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記録ID: 5469305
全員に公開
山滑走
剱・立山

【北アこれ以上ない白い稜線】黒部五郎岳・薬師岳・北ノ俣岳東面滑走

2023年04月30日(日) 〜 2023年05月03日(水)
 - 拍手
GPS
23:01
距離
42.2km
登り
3,359m
下り
3,344m

コースタイム

1日目
山行
7:10
休憩
0:15
合計
7:25
11:05
110
和佐府車止め
12:55
13:10
320
2日目
山行
7:40
休憩
1:00
合計
8:40
5:50
165
8:35
9:30
155
12:05
12:10
140
3日目
山行
5:55
休憩
0:05
合計
6:00
6:10
180
9:10
9:15
175
4日目
山行
6:30
休憩
0:25
合計
6:55
7:00
45
7:45
7:50
285
12:35
12:55
60
13:55
和佐府車止め
天候 4/30 曇りのち晴れ
5/1 晴れのち曇り、夕方から猛吹雪
5/2 曇りのち晴れ、風強し
5/3 晴れ
過去天気図(気象庁) 2023年04月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
飛越トンネルまで問題なく車で入れたが、通行止めの看板があったので入らなかった。自己責任ということだろうが入っていた方も多数いた。
スキー靴での歩行がとても厳しく靴擦れもあったので入ればよかった。
コース状況/
危険箇所等
残雪少なく、1800m以下ではスキーを担ぐ必要があった。
1800m以上でも、寺地山の前後、北ノ俣山頂直下では夏道を歩く必要があり、スキーを担いだ。
その他周辺情報 割石温泉400円。登山口からは28キロもあったが、同じ飛騨市内。
市民向けの簡素な施設だが、お湯は良かった。鉱山の採掘中に偶然掘り当てた温泉らしい。源泉は38度なので、少し沸かしている。
1日目: 登山口。ここまで6キロ林道歩いた。スキー重い… 幸い雨は完全に上がった。
2023年04月30日 12:59撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
4/30 12:59
1日目: 登山口。ここまで6キロ林道歩いた。スキー重い… 幸い雨は完全に上がった。
あまりに苦しすぎて、この日の写真なし。避難小屋に到着したのは18:30だった。
2023年04月30日 18:57撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
4/30 18:57
あまりに苦しすぎて、この日の写真なし。避難小屋に到着したのは18:30だった。
2日目: いい天気だが、稜線まで地獄だった。途中でパッキングを変更した時にアイゼンをパックし忘れた。下山時に探したけど見つけられなかった😢
2023年05月01日 06:50撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
5/1 6:50
2日目: いい天気だが、稜線まで地獄だった。途中でパッキングを変更した時にアイゼンをパックし忘れた。下山時に探したけど見つけられなかった😢
稜線に出たところでテントを張った。ようやく重荷から解放され、スキーで進む。正面は今日目指す黒部五郎。
2023年05月01日 09:42撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
5/1 9:42
稜線に出たところでテントを張った。ようやく重荷から解放され、スキーで進む。正面は今日目指す黒部五郎。
赤木沢。冬はこんなに真っ白になるのね。
2023年05月01日 09:52撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
1
5/1 9:52
赤木沢。冬はこんなに真っ白になるのね。
赤木岳の直下を巻く。雪庇は大丈夫。全層雪崩起きないよね?
2023年05月01日 10:04撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
5/1 10:04
赤木岳の直下を巻く。雪庇は大丈夫。全層雪崩起きないよね?
赤牛、水晶、鷲羽。手前の真っ白な台地は雲ノ平。こんなに白くなるんだ。
2023年05月01日 10:07撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
2
5/1 10:07
赤牛、水晶、鷲羽。手前の真っ白な台地は雲ノ平。こんなに白くなるんだ。
黒部五郎。残念ながら最後の登りは夏道を使わざるを得ない。
2023年05月01日 10:52撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
1
5/1 10:52
黒部五郎。残念ながら最後の登りは夏道を使わざるを得ない。
やったぜー。
2023年05月01日 12:10撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
2
5/1 12:10
やったぜー。
山頂から左肩まで滑り、あとは左に見えるバーンを滑ってきた。写真ではわかりませんが、結構急で転んだらアウトです。緊張した。
この後、まさかの雪になり写真なし。テントに戻った時にはホワイトアウト。1時間もしたら猛吹雪になりました。この時期の登山は全く油断ならない。
2023年05月01日 12:27撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
5/1 12:27
山頂から左肩まで滑り、あとは左に見えるバーンを滑ってきた。写真ではわかりませんが、結構急で転んだらアウトです。緊張した。
この後、まさかの雪になり写真なし。テントに戻った時にはホワイトアウト。1時間もしたら猛吹雪になりました。この時期の登山は全く油断ならない。
3日目: 朝までガスで雪も降っていました。停滞を決め込んでましたが6時近くになると晴れてきたので出発。しかし風が強い。
2023年05月02日 05:37撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
1
5/2 5:37
3日目: 朝までガスで雪も降っていました。停滞を決め込んでましたが6時近くになると晴れてきたので出発。しかし風が強い。
新雪。
2023年05月02日 05:37撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
5/2 5:37
新雪。
おニューの板がすこぶる調子いい。
2023年05月02日 05:57撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
2
5/2 5:57
おニューの板がすこぶる調子いい。
まずは太郎平まで。なんじゃこりゃっていうくらい広々のバーン。この界隈はスキー天国だね。
2023年05月02日 05:57撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
1
5/2 5:57
まずは太郎平まで。なんじゃこりゃっていうくらい広々のバーン。この界隈はスキー天国だね。
自分のシュプール。真冬と同じ。
2023年05月02日 06:00撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
1
5/2 6:00
自分のシュプール。真冬と同じ。
気持ちいい!!
2023年05月02日 06:01撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
2
5/2 6:01
気持ちいい!!
北ノ俣岳。夏に見るとのっぺり特長のない山ですが、雪があるとほんと名山ですね。
2023年05月02日 06:18撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
2
5/2 6:18
北ノ俣岳。夏に見るとのっぺり特長のない山ですが、雪があるとほんと名山ですね。
赤牛方面の雲が取れない。
2023年05月02日 06:18撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
5/2 6:18
赤牛方面の雲が取れない。
薬師の登り途中から振り返る。黒部五郎が秀逸なのはもちろんだが、北ノ俣が美しすぎて。
2023年05月02日 08:03撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
5/2 8:03
薬師の登り途中から振り返る。黒部五郎が秀逸なのはもちろんだが、北ノ俣が美しすぎて。
やりましたー。しかし風強かった。寒くて水筒の水も凍ってゆく。
2023年05月02日 09:10撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
4
5/2 9:10
やりましたー。しかし風強かった。寒くて水筒の水も凍ってゆく。
槍穂高方面。完全に冬山だね。
2023年05月02日 09:11撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
5/2 9:11
槍穂高方面。完全に冬山だね。
これから滑る斜面。このあとスマホ電池切れで写真取れなかった。
2850mから滑走しましたが、風で飛ばされて本谷に落ちたら命は無いです。とても気を使いました。
2023年05月02日 09:11撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
5/2 9:11
これから滑る斜面。このあとスマホ電池切れで写真取れなかった。
2850mから滑走しましたが、風で飛ばされて本谷に落ちたら命は無いです。とても気を使いました。
テントまで戻って充電しようやくスマホ復活。滑ってきた薬師を振り返る。下の方で少しだけ(5ターンくらい)本谷に入って滑りましたが粉雪が最高でした。
2023年05月02日 13:15撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
1
5/2 13:15
テントまで戻って充電しようやくスマホ復活。滑ってきた薬師を振り返る。下の方で少しだけ(5ターンくらい)本谷に入って滑りましたが粉雪が最高でした。
明日の朝はこちらに滑ってみよう。北ノ俣岳の東面。沢もまだ埋まっているので安全そうだ。
奥は雲ノ平と水晶岳。
2023年05月02日 15:29撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
2
5/2 15:29
明日の朝はこちらに滑ってみよう。北ノ俣岳の東面。沢もまだ埋まっているので安全そうだ。
奥は雲ノ平と水晶岳。
メインディッシュの薬師登頂と滑走を終えてほんとホッとした。
2023年05月02日 15:32撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
2
5/2 15:32
メインディッシュの薬師登頂と滑走を終えてほんとホッとした。
夕刻の水晶、美しい。
2023年05月02日 18:26撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
2
5/2 18:26
夕刻の水晶、美しい。
薬師と右は赤牛。美しい…
2023年05月02日 18:27撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
3
5/2 18:27
薬師と右は赤牛。美しい…
水晶アップ。おやすみなさい。
2023年05月02日 18:28撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
3
5/2 18:28
水晶アップ。おやすみなさい。
4日目: 最終日。黒部五郎と奥に槍。美しい。
2023年05月03日 05:48撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
3
5/3 5:48
4日目: 最終日。黒部五郎と奥に槍。美しい。
凄い迫力の笠ヶ岳。
2023年05月03日 05:49撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
3
5/3 5:49
凄い迫力の笠ヶ岳。
ボケちゃったけど乗鞍。
2023年05月03日 05:49撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
1
5/3 5:49
ボケちゃったけど乗鞍。
槍アップ。
2023年05月03日 05:49撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
2
5/3 5:49
槍アップ。
水晶は逆光になるので写りはイマイチ。
2023年05月03日 05:49撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
5/3 5:49
水晶は逆光になるので写りはイマイチ。
北ノ俣東面滑走を終えて。わずか3分の勝負だった。
2023年05月03日 05:55撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
5/3 5:55
北ノ俣東面滑走を終えて。わずか3分の勝負だった。
200m弱下った。沢は完全に埋まっているのでもう少し下れたけど、安全を見てここまでにする。
2023年05月03日 05:55撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
5/3 5:55
200m弱下った。沢は完全に埋まっているのでもう少し下れたけど、安全を見てここまでにする。
美しいねー
2023年05月03日 06:05撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
5/3 6:05
美しいねー
テントを畳んだあと。猛吹雪に耐えた。
2023年05月03日 07:02撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
5/3 7:02
テントを畳んだあと。猛吹雪に耐えた。
御嶽遠望。
2023年05月03日 07:04撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
1
5/3 7:04
御嶽遠望。
少し担いで下ってからスキー履きます。西面は夕方解けるので、この時間は凍っててガリガリ。
2023年05月03日 07:22撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
5/3 7:22
少し担いで下ってからスキー履きます。西面は夕方解けるので、この時間は凍っててガリガリ。
初日にお世話になった避難小屋。小さいですが綺麗。湧き水も小屋の前にあって快適です。
2023年05月03日 07:49撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
1
5/3 7:49
初日にお世話になった避難小屋。小さいですが綺麗。湧き水も小屋の前にあって快適です。
バイバイ北ノ俣。こんなにスキーが楽しめる山だとは知らなかったよ。
2023年05月03日 08:00撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
5/3 8:00
バイバイ北ノ俣。こんなにスキーが楽しめる山だとは知らなかったよ。
飛越トンネルまで無事戻ったー。
このあと林道歩いてたら車が止まり「乗って下さい。そこにこーんな大きなクマがいました」だと😱
2023年05月03日 12:41撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
5/3 12:41
飛越トンネルまで無事戻ったー。
このあと林道歩いてたら車が止まり「乗って下さい。そこにこーんな大きなクマがいました」だと😱
割石温泉最高でした。
2023年05月03日 16:44撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
5/3 16:44
割石温泉最高でした。
高山でよった「とと家」さんの飛騨牛ハンバーグ。あまりにうまくてただただ貪り食う。
高山はどこも宿が満室で、このあと下呂温泉まで行き泊りました。
2023年05月03日 18:33撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
2
5/3 18:33
高山でよった「とと家」さんの飛騨牛ハンバーグ。あまりにうまくてただただ貪り食う。
高山はどこも宿が満室で、このあと下呂温泉まで行き泊りました。
ゲロビールで打ち上げ!
2023年05月03日 20:23撮影 by  OPPO A5 2020, OPPO
3
5/3 20:23
ゲロビールで打ち上げ!

感想

◆4/30(日) 和佐府〜飛越トンネル〜寺地山〜北ノ俣避難小屋△
曇りのち晴れ
 朝の4:30に小田原の自宅を出発し、10:30に和佐府の車止めに到着。幸い、昨夜から激しく降り続いていた雨は10時過ぎに完全に上がった。飛越トンネルまで車で行けるかと思ったが、車止めの看板があるのでここから歩くことにする(看板を動かせば問題なく入れた。自己責任だが)。スキー靴での歩行は厳しく、林道6キロを2時間弱かかってようやくトンネルに到着。腹ごしらえしてから登山にかかる。
 今年は融雪がとても速くしばらくスキーを担がねばならなかった。あまりの荷物の重さに遅々として進まない。1800mほどでようやく雪がつながってきたのでシール走行に切り替え。しかし急峻な寺地山では夏道が完全に出ており、またもや担がねばならなかった。
 息も絶え絶えで避難小屋に到着したのは日没とほぼ同じ18:30だった。幸い、2人パーティが小屋に泊まっているだけ。大急ぎで飯の支度をした。2人パーティは静岡から来た方だった。このあと2日間も同じ行程を歩くことになり、色々お話をして楽しかった。

ーーー

◆5/1(月) 北ノ俣避難小屋〜神岡分岐〜黒部五郎岳〜神岡分岐△
晴れのち雪、夕方から猛吹雪
 昨日の体のダメージが酷いので少し遅めに出発。稜線まで2時間耐えれば荷物をデポ出来るのだが、その2時間がつらく、当然ながら荷が重すぎて2時間半以上かかって稜線に出た。おまけに途中でパッキングを変えたらアイゼンをしまい忘れたらしく、あとで調べたら無くなっていた(もう15年も使った壊れかけで、すでに新調したので惜しくはない。古いのを持って行って本当に幸運だった)。稜線ではスキーだし、クトーもあるので登山靴のアイゼンは無くとも行けるだろう。
 稜線の神岡分岐のすぐそばにテントを張ってから黒部五郎に向かう。稜線は真っ白だ。北アルプスで白馬岳以北を除けば、これほどスキーがフィットする稜線はほかにないだろう。初めてこの時期に訪れたが、こんな天国のような場所だったとは全く驚いた。赤木岳や2578ピークはサクッと巻いてあっという間に黒部五郎本峰の登り。ここだけは夏道が露出しているので仕方なく担ぐが、頂上はすぐであった。
 お楽しみの滑走は山頂からスキーを履いて滑った。夏道の右側の北北西壁。真っ白だが部分的にアイスバーンなので、万が一転んだら止まらないだろう。大きく斜滑降を繰り返し安全第一で下った。最低鞍部まで来たら雲行きが怪しくなってきて雪がちらついてきた。
 朝はあんなにいい天気だったのに、大きく崩れそうな気配になってきた。休憩もそこそこでもくもくとシールで登る。急がなきゃと思うが、残念ながら北ノ俣岳本峰の登りでガスに覆われ、ホワイトアウトになった。風も強まり不安の中テントまで20分。トレースをたどれたからよかったものの、危ないところだった。テントをあらかじめ張っておいて本当に良かった。
 テントに戻って1時間ほどすると猛吹雪になった。その後朝まで荒れに荒れた。これほど悪化する予報ではなかったので本当に驚いた。山の天気は全く油断ならない。夕方以降だったからよかったものの、日中にこうなっていたら遭難者多数になっていたかもしれない。

ーーー

◆5/2(火) 神岡分岐〜薬師岳〜神岡分岐△
曇りのち晴れ、烈風
 朝起きたときはまだ吹雪で視界も無かった。でも時折上空に青空が広がるので、天気は回復するだろうと踏んで予定通り起きて食事をした。6時前になると晴れてきたので出発することにした。北ノ俣から太郎平まではまるで巨大なスキー場でしかも木もほとんどないのでどこでも滑り放題。こんな場所は北アルプスでもほかにないのではなかろうか。おまけに今日はパウダーたっぷり。ウハウハ状態で薬師峠に到着した。
 薬師峠からはシール走行だが、烈風が吹いており斜度も急なのでクトーを付けて最新の注意で登った。薬師平で静岡パーティに追いつかれた。太郎平小屋に泊まっていたので、てっきりお先を行っているのかと思ったが、あまりの強風で出発を後らせたそうだ。彼らは足が速く、そのままぐんぐん登って行ってしまう。薬師岳山荘を過ぎると風がワンランク強まった。正直スキーだと限界に近いが、アイゼンもないのでスキーとクトーで頑張るしかない。2850mのケルンのすぐ下で、ここが限界とスキーを置いて先に進んだ。登山道は部分的に凍ってつるつるだが、幸い地形は安全になるので、ゆっくり進んで山頂に到着した。
 薬師岳に登ったのは2000年の夏に1回だけ。23年ぶりに同じ場所に立った。当時は祠があり中に薬師如来像が飾られていたが、跡形もなくなっていた。山頂標識だけの実にシンプルな山頂。23年前には腹ばいになってカールを覗き込んだが、今は雪庇がいつ崩れるかわからないのでそんなこともできない。あまりに寒いので5分もたたずに山頂を辞した。
 2850mからの滑走。何度か「えいっ」と出発しようとしたが、すぐ左は本谷である。風に飛ばされて本谷に入ったら命がどうなるかわからない。迷いに迷って、20mほど担いで下って、少し広くなった稜線から滑走開始した。恐ろしくガリガリのアイスバーンだったが、滑りだしてしまうと恐怖感も薄れ、完全にスキーをコントロール下に置けた。途中からは余裕も出てきたので、あえて本谷に入って滑ってみる。本谷内の雪は飛ばされておらず、最高の雪質だった。稜線に戻れなくなったら嫌なのでわずか5ターンぐらいで打ち切ったが満喫した。
 薬師峠手前で静岡パーティに追いつき、少し話をした。追いつかれるかもとは思っていたが、本当に追いついたので驚いたと話していた。健脚な彼らはこのあと下山してしまうのだ。私より一日短いのに同じ行程をこなすのは全く恐れ入る。
 その後、無事にテントに戻ったが、この日はぴったり6時間の行動だった。半日仕事である。荷物が無ければやはりスキーは速いと我ながら感心であった。この日はとにかく風が強く、気温も一日中氷点下だったので、午後もテントでウダウダすごした。緊張から解放されたリラックスした時間がこの山行ようやく初めて訪れた。

ーーー

◆5/3(水) 神岡分岐〜飛越トンネル〜(途中車に拾われる)〜和佐府[下山]
晴れ
 最終日、夜明け前にあれほど強かった風がピタリと収まった。今日は下山するだけだが、これほどの好条件を放置して下山するのはどう考えてもありえない。昨夕に明日条件が良かったら北ノ俣岳の東面を滑ってみようと決めていた。眼下に見える薬師沢の左沢は完全に雪に埋もれており、そのまま滑って渡れる。渡ったらそのまま北東尾根をダラダラ登れば1時間くらいで帰れるだろう。
 北ノ俣岳山頂まで登り、そのまま東面に滑り込む。上部がガリガリだったが下の方はまだパウダーだった。ひよって真東に進んだが、北東の一番斜度の大きいラインに進めばもっと良かっただろう、下部では気持ちよくて思わず吠えてターンした。最後は左沢を滑って横断し、そのまま惰性で登って滑走終了。自分のシュプールを振り返るも至福だった。
 悪条件2泊に耐えたテントを畳み、満足して稜線を去った。少しだけスキーを担いで夏道を下り、アイゼンを紛失したと思われる一帯を探したが見つけられなかった。あきらめてそのままスキーを履き、避難小屋まで滑走。水を補給してからまたスキーを担ぐ。寺地山までは樹木が多く、斜面も荒れているので滑走しても時間がかかるだけだと判断した。寺地山の下りから1800mくらいまではなんとか滑走できたが、2か所ほどヤブを越えるために担いだ。
 無事にトンネルまで下り、荷物をデポ(車で入れることが分かったので、あとで取りに来ることにした)。あと1キロで和佐府の車止めというところで岐阜ナンバーの車がとまり「車に乗ってください。いまそこにこ〜んなおおきな熊がいました」という。ありがたく乗せていただいた。実は自分が気づかずに熊に遭遇したかもしれないのはこれで2回目である。1回目は山梨の奈良田で、このときも車が急に止まり「あんた、今そこに熊いたんだけど大丈夫だったかい?」と聞かれて驚いたのだった。
 私は熊を見ていないが、熊は私を見ている。品定めをしているのだろうか。私は美味しくなさそうなのだろうか…それならそれでラッキーだ。
 何はともあれ、この難しい計画を無事終えた。高山に宿を取れず、頑張って下呂温泉まで運転したが、下呂の民宿の湯は最高だった。日本三名泉のうたい文句に大いに頷いた。

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