一人六甲全山縦走 逆走の冒険(2025年2月23日)


- GPS
- 14:33
- 距離
- 45.4km
- 登り
- 3,010m
- 下り
- 3,038m
コースタイム
- 山行
- 13:48
- 休憩
- 0:29
- 合計
- 14:17
過去天気図(気象庁) | 2025年02月の天気図 |
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アクセス |
写真
感想
闇に包まれた宝塚駅前、静寂を切り裂くように靴紐を締める。時計の針は午前6時を指していた。目的地は須磨浦公園駅。ただひたすら前へ進むだけ。2月23日、六甲全山縦走の冒険が幕を開けた。
夜明け前の山道は、漆黒のベールに包まれている。塩尾寺にたどり着く頃、ようやく東の空がほのかに赤く染まりはじめた。足元を照らす朝陽の光が、まるで道しるべのように感じられる。
だが、ここからが本番だった。トレイルランニング用のシューズを履いてはいたが、標高が上がるにつれて雪が深くなっていく。山頂付近では白銀の世界が広がり、一歩ごとに慎重にならざるを得ない。慎重に歩を進めるも、下りの階段で足を滑らせ、無様にも尻もちをついた。雪の冷たさがズボン越しにじわりと伝わる。だが、ここで立ち止まるわけにはいかない。
気を取り直して進み、摩耶山の掬星台にたどり着いたのは13時30分。ここは六甲全山縦走のほぼ中間地点。見下ろす神戸の街並みが一瞬、疲れを忘れさせてくれる。だが、1週間前に同じ挑戦を試み、膝の痛みで鵯越駅でリタイアした記憶が蘇る。今回は同じ轍を踏むわけにはいかない。ペースを落とし、慎重に摩耶山を下りていく。
しかし、夕暮れが迫るにつれ、山の空気が冷たくなり始めた。東山を越える頃には、すっかり夜の帳が下りていた。ヘッドライトの光だけが頼りの孤独な山行。すれ違う人の気配はなく、不安がじわじわと忍び寄る。特に、闇に包まれた「馬の背」の道は、まさに命知らずの冒険者に試練を与えるかのようだった。足を滑らせれば、一瞬で奈落の底へと消えてしまいそうな細い岩稜。息を殺し、一歩ずつ慎重に進む。
そして、ようやくこの難所を突破したものの、待ち受けていたのは地獄の「鬼の階段」。高倉台に続く急登が、疲れ果てた足を無慈悲に襲う。もはや膝は悲鳴を上げ、心は折れかける。しかし、ここで止まれば、すべてが無に帰す。歯を食いしばり、最後の力を振り絞る。
長き戦いの果て、20時30分。須磨浦公園にたどり着いた瞬間、全身の力が抜けた。逆全山縦走??その厳しさを骨の髄まで思い知る。後半に待ち受ける激しいアップダウンが、まるで意志を試すかのようだった。やはり通常のルート、須磨浦公園から宝塚へ向かう方が楽なのだろう。
だが、楽な道では決して得られないものがある。過酷な試練を乗り越えた者だけが知る達成感と誇り。それこそが、この全山縦走の真の報酬なのかもしれない。
2週間後に迫る3月9日の全山縦走大会。この試練を乗り越えた今、もう迷いはない。
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