船形山南部縦走(黒鼻山~北泉ヶ岳~三峰山~蛇ヶ岳~船形山~後白髪山)


- GPS
- 32:35
- 距離
- 35.1km
- 登り
- 2,091m
- 下り
- 2,087m
コースタイム
- 山行
- 8:31
- 休憩
- 0:35
- 合計
- 9:06
- 山行
- 7:04
- 休憩
- 1:49
- 合計
- 8:53
天候 | 7日:曇り 8日:朝方一時的に晴れ、のち曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2015年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
トイレ、自販機有り。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
定義から出発して黒鼻山へ登り、その後は船形山まで縦走。 最後は後白髪山へ南下し、定義へ戻るコース。 黒鼻山へ登りには、山頂から南西方向へ続く尾根を利用した。 ●定義地区〜黒鼻山南西尾根取り付き 横川林道方面へ車道を進み、横川林道入口から更に50m程進むと別の林道がある。 しばらくはその林道を辿り、黒鼻山の南西尾根へと向かった。 途中から林道は西へと向かうので、ここで林道と別れて北東方向へ。 ルートを探しつつ北東方向へしばらく進むと、3つの小ピークに囲まれた すり鉢型の台地へ出る。 すり鉢上への登りは急登で、上部は雪が無く薮漕ぎになるが、 笹薮系の薮なのでそれ程苦労はしなかった。 登りきった先には遊歩道(ふるさと緑の道)が続いているので、 これを辿れば容易に尾根取り付きまで行けた。 取り付き手前には八角形のベンチが設置してあるので目印になる。 ●黒鼻山南西尾根 冬期バリエーションルート。 定義から黒鼻山へ登るルートはこの尾根以外にも幾つか考えられるが、 その中でも最も危険なルートかもしれない。 もし、行くのであれば充分な装備と技術を持ち合わせた上で。 安易な気持ちで挑んではいけない。 この尾根を踏破した記録はネット等でも見かけなかったが、 それも納得の危険な難所が存在する。 尾根取り付きには細かい木々が密に生えており、灌木系の薮漕ぎから始まる。 序盤から体力を消耗させられるが、尾根上に出れば木々は疎らになり楽になった。 しばらくは緩い傾斜の登りが続くが、黒鼻山の直下で一気に傾斜が上がり、 進むルートは、斜面と言うよりは崖のような状態になった。 最初は雪付き部を登るつもりだったが・・・ この日の気温が高く、標高の低さもあってか雪は不安定。 アイゼンでは踏み抜きが多く、雪崩の危険も感じたので雪付き部は避け、 岩が出ているミックスルートからの登攀を試みた。 ミックスルートに雪は少なく雪崩の心配は無いが、傾斜は厳しく垂直な箇所も有り。 沢登りにおける悪場のようなルートで、一般的な雪山登山のレベルを越えた 厳しい登攀になる。 重い雪山装備で登るには危険なので、この登攀ではロープを使用した。 ロープは30m、ツインで使用。 空身で登ってトップロープ設置した後、懸垂下降で降りて荷物回収。 ロープを補助的に使用しながら荷物を背負って登り返した。 この登攀が今回山行の核心部であり、も少しルート写真を載せたいところだが・・・ 登るのに精一杯で、写真を撮ってる余裕は無かった^^; ●黒鼻山〜北泉ヶ岳 特に難所無し。 北泉ヶ岳までトレースがあり、目印リボンもそこそこ有ったのでスムーズに行けた。 ●北泉ヶ岳〜船形山(長倉尾根) 北泉ヶ岳の先はトレース無く、幅広の尾根が続くのでルートファインディング要。 長倉尾根は視界が開けないブナの森が続くので道迷いに注意。 木に付けられたペンキマークの目印を所々で見つけたが消えかけており、 見えにくい。目印としては当てにしない方が良い。 ブナの森を抜けると視界は開け、明瞭な尾根状になる。 船形山までは特に難所も無く、天候さえ良ければ特に問題は無いだろう。 今回は長倉尾根上で幕営を行ったが、幕営適地は多く、吟味すれば風を 避けられる適地が見つかる。 今回は南風だったので三峰山を越えた先の稜線北側で幕営したが、 北西風が強い場合は、三峰山の東側手前か、後白髪山分岐付近が良さそうな感じ。 そこまで到達できなくても、樹林帯は全域幕営適地なので幕営地には困らないだろう。 一番良いのは船形山山頂小屋泊まりだが、一日でそこまで到達するのは無理かな? ●船形山〜後白髪山〜定義地区 後白髪山の後衛1峰(P1360)の傾斜が急。 スノーシューでは登れない斜度だったので、アイゼンとピッケルを使用し直登した。 (直登じゃなく、西側を巻いた方が楽かも?) 後白髪山以降は特に難所は無いが、ルート上に目印リボン等は一切無く、 進路が変わる場所が幾つかあるので道間違いに注意。 |
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
長袖インナー
ハードシェル
タイツ
ズボン
靴下
グローブ
アウター手袋
予備手袋
防寒着
ゲイター
バラクラバ
着替え
靴
ザック
サブザック
アイゼン
スノーシュー
ピッケル
スコップ
行動食
非常食
調理用食材
調味料
飲料
水筒(保温性)
ガスカートリッジ
コンロ
コッヘル
食器
ライター
地図(地形図)
コンパス
笛
ヘッドランプ
予備電池
GPS
筆記用具
ファーストエイドキット
針金
日焼け止め
保険証
携帯
時計
タオル
ナイフ
カメラ
ポール
テント
テントマット
シェラフ
ロープ(30m)
ハーネス
カラビナ
スリング
|
---|
感想
去年12月、船形山に登頂した時、船形山の南部縦走を思い立ち、
今回、それを実行してみた。
この山行の計画段階で最も悩んだのが、定義から黒鼻山への登りルート。
幾つか登れそうな尾根があるが、どれもこれも厳しそうである。
その中でも特に気になったのが、南西側から黒鼻山へと真っすぐに続く尾根で、
このようなダイレクトルートに、私は妙に惹かれてしまう。
(飯豊のダイグラ尾根も然り)
だが、ダイレクトルートというのは危険も多い。
山頂まで最短で行ける分、その勾配も急になるのだから当然だ。
それは、黒鼻山南西尾根も例外ではなく、山頂直下の急登に到達した時、
その光景に唖然とした。
急登、では無い。
これは・・・
「崖じゃねぇかッッッ!!!」
思わず、その光景に対して突っ込んでしまった。
進路の先に存在するのは、切り立った崖。
等高線図の狭さから急登になるのは予想していたが、ここまでとは思わなかった。
う〜ん、登れるかぁ?
ここは無理っぽいので、西側へトラバースし、傾斜が緩んだ場所から
直登を試みようとしたが・・・
ダメだ、雪が緩すぎる。
この日の気温の高さと標高の低さが災いしてか、雪は緩みまくっており、
アイゼンでは踏み抜き多発。
踏み抜いてバランスを崩せばそのまま滑落に繋がるような斜度であり、
一歩踏み出すたびにヒヤヒヤする。
また、この位の傾斜と雪の状態では、雪面を横に切り裂くトラバースは
雪崩を誘発する危険が有る。
トラバースは危険すぎる為、直登するしかなさそうだが・・・
この雪の不安定さでは、ダブルアックスでも無理そうである。
ぐぬぬ、崖を前にし行き詰ってしまった。
どこかに突破口は無いものか?
しばらく崖を観察してみる。
・
・
・
あった、突破口が。
そこには雪付きが薄く、岩が突き出たミックスルートがあった。
岩には多くの灌木が張り付いており、荒れたルートだ。
沢登りにおける悪場のようなルートだが、このルートならば踏み抜きや雪崩は
確実に避けられる。
傾斜はかなり立っており、難しいミックスルートになりそうだが、
こういう場所でこそ、これまでの沢登り経験が生きる。
このミックスルート相手でも通じるはずであり、突破できる自信はあった。
ロープを出しハーネスを付けて、重荷はデポする。
まずは空身でミックスルートへの登攀を試みた。
上部は殆ど垂直に近い状態だったが、細かい灌木が多いので支点は豊富。
しっかりと根を張っているか注意しつつ灌木を選び、上部を目指す。
あまりに厳しいようであれば途中で支点を取るつもりだったが、そこまででは無かった。
ロープは流したままでトップまで登り詰め、アンカー設置。
後は懸垂下降で降りて、荷物を回収。
荷物を背負った状態で、ロープを補助的に使用しながら登り返した。
空身では腕力だけで登れた壁も重荷では厳しく、足も使わなければ登れない。
岩の細かいくぼみにアイゼンの前爪をかけて踏みこんだりせねばならず、
いくらトップロープで安全が確保されている状態とは言え、神経を使う。
時々、アイゼンが滑って甲高い擦れ音が鳴ると背筋が凍りそうになる。
とにかく、慎重に。
そろり、そろりと時間をかけて上部へ登り、ロープのアンカー到達。
傾斜が緩んだ安全圏に到達した事で、ようやく安心した。
かくして、最大の難所を無事突破。
難所を突破した事で、心も軽く北泉ヶ岳、そして縦走路となる長倉尾根へと向かう。
その後の行程で特に困難となる箇所は無く、その日は三峰山まで到達。
三峰山を越えた先にて幕営し、風穏やかな快適な一夜を過ごす。
そして、翌日には船形山の山頂へ到達した。
昨年12月にも訪れた船形山。
その時に比べると視界は曇っており、絶景、と言うほどでは無かった。
だが、充実感はその時以上。
手ごたえのある難所に、長倉尾根の長い縦走路。
それらを踏破した喜びは大きい。
また一つ、大きな目標を果たした事に満足しつつ、下山路の後白髪山へと向かい、
まるで凱旋するかのような気分で定義地区へと下山した
スリリングな登攀、美しい長倉尾根のブナ林、雄大な船形連峰の山景色、
非常に濃密な山行だった。
だが、一点だけ、心残りがあるとすれば・・・
定義とうふ店の油揚げを食べそびれた事だろうか。
せっかく定義に来た事だし、名物の油揚げは食べて帰りたいものである。
下山したのは午後3時位だったので店は営業しており、買える状況だったが…
休日とあってか店は混み合っており、店内では行列が出来ておる。。。
登山で疲れているのに、スイーツ待ちなんてやってられないょ(|||´Д`)=3
(※油揚げは私の中ではスイーツ扱い)
なので、油揚げは食べずに帰宅してしまった。
それが、今でも少し心残りである。
まぁ、定義にはいつでも来れるので次回でも良いか。
平日休みが取れたら、食べに行ってみるかな。
コメント
この記録に関連する登山ルート
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ひぇ〜35km
距離もすごいですが、黒鼻山南西尾根かなり危険でハードなルートですね・・・Luskeさんでなければ登れなかったんじゃないでかね
残雪期の船形山考えてますが、私は無難に旗坂から行こうと思います
今年一番のロングルートになりましたが、黒鼻山南西尾根以外は傾斜が緩く、
アップダウンも緩やかなので、それ程辛くは感じませんでした。
残雪期の船形山、良さそうですね〜
今回のルートはちょっとオススメできないので、旗坂が良いかと思います。
升沢ひなん小屋や山頂小屋は快適に過ごせる良い小屋ですので、
御都合がつけば、そこでの1泊も良いかと思います。
升沢小屋までのブナ樹林帯は景観も良いので、そこで幕営も良さそうですよ
こんな周回を考えていらっしゃいましたか!? これを思いついたことに驚き、さらにこれを実行したことにもっと驚きました。確かにLuskeさんなら黒鼻山まで行って尾根に乗ってしまえば残りは楽勝だと思いますが、黒鼻山ダイレクトはこれだけでもお腹いっぱいになるほどの難路だったのではないかと思います。よくぞ無事に突破されましたね。たぶん、八ヶ岳あたりのロープを使った人気ルートよりも危険だったんではないかと。沢登りをソロでやっている強みが出たということでしょうか、稜線歩きとクライミングの要素を併せ持ったアルパインなレコだと思います。お疲れ様でした。
ちなみに、後白髪山の後衛1峰(P1360)ですが、深野稔生さんの「宮城の山ガイド」には、「南宝森」という名前が付いているという紹介がありました。これによると、やはり西側を巻くのが正解のようです(ヽ゜ω゜)ノ
derakkumaさんが先日黒鼻山へ登られたルートも検討しましたが、
ダイレクトに惹かれて南西尾根にしてみました。
厳しい尾根でしたが、今季の雪山登山の中では最もテクニカルなルートで、
薮漕ぎ有り、登攀要素有りと、登り甲斐がある尾根。
確かに、この尾根だけでもお腹一杯な感じでした^^;
雪が締まって雪付き部を辿れれる状態であればトラバースが可能ですので
難度はずっと下がると思うのですが・・・
標高の低さもあり、雪が安定するのは稀かと思います。
気温の低い日が狙い目かな?
後衛1峰(P1360)には、南宝森という名前があったのですね。
なかなか立派なピークで、最初見た時、これが後白髪山かと思ってしまいました。
無名ピークにしてはやけに立派だと思いましたが、
なるほど、由緒ある名前があるのですね
南宝森は西側が巻けそうに思いましたが、薮がけっこう出ていたので直登を選びました。
登りだったのでそれ程困難ではありませんでしたが、下りだと怖そうな斜面です。
下りの場合は、正解通りに西を巻いた方が良さそうです。
はじめまして。Luskeさん。8日に旗坂から登ってたものです。
升沢小屋あたりから稜線の人影に気づいていたのですが、Luskeさんだったのでしょうかね?
山頂小屋に宿泊した方なのかと思っていたのにまさかこんなロングルートの幕営だったとは!!
いやはや脱帽です。
稜線上で人は見かけずトレースも無かったので、
その日kdcさんが見かけたのは、たぶん私だったと思います。
私が山頂を去った後に登頂されたのですね。
10時位までは晴間が見えていたので、お互い良いタイミングで登頂できましたね
私の方はkdcさんに気が付きませんでしたが、もし稜線上からその姿が見えてたら、
ぜひ挨拶したかったものです
冬山での幕営はなかなか大変ですが、今回は風穏やかで荒れる事も無かったので、
とても快適な幕営でした。
長倉尾根には幕営適地が多数あり、幕営好きの私としてはとても魅力的な尾根でした。
さすがLuskeさんです…
冷や冷やしながら拝見しました。
ロープを補助的に利用する…すごいです。
いつぞやの南アでも懸垂下降のくだりがありましたね。
今度は頭にカメラ付けてください!←図々しい奴
そう言えば、最近はヘルメットにカメラを付けてる方、良く見かけます。
スキーヤーやライダーが付けているのを見かけた事がありますが、
登山で使うのも面白そうですね。
ちょっと気になってる道具です
今回の登攀では手を離すと落ちるような状況でしたので
写真を撮ってる余裕は有りませんでしたが、ヘルメットカメラでの
動画撮影で有れば問題なく出来そう。
導入したいところですが・・・
でも・・・お値段高いかなぁ?
スノーシューで散財してしまったので、しばらく様子見ですね^^;
密度の濃い山行、山頂でも晴間に恵まれて良い二日間でしたね
斜面に亀裂が目立つようになってきましたか。
ルート選びにより気を使う時期になりますね。
定義は油揚げが名物なんですか?
しかもスイーツとは。
スーパーで売っている油揚げしか知らない自分には
今回のレコの中で一番想像が難しい所であります
子供の頃、近所の駄菓子屋で「焼き油揚げ」なるものを売ってました。
油揚げに醤油をつけて焼いたもので、スナック菓子みたいな感じです。
私はそれが好きでよく食べてましたので、今でも油揚げには
お菓子のイメージがあります
定義の三角油揚げは厚みがあるので、スイーツと呼ぶには少しボリュームがありますが、
Webberさんが定義にいらした際はぜひ食べてみて下さい。
一般的には、醤油と唐辛子をつけて食べます。
御土産にも良し、その場で食べても良いし。
かりかり、ふわふわの触感は癖になりますぞ^^b
レコを楽しみにしておりました。
黒鼻山、北泉ヶ岳経由の船形山周回コースとは想定外でした。
あらたな、周回コースの完成ですね。
でもハードコースを難なくこなされるのが凄い。
定義で食べたくなる油揚げ、スイーツ扱いにさらにびっくりです。
今年の無積雪期に定義から船形山にアタックしてみます。
今回はハードでした
黒鼻山以降は楽でしたが、やはり南西尾根は厳しかったです。
あらたな周回コースを開拓出来ましたが、次回この周回をやる際は、
もう少し楽なルートが良いなぁ、なんて思ったりもします。
先週、derakkumaさんが横川林道を利用したルートで黒鼻山へ登られてますので、
次回はこちらから登ってみたいと思っております。
下山後は空腹の極みですので、油揚げだけでは腹は満たされません。
なので私にとってはスイーツであります
まぁ、3個くらい食べれば満たされるかと思いますが、
3個も食べるのはちょっと…
今回のルートは、以前にいかれた船形山のレコと違いとてもハードですね。ところでLUSKEさん、いつもロープを持っているんですか。
雪稜のソロシステムは荷物も重いですし、工夫が必要ですね。
スノーバーとかも常時携行ですか。
るすけさんは縦走が似合いますね
自分もこのあたり雪のある時に歩いてみたいなと拝見いたしました。
おつかれさまでした。
毎回ロープを持参している訳ではなく、山行に合わせて持参しております。
知ったルートであれば大抵はロープは持参しませんが、今回の様な難所が予想されるルートの場合は持参するようにしてます。
今回、難所が予想されたのは黒鼻山直下ですが、標高が低い領域ですので
樹木で支点が取れると思い、スノーバーは持参しませんでした。
雪稜のソロシステムはなかなか面倒で、ビレイヤーが居れば1回登れば済むところを
登って下って、また登って、と・・・
N型でやらねばならず、同じ難所を3回通過しなければなりません
何か良い方法があれば良いのですが、画期的な制動器具でも開発されない限り、
このシステムでやるしかなさそうです><
まぁ、1回で済ませる方法も無くは無いのですが・・・
安全性に欠くシステムであり、かなり手順が面倒なので私は殆どやりません^^;
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