毛勝三山縦走ノンビリ2泊3日
- GPS
- 27:22
- 距離
- 32.7km
- 登り
- 3,447m
- 下り
- 3,554m
コースタイム
- 山行
- 5:13
- 休憩
- 1:18
- 合計
- 6:31
- 山行
- 6:15
- 休憩
- 2:55
- 合計
- 9:10
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2024年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
装備
個人装備 |
ハードシェル
ズボン
靴下
グローブ
アウター手袋
予備手袋
防寒着
ネックウォーマー
毛帽子
着替え
靴
ザック
アイゼン
ピッケル
サブアックス
ビーコン
スコップ
ゾンデ
昼ご飯
行動食
調理用食材
飲料
水筒(保温性)
ガスカートリッジ
コンロ
コッヘル
食器
ライター
地図(地形図)
コンパス
笛
ヘッドランプ
予備電池
GPS
ファーストエイドキット
針金
常備薬
日焼け止め
ロールペーパー
保険証
携帯
時計
サングラス
タオル
ナイフ
テントマット
シェラフ
ヘルメット
スリング120+HMS×2セット
ビレイデバイス
ハーネス
セルフビレイラインヤード
|
---|---|
共同装備 |
テント(シングルウォール)
ポール
ロープ40m(8.9mm)
|
感想
4月終盤になってゴールデンウィーク前半の予定が空いた。これは念願であった積雪期バリルートの毛勝三山へ行くチャンス到来だ。
毛勝三山は北から剱岳に向かって毛(け)勝山(かちやま)、釜谷山(かまたんやま)、猫(ねこ)又山(またやま)と連なる三山である。毛勝三山に狙いを定めたのは猫又山の存在からだ。
昔、劔岳に興味をもったのをきっかけにグーグルアースで劔岳が最も良く見える山はどこだろうとPCのモニター上でグルグル探していた。するとここだ!と言う山があった。劔の真北にあって眼前に迫る劔の迫力はモニター上からも確認できた。名前は「猫又山」とある。ほー!こんな山があるのか。名前も面白い!
その後、機会あるごとに猫又山の情報を探した。すると関連して毛勝三山という連山であることも判った。よしいつかこの毛勝三山を登ってみようと夢を抱いた。
しかし、毛勝山と猫又山には登山道がつけられているが真ん中の釜谷山への縦走路は存在しない。従って釜谷山へ訪れる人は殆どいない。登山情報サイトでは槍ケ岳に登る人の1/1000にも満たないだろうとの事だ。そもそも毛勝三山なる連山が劔岳の北側に存在することすら知らない人も多いと思われる。
積雪期なら三山を繋ぐことができるというバリエーションルート。この目で眼前に迫る劔を眺めてみたい!と毛勝三山への山行を実行に移すことに。
直前になって山友に同行者を募った。やはり直前すぎて予定が入っている人が多い中で一人schneckeが手を挙げた。
27日、AM6:00、富山県魚津市の片貝第4発電所脇に車を駐車し出発。空は薄曇りながら少し青空も見える。5月を前にして小鳥のさえずりも一段と賑やかだ。暖かい春の気温にschneckeはハードシェルのズボンの裾をまくって歩いている。
ルートは西北尾根を行く夏ルートと阿部気谷・毛勝谷を行く雪渓ルートがあるが今回は雪渓ルートを行くことにした。このルートは白馬大雪渓の約2倍の標高差がある雪渓で上部では登攀角度も50°を越えるという急登である。片貝山荘を越えたところで尾根ルートとの分岐を左に見てこの先の橋を渡ったところから雪のついた丘に上がる斜面が現れる。その根元で身支度を整えた。
暫く川沿いに歩くと行く手の堰堤にルートを遮られた。GPSで確認するとルートは右上にS字に上がるようになっている。右をみると崖に藪があり藪を上がってみるがルートがよく判らない。またもとに戻ってもう少し前から登るのだろうかと右往左往した末に前方斜め上に石積擁壁のような人工物が見える。恐らく道路の土留め壁だなと推察しそこを目指して藪を突っ切るとやっぱり道路だった。この道迷いで30分以上ロスした。さらに進むと阿部木谷の両サイドから山が迫ってきてやがてルートは阿部木谷を渡る崩落中のスノーブリッジに差し掛かった。渡れるかもしれないが安全を図って右岸をこのまま行こうと進んでみると川岸に迫る岩壁との間に大きなシュルンドができている。更に周辺も雪の崩落が進行している。むむ!これは危ないかもしれない!がもう少し進んでみることにした。背中と足で岩と雪壁を押しながらシュルンドの底まで下りた。岩壁に沿って更に進む。ぐさぐさの雪がいつ陥没するか恐る恐る。やがて行く手の雪は遂に無くなった。川の激流が岩壁にぶつかっている。アイゼンを履いてこの垂直の岩をトラバースするには危険すぎると判断し来たルートをまたも恐る恐る戻った。シュルンドでの登攀はまるでワイドクラックのクライミングだ。しかも崩落する雪と格闘しながらやっと地上に出る。結局恐る恐るスノーブリッジを渡った。意外とすんなり渡りきり、更に進んで行くと幾度かのルンゼからのデブリ帯を通過する。落石もけっこうあるようだ。俺達は360°からの落石音に意識を集中させながら進んだ。
お昼頃、schneckeが「もうこの辺でテントを張ろうよ」と訴えてきた。「えっ!こんな所落石の巣だよ!」と応える。予定では毛勝山の山頂周辺でテントを張る予定であったが昨日までの仕事と、急遽決めた山行に大急ぎで準備で睡眠不足、体調も万全でないようだ。まあ連休は3日あるしゆっくり行くことにした。しかしこんな場所では危なくて仕方ないと大明神沢と毛勝谷の出合いの下あたりの平で開けて高くなっているあたりをとりあえず適地と決めてザックを下ろした。休憩後、更に出合いまで登って偵察に行くが両方の谷から風が吹き下ろし風当りが強い。結局ザックをおろした所にテントを張ることにした。
その時二人組のパーティーが下から上がってきた。聞くと登山口の片貝山荘あたりにテントを張って偵察に来たと。どうやらスノーブリッジの手前で我々のトレースをたどってシュルンドの切れ落ちている所まで来たようだ。「そこでこのナルゲン拾ったんですよ」と見せてくれた。するとschneckeが「あっ!私のだ!」と。ザックの横ポケットに入れていて落としたと思われる。助かった!しかし、我々の一日の行程を偵察で往復して行かれるとは(>_<)
その後、のんびりと昼寝をして過ごした。
翌28日、5時頃テントを撤収し出発。いよいよ毛(け)勝谷(かちたん)を上がるので滑落に備えてコンテで登ることにする。延々と続く雪渓。やがて朝日が稜線を染め始めた。雪渓の角度も急になってきた。
昨日、昼寝をしたのでschneckeは意外と快調のようだ。雪渓の中の落石の通り道となるようなところを極力避けて極力凸部となっているところをジグザグに登っていく。
時折り先行者が踏み抜いた後がある。踏み抜きと言っても完全に踏み抜いており2m位下の谷底の岩が見える。足だけの踏み抜きならまだいいが体ごと落ちたらエライことになる。毛勝谷の最上部、ボーサマのコルが青空を背景に近づいてくる。あの岩までいけばボーサマのコルだろうと希望をもって必死に時折りダガーボジションになりながら登っていくとボーサマのコルは更に上部にあるではないか!そんな事が何度かありがっかりする。近くて遠いボーサマのコル!まるでスナックのカウンター越しのお姉さんのようだ!近いと思いきや意外と遠い!(笑) 23Kgのザックを背負って後ろのschneckeをリードしながら息絶え絶えでやっとお昼前ボーサマのコルに到着した。ボーサマのコルに到着するとなんだあれは!と息を飲む。よく考えたら劔岳ではないか!劔から続く北方稜線、まるで恐竜の脊髄のような早月尾根。これから向かう釜谷山(かまたんやま)、猫又山。そして後立山の峰峰。素晴らしい雪山の景観だ。しばらく見とれたあと丁度そこにあったテン泊跡のピットで昼食。その後、左方向にある丘に上がる。毛勝山はさらに30分程先にあるがこれが毛勝山と信じることにしてボーサマのコルに折り返す。ちょうどそこに昨日テントを張る時に出会ったバーティの一人が登ってきたところだった。少し話すと千葉の山岳会との事。何故この山を選んだか聞いてみると昨年、北方稜線から毛勝三山を繋ごうと思ったが毛勝三山の前で敗退したので今年リベンジだそうだ。我々はグーグルアースで見た時素敵だったから来たと言ったら驚かれた。同じルートを行くとの事だったが我々がちょっと先に釜谷山へむけてスタートした。
稜線はやがて毛勝山南峰へ上がる。そして下ったあと垂直に近い雪壁がやってきた。その壁の上にはテラスになってさらに雪壁は続いていたがルートはそのテラスを左に行けば良さそうだ。約7m程の雪壁、サブアックスを出してWアックスで登った。雪がザクザクで何度もアックスを打ち込むが雪が崩れてアックスの掛りを確認しアイゼンを蹴り込む。
どうにか登りきりセカンドのschneckeをスタンディングアックスビレイで確保する。Schneckeが無事上がってきてホッとする。稜線は森林限界との境界線のようなところを進む。左に張り出した雪庇が凄い。雪庇を踏み抜かないよう樹林ギリギリのところを今日の寝ぐらの適地を探しながら歩く。斜面が急だと削り出す掘削作業も大変なのでなるべく平らに近い所で風当りの無いところが好ましい。ここがいいかと思うと何やら雪面に謎の色の筋が走っている。なにか不吉な予感。そんな事を数回繰り返しやっと適地を見つけてピットを掘り出した。富山平野が一望できる。富山湾に夕日が映っていた。味噌ラーメンを食べながら太陽が落ちて行くのをゆっくり眺めた。なんとも贅沢な時間。誰も居ない雪山の稜線でのゴールデンウィーク。夜は北アルプスオールスターズの頭上は素晴らしい星空だった。
翌29日、日の出と共にコンテでスタートする。今日は待望の猫又山のピークを踏み、ながーい猫又谷を下り、ながーい林道歩き(約6キロ)を経ての下山。長い一日になりそうだ。
暫く稜線を登っていくと先に岩峰が稜線を遮ぎっている。岩峰の周りを左側に雪の谷、右は急傾斜の藪だ。近づいてみると岩峰の周りに浅いシュルンドができている。我々は左のシュルンドの天端を狙って通過することにした。Schneckeにビレイをしてもらい途中ピッケルで中間支点をとりスリングを掛けカラビナにロープを通しサブアックスで進んだ。なんとか無事に岩峰を回り込みロープを引き上げる。「ロープいっぱい!」とのschneckeの声が響く。Schneckeをスタンディングアックスビレイで確保する。Schneckeがどうにか上がってきた。いつ崩れるか分からないシュルンドの通過。ヒヤヒヤだ。
稜線を快調に進んで行くとやがて釜谷山の山頂だ。山頂は雪がない。雪の稜線から土の山頂部の間に軽いシュルンドができている。そのシュルンドをひょいと跨いで槍ケ岳の1/1000も人が来ないだろうという誰もいない釜谷山の山頂に立った。記念写真をとってさらに猫又山へと進む。
もうすぐ猫又山かと思う頃、この先に又もや雪の稜線を岩峰が遮っている。ちょうどそこへ後続の千葉の山岳会の二人が追いついた。「なんですかねーあれ?」と聞くので遠くではっきりわからないが「恐らく岩峰に藪が貼りついてるんじゃないでしょうか」と答えた。それにしても急峻な雪稜の向こうに立ち上がる岩峰は何か恐怖を覚えた。
とにかく近づいてみないとどうなってるのか分からないと我々が先に歩みを進めた。
近づいてみると先ほどとは比較にならないほどの深いシュルンドができている。右の藪に行こうにもシュルンドが深すぎて危険だ。左の谷に切れおちるシュルンドの雪の頂点も足が乗る位の幅しかない。しかし、このザクザクのシュルンドの天端を行くしかないと判断して進むが先ほどのようにピッケルの中間支点も薄い雪のシュルンドで殆ど気休めと思われた。ドキドキしながらソロリソロリとゆっくりそして急いで通過した。ドキドキだ。
セカンドのschneckeも俺のスタンディングアックスビレイでどうにか通過してきた。今回、最大の核心だったかもしれない。
そうこうしていると千葉の山岳会のメンバーが背後の藪から顔を出した。「えー!よく藪へ渡れましたね!」と聞くと何やら藪への侵入口らしきところがちょっと前にあったらしい。なるほど、こういう時こそ落ち着いてルートの判断をするべきだと大いに反省。
そこを過ぎると暫くして猫又山山頂♪ 山頂周辺は雪が溶けていた。しみじみ猫又山からの劔を見たいと思っていたがなんと!山頂より更にこの先の雪稜の方が高いではないか。山頂で記念写真のあと山頂より高い雪の丘へ登る。そこから下降点を探して尾根を下るが。その下降点へ行くのに藪の中をつっきるか藪丘陵を回りこむかとルートに迷う。結局、丘陵を回りこんで反対側の急斜面をトラバースして下降点にたどりついた。
意外にこのトラバースも雪崩の危険性を感じる急斜面。二人なるべく離れて急いで通過した。
猫又谷の下降点に立つと一直線に下の樹林帯の中の沢へ落ちていく谷が超絶滑り台のように続いている。初めのうちはジグザグに傾斜を緩和するよう下りていくが途中からシリセードに切り替える。「ヤッホー!」と途中滑落停止の練習などしながら数百メートル滑り降りた。緩傾斜になると足で漕いで滑るがこれ以上は無理と言うところまで執念でシリセードをやった。お尻だけのミニソリがあるともっと滑れると思われた。何やらschneckeはズボンが染みてパンツまでベタベタになったらしい(>_<)
左右のルンゼからのデブリ帯を何か所か通過すると雪渓の終了点あたりからシャーベット地帯となりやがて沢が始まる。沢沿いは激しく雪が崩落の最中なので歩行するにはとても危険だ。従って沢から離れて藪や低木、高木のジャングルを適当にルーファイして進む。
ところがこのジャングルがくせ者で雪面はグズグズ。直ぐに踏み抜き地獄に変わる。雪の下に隠れている根っこや岩に引っ掛かる。枝に絡まるツルがザックに取り付けたピッケルに引っ掛かるわで何度も転倒する。進んでみると崖が立ちはだかる。また戻ってルーファイのやり直し。ほんとに参った(T_T) そんなジャングルを抜けて恐らく林道跡と思われるところでアイゼンを外す。やっと抜けたかと思ったのも束の間。左からの沢を横切る時に林道跡は無くなり道は沢を横断するスノーブリッジに変わった。すぐ上に堰堤がありそこから流れ落ちる水がスノーブリッジの下を勢いよく流れている。さてどうするか。。
Schneckeはスノーブリッジの横断の危険性を訴え堰堤を上流へ巻いて通過しようと。「よしでは再度アイゼンを履こう」と指示して堰堤の脇の雪斜面を登り始める。
ところがどこを踏んでも踏み抜きまくり踏み抜いた穴を除くと1m位下に岩がゴロゴロ見える。ここは危険と判断。相談の結果、意を決してロープを出してスノーブリッジを渡ることに。Schneckeをロープでつなぎ先に行ってもらう。俺はしっかりした木を選んでスリングで支点を作ってムンターでロープを送りだした。Schneckeは衝撃を加えないようにゆっくりと急いでスノーブリッジをなんとか渡った。こんどは逆にschneckeにセカンドビレイをしてもらい俺が渡った。なんとか無事に渡り終えたがこの先も心配。だが、やがて道はコンクリート舗装に変わり下の沢沿いへとカーブを繰り返して下りていった。
そして発電所が見えた。あーやっとジャングルを抜けて人工物に出会えた。安心の喜びがこみ上げた。雪のジャングル地帯を抜けるのに3時間は要したと思われる。しかしこの後延々6kmの舗装林道を冬靴で歩くはめに。今回のルートで一番の核心はこのジャングル抜けと舗装林道の下りだったかもしれない。(>_<)
舗装林道が登山口への道との分岐点に来たころschneckeとザックを残して俺だけ駐車してある車を取りに向かった。もうすぐ駐車場というところで気づいた!!あかーん!車のキーをザックに入れっぱなしや!アホらしいことにまたschneckeのところまで戻ってまたも駐車場へ。むだな1往復半(>_<)。しかし車に乗った時、来る時残して来た飲みかけのビタミンジュースを発見。それを飲み切ってやりきっ感にしばらく浸った。(^^)/
その後、schneckeを拾って、帰路、魚津市内の金太郎温泉でしっかり温泉と食事。富山湾の刺身定食を食べて北陸自動車道の人となったのでした(^^♪
※今回、融雪の一番激しい時期と思われた。あと1週間〜10日早く来ていればもう少し楽な山行ができたような気がします。
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