の衣を纏い、凍てついた姿で立ちすくんでいる。
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コヤマノ岳山頂が近づく標高1000m付近からは、ブナの林が支配的になる。
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2/1 14:16
コヤマノ岳山頂が近づく標高1000m付近からは、ブナの林が支配的になる。
深く埋もれたブナの太い幹。
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2/1 14:17
深く埋もれたブナの太い幹。
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コヤマノ岳山頂の稜線に辿り着くと、正面に見えるのは、まるで王冠のように大きく枝を広げたブナの大木。通称コヤマノクラウンと呼ばれている。霧氷に蔽われた美しい佇まいに心を奪われる。
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2/1 14:34
コヤマノ岳山頂の稜線に辿り着くと、正面に見えるのは、まるで王冠のように大きく枝を広げたブナの大木。通称コヤマノクラウンと呼ばれている。霧氷に蔽われた美しい佇まいに心を奪われる。
先行者のトレースはあるが、時折降る粉雪でトレースが埋もれかけている。ここでアイゼンを脱ぎワカンに履き替える。
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2/1 14:40
先行者のトレースはあるが、時折降る粉雪でトレースが埋もれかけている。ここでアイゼンを脱ぎワカンに履き替える。
少しだけ空が明るくなり、時折青空がのぞく。
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2/1 14:40
少しだけ空が明るくなり、時折青空がのぞく。
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2/1 14:43
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しばし、コヤマノ岳の美しい霧氷の森を見上げながら逍遥する。
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しばし、コヤマノ岳の美しい霧氷の森を見上げながら逍遥する。
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2/1 14:52
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ここまで、人に出会ったのは男性1人だけだった。
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ここまで、人に出会ったのは男性1人だけだった。
コヤマノ岳を50mほど下ったところで、眼前に武奈ヶ岳ののっぺりと平たい山頂が現れる。
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2/1 14:56
コヤマノ岳を50mほど下ったところで、眼前に武奈ヶ岳ののっぺりと平たい山頂が現れる。
この時、気まぐれな陽光が吹雪の切れ間から差し込み、武奈ヶ岳をまばゆい白い光で浮かび上がらせる。
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2/1 14:56
この時、気まぐれな陽光が吹雪の切れ間から差し込み、武奈ヶ岳をまばゆい白い光で浮かび上がらせる。
強風で地吹雪が舞い上がる山頂辺りの景色が、ほんの数分の間に目まぐるしく変わった。
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2/1 14:56
強風で地吹雪が舞い上がる山頂辺りの景色が、ほんの数分の間に目まぐるしく変わった。
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2/1 14:57
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余りの美しさに夢中でシャッターを切ったが、こんなぞっとする様な美しい光景を見せられると、ふと、このまま、この雪の山から帰れなくなるのではないか・・という不吉な予感に囚われてしまう。
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2/1 14:57
余りの美しさに夢中でシャッターを切ったが、こんなぞっとする様な美しい光景を見せられると、ふと、このまま、この雪の山から帰れなくなるのではないか・・という不吉な予感に囚われてしまう。
ここから山頂までは残り80m登るだけだ。
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2/1 14:59
ここから山頂までは残り80m登るだけだ。
時折覗く青空が美しい。
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2/1 14:59
時折覗く青空が美しい。
雪の斜面に分厚い雪の衣を纏った針葉樹が厳しい寒さに耐えて立っている。
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2/1 15:15
雪の斜面に分厚い雪の衣を纏った針葉樹が厳しい寒さに耐えて立っている。
振り返ると粉雪に煙るコヤマノ岳が見えた。
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2/1 15:16
振り返ると粉雪に煙るコヤマノ岳が見えた。
武奈ヶ岳山頂稜線に立つと、強風が吹き荒れる。
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2/1 15:29
武奈ヶ岳山頂稜線に立つと、強風が吹き荒れる。
前方に山頂の道標が見える。
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2/1 15:29
前方に山頂の道標が見える。
常には50人くらいの人がたむろする山頂に、今日は誰もいない。
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2/1 15:30
常には50人くらいの人がたむろする山頂に、今日は誰もいない。
強風に舞い上がった雪が地吹雪となり、頬を切り裂く。
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2/1 15:30
強風に舞い上がった雪が地吹雪となり、頬を切り裂く。
慌ててネックウォーマーと毛糸の帽子を着込む。
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2/1 15:31
慌ててネックウォーマーと毛糸の帽子を着込む。
頬と耳が千切れるように痛い。
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2/1 15:32
頬と耳が千切れるように痛い。
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北稜〜釣瓶岳と北の山並みが銀色に光り、地吹雪に煙る。
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2/1 15:33
北稜〜釣瓶岳と北の山並みが銀色に光り、地吹雪に煙る。
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気まぐれに覗く青空との境界線が水色と紫と淡い緑色に彩られる。
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2/1 15:34
気まぐれに覗く青空との境界線が水色と紫と淡い緑色に彩られる。
美しい・・何枚もシャッターを切りながら北稜の稜線に下っていく。
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2/1 15:34
美しい・・何枚もシャッターを切りながら北稜の稜線に下っていく。
山頂到着は午後1時30分、おそらく下山は日没ぎりぎりになるだろう。
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2/1 15:34
山頂到着は午後1時30分、おそらく下山は日没ぎりぎりになるだろう。
ノートレースの北稜の稜線を眼下に見下ろしながら、これを下るのに一瞬ためらいがよぎる。
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2/1 15:34
ノートレースの北稜の稜線を眼下に見下ろしながら、これを下るのに一瞬ためらいがよぎる。
新雪の深さによってはどこまではまるかも分からない。しかし、いったん下れば、後戻りはできない。雪の斜面を登り返せばそれだけで体力を奪われ、逆に遭難しかねない。危険だ。
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2/1 15:37
新雪の深さによってはどこまではまるかも分からない。しかし、いったん下れば、後戻りはできない。雪の斜面を登り返せばそれだけで体力を奪われ、逆に遭難しかねない。危険だ。
しばしの沈黙の後、迷いを振り払って、ノートレースのまっさらの雪面に突っ込む。
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2/1 15:38
しばしの沈黙の後、迷いを振り払って、ノートレースのまっさらの雪面に突っ込む。
ワカンで雪を蹴立てて走り下ると、分厚い霧氷に蔽われた樹木の枝が、次々と頭上を通り過ぎてゆく。
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2/1 15:48
ワカンで雪を蹴立てて走り下ると、分厚い霧氷に蔽われた樹木の枝が、次々と頭上を通り過ぎてゆく。
躊躇いは消え去り、陶酔と満足に満たされていく。
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2/1 15:48
躊躇いは消え去り、陶酔と満足に満たされていく。
大きく張り出した北稜の雪庇は、稜線東側の樹林を埋め尽くし、遮るもののないまっ平の雪の道を作り出す。
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2/1 15:49
大きく張り出した北稜の雪庇は、稜線東側の樹林を埋め尽くし、遮るもののないまっ平の雪の道を作り出す。
誰も歩いていないこの雪のヴァージンロードを、一人、雪を蹴立てて下っていく。恍惚と陶酔が頭をかけめぐる。なんという快感だろう。眼前の釣瓶岳が一瞬、陽光に白く輝く。
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2/1 15:50
誰も歩いていないこの雪のヴァージンロードを、一人、雪を蹴立てて下っていく。恍惚と陶酔が頭をかけめぐる。なんという快感だろう。眼前の釣瓶岳が一瞬、陽光に白く輝く。
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2/1 15:52
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2/1 15:53
北稜を200m下った鞍部が細川越、ここから釣瓶岳までアップダウンを繰り返し、100mの登り返しとなる。この登り返しがきつい。ワカンでもサラサラの新雪がすべって、なかなか前へ進まない。
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2/1 16:00
北稜を200m下った鞍部が細川越、ここから釣瓶岳までアップダウンを繰り返し、100mの登り返しとなる。この登り返しがきつい。ワカンでもサラサラの新雪がすべって、なかなか前へ進まない。
時折、腿まではまって体力を奪う。時間がないと焦って力みかえれば、余計に体力を失う。焦らず、一歩一歩前へ進むことだけに集中する。
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2/1 16:03
時折、腿まではまって体力を奪う。時間がないと焦って力みかえれば、余計に体力を失う。焦らず、一歩一歩前へ進むことだけに集中する。
れでも、ついに太腿が悲鳴を上げてつり始めた。激痛が足を襲う。立ち止まり、ズボンを下して、ザックから冷シップを取り出し、激痛の走る太腿に貼る。しばらくすると、不思議と痛みが治まり、再び歩けるようになる。
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2/1 17:09
れでも、ついに太腿が悲鳴を上げてつり始めた。激痛が足を襲う。立ち止まり、ズボンを下して、ザックから冷シップを取り出し、激痛の走る太腿に貼る。しばらくすると、不思議と痛みが治まり、再び歩けるようになる。
ついに午後3時20分、釣瓶岳山頂1098mに到達。ここからは、もうほとんど上りはない。後は下るだけだ。雪の下りは速い。後は日没の時間との競争だ。
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2/1 17:16
ついに午後3時20分、釣瓶岳山頂1098mに到達。ここからは、もうほとんど上りはない。後は下るだけだ。雪の下りは速い。後は日没の時間との競争だ。
すべてが白い雪に蔽われた釣瓶岳山頂の景色は、いつもと全然別世界に見える。フワフワと捉えどころのない別の世界をさ迷うように雪面を歩く。下ってきた後ろを振り返ると、巨大な雪庇の塊が連なるのが見える。
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2/1 17:20
すべてが白い雪に蔽われた釣瓶岳山頂の景色は、いつもと全然別世界に見える。フワフワと捉えどころのない別の世界をさ迷うように雪面を歩く。下ってきた後ろを振り返ると、巨大な雪庇の塊が連なるのが見える。
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2/1 17:20
わずかの登り返しも、さっきまでの辛さはない。ただ黙々と歩みを進める。
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2/1 17:20
わずかの登り返しも、さっきまでの辛さはない。ただ黙々と歩みを進める。
下りの斜面に、大きな雪の衣を纏った杉の木が沈黙の中にそびえ立つ。
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2/1 17:23
下りの斜面に、大きな雪の衣を纏った杉の木が沈黙の中にそびえ立つ。
朽木谷の向こうには、京都北山の山々が雪に煙って銀色に連なる。
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2/1 17:28
朽木谷の向こうには、京都北山の山々が雪に煙って銀色に連なる。
正面は、蛇谷ヶ峰とその向こうに若狭の山々。
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2/1 17:28
正面は、蛇谷ヶ峰とその向こうに若狭の山々。
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2/1 17:29
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2/1 17:29
午後4時前、イクワタ峠到着。踏破してきた釣瓶岳の稜線を振り返る。ここからは比較的下山までの時間が短い朽木栃生バス停に向かって、ひたすら下る。もう時間のロスは許されない。終バスの時間に間に合うかぎりぎりである。写真は撮らないと決めた。
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2/1 17:47
午後4時前、イクワタ峠到着。踏破してきた釣瓶岳の稜線を振り返る。ここからは比較的下山までの時間が短い朽木栃生バス停に向かって、ひたすら下る。もう時間のロスは許されない。終バスの時間に間に合うかぎりぎりである。写真は撮らないと決めた。
コンパスを進行方向下りに合わせ、雪で変わった景色を無雪期の景色に重ね合わせて、かろうじて現在地を思い出しイメージする。雪を蹴立ててどんどん標高を下げていくと、見慣れた山の景色になってゆく。ここで、はやる気持ちと気の緩みで、後はまっすぐ下るだけだ・・と、コンパスを合わせずに直進してしまった。しばらくして急斜面とぱっくり口を開けた蟻地獄のような谷にぶつかり、おかしい・・と気づく。登山道からずれてしまった。周囲を眺め回すと、左手により緩やかな尾根が見える。「あれだ!」時間をかけずに登山道に復帰するには、蟻地獄のような急斜面をトラバースして向こうの尾根に取り付くしかない。無我夢中でピッケルを山側に突き立ててバランスを取りながら、綱渡りのような雪の急斜面をトラバースしていく。生きた心地がしない。何とか死地を脱して登山道に復帰することができた。バス停到着は、終バス発車10分前、とっぷりと日が暮れた夕闇の中だった。
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コンパスを進行方向下りに合わせ、雪で変わった景色を無雪期の景色に重ね合わせて、かろうじて現在地を思い出しイメージする。雪を蹴立ててどんどん標高を下げていくと、見慣れた山の景色になってゆく。ここで、はやる気持ちと気の緩みで、後はまっすぐ下るだけだ・・と、コンパスを合わせずに直進してしまった。しばらくして急斜面とぱっくり口を開けた蟻地獄のような谷にぶつかり、おかしい・・と気づく。登山道からずれてしまった。周囲を眺め回すと、左手により緩やかな尾根が見える。「あれだ!」時間をかけずに登山道に復帰するには、蟻地獄のような急斜面をトラバースして向こうの尾根に取り付くしかない。無我夢中でピッケルを山側に突き立ててバランスを取りながら、綱渡りのような雪の急斜面をトラバースしていく。生きた心地がしない。何とか死地を脱して登山道に復帰することができた。バス停到着は、終バス発車10分前、とっぷりと日が暮れた夕闇の中だった。
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