【GW春合宿2024】前穂北尾根〜穂高岳
長野県
岐阜県
マリベ
その他1人 
体力度について
- GPS
- 31:24
- 距離
- 37.9km
- 登り
- 2,157m
- 下り
- 2,116m
アクセスを調べる
標高グラフを拡大コースタイム
- 山行
- 7:13
- 休憩
- 1:37
- 合計
- 8:50
- 山行
- 12:18
- 休憩
- 1:39
- 合計
- 13:57
- 山行
- 6:45
- 休憩
- 1:34
- 合計
- 8:19
| 天候 | 晴れ |
|---|---|
| 過去天気図（気象庁） | 2024年05月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関：
自家用車
3日の早朝時点ではだいぶ埋まっていた |
| その他周辺情報 | 下山後、通常ならひらゆの森でお風呂入るけど 激混みを想定して、今回は別のホテルの日帰り入浴へ そこで愛知の別の会の方に遭遇！みんな同じこと考えているんだな |
| 予約できる山小屋 |
横尾山荘
|
写真
2ピッチ目をフォローする私。私が登っているのはみんなが1ピッチ目で終えた部分。1ピッチ目でルーファイミスって難度が上がりそこで冷静に先輩と交代したのだった💦
1
3ピッチ目のビレイ点で。後続は4人組。私たちは3ピッチ目となったけど、もともと2ピッチ目は先輩が行く予定だったので、引き続き先輩が「俺行くわ」とリード。私もルーファイミスったショックを引きずって気弱
1
5ピッチ目の岩峰。最後が問題で、どう行ったらいいか分からず右往左往。かなり悩んで、意を決して薄かぶりの凹状から突破。写真の、太陽が出ているあたり。なぜか残置はなくカムが役立つ。（アイゼンの跡はあった）
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感想
超人気王道クラシックアルパインルート
前穂北尾根に挑戦してきた
Instagramのほうには、印象的だった登攀パート〜奥穂高岳の部分を記録しておいた。ヤマレコはもうちょっと全体的に記録。
【事前計画】
◆ルート提案
GWは後半のみ登山。最初は1泊2日の計画で、雪なら飛騨沢〜槍ヶ岳、クライミングなら小川山近辺を考えていた。提案すると雪山をやりたい先輩は、残雪の槍ヶ岳いいね！となる。先輩は秋に大ケガをしてから、リハビリ＆調子を見ながらの登山を続けているので、この冬は歩きの山しかやっていない。私もテント装備を担いで稜線まで上がれる自信はなくて、最初から小屋泊のつもりだった。意外にも山小屋はぽつぽつとあいていた。
※いくらGWといっても北アルプスは完全な雪山。万人が気軽に登れるような場所ではないので、夏場のような混雑はないようだった
山行の2週間前くらいになって、私が2泊3日で出られることになる。そうなると槍ヶ岳だけの登山はどうももったいない。しかし営業小屋をつないで縦走するには…うーん。別計画として、先輩に、小屋泊で前穂北尾根どうっすかと提案すると、体力的に不安だろう先輩は断るかなと思ったけど、そうでもないらしい。
こうして、もしかして残雪期に前穂北尾根？という計画が浮上した。今年はアイゼントレやってないから、リードするのは寺井さんね、と言われるが、初見の前穂北尾根でオールリードは難しいんじゃないか…だいたいトレーニングしてなくても先輩のほうが間違いなく安定して登れる。そう答えると、じゃーつるべでいいよ、となる。
※二人とも1月に西穂登頂しているので、それでもアイゼントレにはなっていると思う
◆アルパインだけど小屋泊
通常ならテント泊で涸沢ベースになるだろうけど、小屋泊の提案は体力に不安のある先輩にとってよかったようで（めったに小屋泊しない先輩は1泊14000円にひどく驚いていた笑 それでもこんな機会じゃないと泊まれないからって前向きに捉えてくれたようだ）、何度か、小屋泊で助かったよ〜と言われた。
実際に登ってみて感じるのは、小屋泊にしても、登攀中の荷物は、アタックだけの人に比べたら重くなると感じた。泊まりの荷物…こまごましたものだけど、合わせると1kgはあるよね？ もっとあるか？ バックパックがアタック用にできないことだけでも重量になる。そういう荷物を背負って登るのは、自分にはきつかった気もする。アタック装備の人のほうが軽かったに違いない。
◆ほんとに前穂北尾根に挑戦するのか
前穂北尾根、じつは昨秋に先輩と行こうとしていた。ケガで白紙になったわけだけど。先輩は前穂北尾根はずいぶん昔の無雪期に行ったことがあるそうだけど、細かいことは覚えてないらしい（印象がない＝難しくなかったんだろう）。それと吊尾根は、昔年末年始に縦走したことがあるそうだ。それは明神〜穂高〜涸沢岳西尾根下山だったそうで、そちらのほうが時間もかかって大変でいやらしかった記憶があるらしい。私は前穂北尾根は、2012年くらいのお盆に行く予定で、雨のため登れなかったことがある。
当日までに二人でロープワーク確認や、登攀を練習する時間はなく、いきなり本番！ 先輩とアルパインに行くのは、昨夏の北岳バットレス以来だった。前穂北尾根で話が進み始めたものの、二人とも不安はある。本当に行くぞ！となるには時間が必要だった。調べて対策などを確認していった。
◆吊尾根への不安
大きく不安だったのが、奥穂への縦走で通過する吊尾根だった。吊尾根を歩く記録がその年のものはほとんど見当たらなくて、ゼロではないけど、少ないことに不安を感じた。また吊尾根だけで3時間〜3時間半かかるようだった。これはもう残雪次第なので、現地入りしてから判断することになった。もし吊尾根がダメなら、奥明神沢を岳沢に下降するしかない。※ただ穂高岳山荘は予約しているので、なるべくそちらに行きたいとは思っていた
吊尾根の通過に不安があったため、涸沢への荷物のデポはやめたいきさつもある（ストックとか）。
こんな不安がありながらも前穂北尾根で計画が動き出したのには、絶好の天気もあった。3−5の天気が間違いなくよいという環境が、後押しした。
【装備】
●ウェア：好天予報なので、冬のオーバーヤッケは基本いらないと思っていた。3シーズン雨具を上下持つ。ズボンはバーティゴライト。タイツは、涸沢より下ではなし。2日目はジオラインLWをはいた。上の肌着はジオラインやメリノウールは暑いと思ったので、夏用の機能性素材の薄手にした。靴下は、厳冬期は5本指のライナークルー＋厚手のウールソックスなので、今回は厚手のウールソックスだけにした（これは失敗だった、5本指のライナークルー＋薄手のウールソックスがよかったかも）冬靴との相性があるので、ある程度の厚さがいるけど、横尾までのアプローチの長さが足指へのダメージ極大だった………（涙）
●保温着やグローブなど：中くらいの厚手のダウン1枚持った。5・6のコル偵察のときや、夜、小屋などでは必須だった。ニット帽はなし。ウールの薄手ネックウォーマー、ウールのヘッドバンドなどで保温した。手袋は基本薄手1枚だけ。いらんだろと思いながら持っていった防寒テムレスは5月の登攀では必須だった。残雪期とはいえ、雪山を登攀する際には雪を触っても指が冷えない、ピッケルを持っても冷たくない手袋がマストだと分かり、置いていこうとした自分に反省した。
●ガチャ：ロープはシングル50m1本にした。ベアールのシングルダブル9.1mm（軽量で53g/mくらいだと思う）。ガチャは少なくはないけど2人合わせればそこそこくらいに用意した。ハーケンはなし。カムは当初いらないとも言っていたけど、0.4、0.5、0.75、1を持っていって、これが正解だった。アルパインでカムはいる。カムに慣れている先輩は、終了点をカムで工作したり、ランニングをカムで取ったりとわりと頻出させていた。それは先輩ならではと思う、私はつい残置に頼っちゃうので。
●アックス：かなり迷った。先輩はストレート1本と言っていたけど、二人とも何らか2本持つことにした。それは吊尾根への不安もあった。私はややカーブしているストレートピッケル1本とクォークを1本持って、そのおかげで雪壁の安心感は高まったけど、結果的にはクォークは置いていく選択がベストだった（それによって雪壁でミスして死んだらダメだが）たぶん、ダブルアックスがなくても北尾根を登攀できる能力が必須。クォークがあることで、体のまわりに装備が増えて動きづらく、登攀のキレがかなり落ちたと感じたので。軽量化の妨げにもなった。ダブルアックスが欲しいと感じたのは、5峰を登っている朝イチの硬い雪面の登攀だった。距離は10mほどだけど、万が一落ちたら助からない。そこはダブルで安心感があって、シングルだったら怖かった。もう一つ4峰の10mくらいの雪壁でも安心感があった。とはいえ、そのために登攀部分での身軽さを損なうのはマイナスが大きい気がした。
※実際、ダブルじゃない人がほとんどだったため
【1日目】
◆入山
涸沢まで行けばいいので、朝はゆっくりめ。あかんだなPからバスで上高地へ。8時すぎに行動スタート。GW上高地は、こんな人少ない？ってくらい少なかった。拍子抜け。それは早朝だったからっぽい。岳沢の上の吊尾根は、かなり黒々していた。相当雪が減ってる？
やはり天気は最高。先輩と歩く際は、けっこう要所で写真撮影して楽しんでいる。追い込まないゆったりリズムは気楽でありがたい。会のリーダーから先輩への体調の気遣いの声もあったので、先輩の歩調をみて私も急ぐことなくゆっくり歩く。1時間ごとに、きっちり10分くらい休憩しながら進んだので、あとから来る人にじゃんじゃん抜かされた（笑）横尾なんて30分くらい休憩したんじゃないか（笑）
昔、明神東稜に2月か3月かに向かった仲間が、コル手前の斜面で雪崩に流されて1名行方不明になって、何度も捜索に行って棒を突き刺した思い出を聞く。そんなことがあった明神東稜だけど、いずれは行きたいんだって。
◆徳澤
左足の指先が痛い。今回は靴下の厚みの関係で5本指ソックスを使っていないせい…と思う。しかしじつはこれ「冬靴で林道を歩いているせい」だとあとでわかる。冬靴は、雪道やアイゼン歩行には適しているけど、普通の林道を歩くにはこんなにも不適合なのかと、よーーーーく分かった。指先の痛みは、雪道になってからはまったくなくなった。あのまま痛かったらと思うとゾッとする
スキーを背負ってる人たちの一部は、ワラーチで歩いていた。また、横尾〜上高地間は別の運動靴を背負ってきてて履き替えてる人もいた。ワラーチは使ったことないし、運動靴をさらに担ぐ余裕はない。みんな冬靴での痛いアプローチ、どうしてるんだろ。ひとまず私は休憩時に靴下まで脱いで、足指をリセットさせるしか思いつかなかった。（戻ってくることが確定なら、別の靴をデポするとかもあるだろうけど）
◆横尾
ベンチで休憩していると、欧米人と話になる。たまたまその人、岳沢から入って吊尾根〜穂高岳山荘〜で今下山していきたところらしい！なんて奇遇笑 吊尾根がどういう状況だったのか、詳しく聞くことができた。状況がいいわけではないようで、吊尾根がいけるのかいけないのかは、その時点では判断できなかった。（岳沢から別の運動靴も背負って縦走して、横尾で履き替えてた〜！）
横尾ではやまびこの方々と再会したり、インスタ友達のTさんと会ったりも。
◆横尾〜涸沢
あいかわらずスローペース。予定より1時間くらい遅れて涸沢に着く。本谷橋はかかっていて、それより手前にも残雪の横断はあったけど、本谷橋を越えて左岸に移ってからは基本ずっと雪道となった。私たちはアイゼンは終始つけずに登った。（チェンスパは荷物になるので持ってきてない）途中で小学生（3年生と2年生？）の男子2人を連れている4人家族を追い抜いた。涸沢でキャンプするらしい
涸沢が見える頃からじょじょに曇ってきた。半袖＋アンダー長袖だけだったので、太陽がなくなると夏みたいな格好では寒い。
◆涸沢ヒュッテ
受付へ。取材でお世話になったYさんと早速お会いできた。部屋は食堂のすぐわきにある大部屋だけど、涸沢ヒュッテは個室感が強い。先輩と2人セットで入れる屋根裏部屋のようなところにおさまった。電源もある！すばらしい。個室料金いらないからある意味リーズナブル
すぐにでもおでん＆ビールといきたいが、前穂北尾根を目指す人の定番が、前日の5・6のコルへの偵察だ。そこに踏み跡があるか？それだけでも確認しなければならない。ダウンを着こんで見に行った。裏手から雪面におりて、デブリがたまったところをこえて進んでいく。尾根を回り込んだ向こうから5・6のコルへ上がっていく感じ。トレースはいくつかあるけど、今日とかのものはなさそうだった。
ある程度登って、コルを視認できたので、引き返す。斜度がきつくなるので、踏まれたトレースがあると登りのときの足にはだいぶ楽になる。
水を取りに行くと、見知った顔とバッタリ。沢屋交流会で知り合ったSさんだ。テントをのぞきにいくとKさんの姿！Mさんも。行き先は前穂北尾根。明日何パーティいるんだろう……このときの予想では「あんま多くないのかなぁ？」って会話もしたけど実際には十分多かったことが分かる。
夕食の時間まで、テラスでおでん！おいしかった！あまりゆっくりできず夕飯の時間。想像通りの豪華な食事に満足〜。私はここで生ビール。マムートロゴ＆涸沢ヒュッテロゴの入った希少なジョッキで飲めるのは宿泊者だけ！いや、ほんとごはんおいしかった
そのあと寝るんだけど、翌日が不安で緊張してあまりぐっすり眠れなかった。
【2日目】
◆5・6のコルへ
朝3時すぎに出発。すでに前方にヘッデンあり。しまった、これでも遅かったか！と思うけど、やはり私たちは早い方だった。しばらくで下から、超速な3人グループが上がってくるので、てっきりそれが知り合いパーティかと思ったら違うようで、若い大学生パーティだった。私たちを抜かして先にコルに着く。
雪斜面の登りは、傾斜が徐々にきつくなり、距離的に半分くらいから、近く見えるのに登っても登ってもまだある…という感じ。傾斜はかなりのもので、以前の踏み込んだ足跡を足掛かりにすることで劇的にラクに登れる。これがなかったら足へのダメージは相当のものだ。
コルに着く頃から、下方にはじゃんじゃんヘッデンが見えてきた。たくさんいる…。みんなGWなのに思ったより出発遅めなんだなぁ。ただ私たちはこのあとたくさん抜かされるので、ほんとこのくらいに来てて正解。
コルに着いたら、まず私はトイレへ。雪と岩のあいだのすき間で失礼。戻ってきてハーネスを履く。コルには男性が一人いて、聞くとソロだそう。この人がこの日一番手だったが、遅いからと大学生3人組に先を譲ったそうだ。学生3人はここからロープを出して、先頭がリードし、2人が後を追う形で進み始めていた。彼らは終始スタカットで登っていた。
●5峰
4時40分クライムオン。見たところフリーで行けるでしょう。2級くらいの岩稜。先輩より先に一人で登り始め、先輩が気をつけてよ〜とあとを追って登ってきた。周囲はもう明るくて、ちょうど5時くらいに日の出だったかな。雪がよく締まっている。終了点のようなものはけっこう見かけた。
装備のクオークのところで記述した、ダブルアックスで安心した雪斜面は5峰にあって、そういうものが出てくると思ってなかったからけっこうびびった。でも先輩は1本で登っていった。5峰の頂上はなだらかな雪面が続き展望がよく、写真を撮りあった。
●4峰
傾斜は立っているけど、ガチャガチャしていて、何かしら行けそうな感じはあり、引き続きロープは出さずに取り付く。すぐ先で、ソロ男性がロープを出し始めた。不安定な微妙なところだったので、準備するにしてもここ？という感じだった。私たちは慎重に引き続き進む。途中、ちょっとボルダームーブというか、乗越が大きなところが出てきて私にはたいへんだったけど、どうもライン取りは複数でき、避けることもできたみたい。
4峰の上部で、ちょっとやらしいな〜という部分から左に行き、見える雪壁を直上し、右手の細い尾根上からさらに岩稜を進むパートが出てきて、学生パーティ、我々、後続の4人パーティ（横浜山の会）が並んだ。学生パーティはロープを出しているので、待つことになり、こういう場面はお互いの情報交換をしたり、仲良くなっておいた方が安全のためにも後々いいだろうと思い、前後に話しかけてみた。
この渋滞部分は、最初の悪い左巻きを右に行って抜けることができるそうで、私たちの後ろにはガイド登山の3人パーティがいたのだけど、彼らは右抜けをしたようで、いなくなった。またもう1パーティ男女2人組がいたのも右抜けしたようだった。
つまり4峰をこえると、ガイドパーティと男女2人組が先行していて、学生3人組もいて、さらに別の若い男子ソロがさささ〜っと先行して行ってしまった。これだけ前にいて、後ろに横浜4人パーティ、そして私の知り合いの3人パーティ、最初に一番手だったソロ男性が続く形となった。順番めっちゃ入れ替わってる（笑）しかしそれ以上に後続が続くわけではなく、どうやっても昼には抜けられるんじゃ？という感じ。
●3峰
大きなコルで、ここでテント泊もやれるだろう。3峰は同時に登れないので、前のパーティに続いて待ちとなる。少し登ったところのビレイ点で順番待ち。先行の男女2人組は無雪期の北尾根経験者のようだった。
待つうちに、後ろの私たちが通ってきたリッジではない、南側の雪斜面から知人の3人パーティがやってきた。知人のKさんが私のところまで挨拶に来てくれる。聞くと積雪期はリッジ通しに行けないことがあり、雪斜面から行くのが普通らしい（彼らは年末にここに来てる）。ソロ男性もやってきたけど、この待ちの状態を見て、行くか行かぬか迷っている様子があった。
待ってる間に、正規ルートの右側にある「崖」みたいなところをKさんが空身で登り始める（笑）マジで？実力者は違うな、て感じで見ていたけど、順番が来て最後までは見なかった。
先輩と、どっちがリードします？という話をしたが、私は2ピッチ目がグレード高いと思っていたから、1ピッチ目は私が行きます〜と言ったんだけど、じつは今いる地点がすでに2ピッチ目の取りつきだったらしく（たぶん）、私はグレードが高いから避けようと思っていた2ピッチ目をリードすることになったらしい。
・1ピッチ目
前パーティのフォローを追いかける形でスタート。最初は横移動。そこからどのタイミングで上に上がるかで、難易度が変わるらしいけど、大きくトラバースして岩稜を迂回すると歩きに近いくらいの難度になるらしい。それはなんとなく事前調査で見てはいたけど、実際に現場にいると自分がどこにいるかは分からない。フォローを追いかけていくうち、「え？ここ登るの？」というかなりの段差、切れ落ち、高度感の、岩と岩が凹角になった取りつきに着いた。しかし見ればハーケン連打され、お助け紐も付いている。
これは経験のなさを物語るので恥ずかしいのだが、この時点で「いや難しすぎだろ！」と判断して他ルートを探るべきだったけど、それをしないで「前パーティはここを行った」と洗脳されている私の脳は直上を選択してしまい、際どいクライミングをして這い上がった。ぶっちゃけ危ないからお助け紐を取りたかったけど紐は末端が上に上がっていてピッケルのばしても届かず、立ちこんで最大限手をのばして（これも危ない）何とか引き寄せて登った。もちろんアイゼン前爪フル活用。
凹角のルートはまだ続き、その上が完全なるスラブで、アイゼンでは文字通り歯が立たない。そこを上がれば抜けられるのが見えているのに。スラブなのでリスがなく、上のほうに残置があったけど、残置までに落ちたら怪我するかも（出だしには支点あり）。2回ほどトライして、あきらめ、凹角の右手にあるリッジ上に活路を見出そうとした。ロープの屈曲が大きくなるので、まずリッジ上を試そうとするけど、これも2回ほど行こうとして諦めた。賭けるには危ないクライミング。リッジのさらに右は大岩が重なる感じで、行ける可能性があるけど、ロープの流れ的にGOとは思えなかった。だいぶ長い時間になるので、あきらめてスラブ下の支点に戻ってピッチを切った。
先輩が上がってくるのをビレイしていると、岩のすき間から、ほんの数メートル向こう（山を向いて左）を登っていく後続のクライマーや引かれていくロープが見えた。うう、あっちだったのか……どんよりした気持ちになった。
・2ピッチ目
先輩が合流し「えらいところ登ったねー」と言われて事情を話す。先輩もまずスラブにトライするが、やはり諦める。もし先輩が行ったとしても続ける気がしなくて、できればそこは行ってほしくなかった。次にトライしたリッジのラインも、見てすぐ「これはないよ」とのこと（残置はあるにはあった）。やはりさらに右手の凹状か。そちらはしばらくすると攻略したようで、「私いける？」と聞くと「いけるー！」
上に出て岩稜を上がれば、もともとピッチを切るはずだった終了点のポイントに出るようで、後続だったパーティもすでにそこに到着していた。その終了点が使えないから、先輩はさらに10〜20mほど上がった、門のようになったルンゼ入口でピッチを切っていた。しばらくで後続（2・2パーティ）の2番手パーティも追いついてくる。彼らも私らのちょい下に支点を見つけてピッチを切った。
・3ピッチ目
私は自分がルーファイミスったことで動揺していたのと、もともとの2ピッチ目は先輩がリードする予定だったから「俺いくよ」と先輩が引き続き登りだす。このピッチはどう登ったのかあまり記憶がない。門のようなルンゼ部分は傾斜が緩く、その先は何度か、ここ？みたいな岩の乗り移りなどがあって難しかった。左からも行けそうだけど、右から行こうとするところの乗り移りで、浮石を押さないようにしつつ、アイゼンで引っかかりのない岩の上に乗り込む部分があり、ここはリードだったらきつかったな、と思った。けっこう長い距離を先輩が登り、3ピッチ目をビレイしている私はガンガンに引かれ、声も届かなかったから、勝手にビレイ解除して追いかけた。こういうことは、アルパインだとたまにある。50mいっぱいを超えても登っているのか、じつはビレイ解除と叫んでいるのに聞こえてなくて、ロープ引き上げている状態なのか。
・4ピッチ目
次は、普通に考えると右手の雪稜を上がっていくようだった。トレースもあったし。傾斜はゆるゆるではないけど、登れる。雪稜は2回に分かれていて、間は少しの岩稜だったと記憶している。ただ、5ピッチ目で私たちは行き詰ってしまったので、この4ピッチ目が左方向からだったのか、あるいは3ピッチ目で左方向から行ける別ルートがあったのか、そのあたりが不明なままとなった。
・5ピッチ目
岩が立ちふさがる部分の手前でピッチを切っていた。終了点は基本いくつかあって、3ピッチ目の終了点だけ先輩はカムで自作していた気がする（あるいは補強していた）。目の前の岩を越えたら、3峰は終わりそうだけど、最後が難関。直上のようだけど、冬装備で荷物を担いでは簡単じゃない。見るところ残置がない。でもアイゼンの跡はあると。右から巻くのかな？と見ても危なそうだし、もう一段下の右から巻くとしてもエー大丈夫かなって感覚。へたに巻く方が危なかったりもする。そもそも4ピッチが間違ってた？いやみんなここ行ってるよね、トレースあるし。と15分くらい行っては悩んでとしたあと、先輩が意を決して立ちふさがる岩のチムニー状を登っていく。そう長いわけではなく、難しさでいえば北岳バットレスの城塞ハングのほうがずっと難しいと言える。登りきると、上には終了点があった。どうやら左側から登るのが正規ルート？フラットシューズなら普通？フォローでは、登れるには登れた。
●ヘリ騒動
このあたりで、3峰取りつきあたりをヘリが行き来するという事件が。最初に来たあと、まだ周囲を旋回していて、再度やってきてしばらく滞在したのち飛び去る。つまり1回目は救助隊員を下ろして、2回目は要救助者とともにヘリに収容するということを意味している。ええ？3・4のコルで事故？誰が？まさかそんなわけないよねと、このとき私たちは「偵察じゃな〜い」なんて言ってた。実際は知人の3人パーティのうち1名がスリップして滑落し、肩を脱臼されたそう。かなりの痛みで登攀継続は困難と判断して救助要請。残りの2名は3・4のコルから下山したという。
●2峰
少し移動するとすぐに2峰。通常ここはロープいらないはずだが、登り切ったら懸垂下降するとも聞いているので、このままスタカットで登ることにした。時間が押しているので、ロープしまってもよかったかとは思う。かなり疲弊していて体がひたすら重い。2峰はまあ4峰くらいの感じで登って行けたけど、ミスしたらヤバイのは変わらない。
2峰から1・2のコルへは、懸垂下降かクライムダウンと聞いていた。行ってみると、カニのハサミ的な岩稜のつきあたりが懸垂ポイントでアイゼンではそこに行くのが怖かった。しかし左手側壁を見ると、足場はあってクライムダウンもできそうだ。それにトレースを見ると先行パーティは側壁をクライムダウンしているよう。
先輩に告げると、上で確保しとくから、下りてみて、とのこと。ちょい足が遠かったりしたけどぶじに攻略。1・2のコルでロープはしまった。先輩に何度か確認されたけど、もう時間が押してるし、最後の1峰への登りはロープいらないだろうと判断。
●前穂高岳、本峰（1峰）への登り
再び4峰くらいの感覚で登って行く。少し大きな体の動きをするところもあったけど、難しくはない。ただ、体力が削られていく。
登りきると、前穂高岳の広い山頂の末端に出る。ひたすら大岩の積み重なった頂上。荷物をそこに置いて、山頂標識がある方向へ歩いて行くが、アイゼンでは歩きにくい。山頂部分は雪上で、標識は完全に埋もれていた。他に登山者はいなかった。
時間は押しているが、体力の回復が急務！ かなり疲弊していたので、ここでしっかりと休む。登山道は紀美子平へ下るけど、直接吊尾根の最低コルへ下ることができる。歩いてみると、旧道があったかのような踏み跡あった。
私がかなり疲れていたので、この山行でずっとシングルロープは私が担いでいたけど、先輩が背負ってくれるというので頼んだ。これでかなり回復できた。吊尾根は時間がかかるかもしれないけど、みんな行っているのだから行けるのだろうという安心感はあった。アイゼンは外して、後続の横浜の4人パーティが本峰に登ってくる頃、私たちは吊尾根へ。
◆吊尾根
まず、最低コルをめざす。登山道のところで、大岩に「最低コル」とペンキで書いてあるから分かる。前穂高岳からガラガラの岩場を稜線伝いに下っていくと、必ずそこへ出ると思う。登山道に下りきる直前に懸垂ポイントのある崖があるけど、そこは崖をクライムダウンもできるし、やや手前から左手に回って巻き下ることもできる。
登山道に合流したときは歓喜した。吊尾根はアイゼンを外せたことで、体の負担がかなり減ったのもあり、あれだけ疲弊していたけど、かなり回復してくる。先輩はゆっくりペースで、私より基本後ろのほうを付いてきていた。
最低コルからは登山道だけど、何度も雪斜面のトラバースがある。最初は数を数えたが、分からなくなるほど多かった。しかし雪がゆるんで、坪足でも問題ない。ときどきちょっと怖いなと思うトラバースはあったけど。一度、岩場に突き当たるトラバースで、下に下るのか、上に上がるのか分からないところがあった。それはハイマツを掴んで上に上がったけど、下は危なかったかもしれない。
いよいよ南稜の頭が見えてきた。そこが吊尾根の核心。見るからに傾斜の急な、というかほぼ垂直な崖のような雪壁を登る部分がある。そこに向けてもわりと急な雪面を登っていく必要があった。私たちは手前の大きな雪面からアイゼンを再度履いて登ったけど、先行パーティはそこは岩伝いになるべく登ってから、坪足でトラバースしていたよう。ただ、次からはずっと雪面となり、南稜の頭の雪壁までのトラバースでどのみちアイゼンを履く。
南稜の頭手前の雪壁は怖いね〜。ハイマツよりに登るけど、、怖いねとしか言えない（笑）時間的に雪もぐずぐずで。足が決まらない。南稜の頭に出ると、そこからはビクトリーロード！
◆奥穂高岳
積雪期の初めてのピークハント。昨夏に初めて登頂したばかり。ここで横浜パーティとご一緒し、しばらく写真を撮り合うなどして、同じくらいに下山開始する。
おそらく間違い尾根と呼ばれる箇所だろう、たしかに下っていくとペンキで雪面に「×」と書かれた場所がある。普通に進むと行きたくなるけど、その手前でがっつり雪面をクライムダウンして下るのが正解。これが1つめのクライムダウン。距離は短いうえ、下が緩やかになって見えているので恐怖心は薄い。
再び下っていくと、いよいよ2つ目のクライムダウン。ここがこの日1番怖かったくらいに悪かった（笑）雪もぐずぐずだし…。何が怖いと言うと、雪壁の最後が見えない。下り始めて、途中からさらに斜度が急になるからだ。つまり終わりが見えない雪壁に繰り出さないといけない。本当に怖かった〜！距離もかなり長く、50mくらいあるんじゃ？ へたに岩場に逃げて滑落することもあるらしいけど、私は疲れたので下のほうで岩場に寄って休んだりして、下った。ちなみに有名な滑落防止ネットがあるのは、ここ。雪壁を終えて、岩稜になれば、梯子や鎖が設置してあり、ある意味安心。ちなみにこの雪壁は、山小屋からも丸見え！！それくらい傾斜が急な場所が山小屋からすぐの崖にあるってこと。
◆穂高岳山荘
私たちはここで行動終了。時刻は17時〜17時半くらいだったけど、遅くなる旨はご連絡していた。横浜の方々とはここでお別れした。チェックインすると、昨夏にも対応してくれた受付のお兄さんが今回もいてくれて、妙に安心感があった。夕食は、もう終わっていたから、お弁当箱に詰めてくれていた。ありがたい…
部屋は2階の部屋で、蚕棚の上段だった。
【3日目】
翌朝、外で写真など撮っていると、岐阜県警の警備隊が常駐していて、周囲を監視していた。登山者を見たりしているんだろう。穂高岳山荘は基本、飛騨側の小屋だから、ここは岐阜県警なのだという。雪は昨年よりもさらに少ないということだった。
◆あずき沢？から涸沢へ
ザイテンの、上から見て左手の雪斜面を下っていく。
（書き途中だけど公開しときます。追記します）
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