西穂高岳（西穂高沢）/前穂高岳（ダイレクトルンゼ）
長野県
岐阜県
Shinya0720
kaz
体力度について
- GPS
- 19:49
- 距離
- 16.0km
- 登り
- 2,715m
- 下り
- 2,468m
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標高グラフを拡大コースタイム
- 山行
- 2:34
- 休憩
- 0:07
- 合計
- 2:41
- 山行
- 6:48
- 休憩
- 0:32
- 合計
- 7:20
- 山行
- 9:12
- 休憩
- 0:45
- 合計
- 9:57
| 天候 | 5月1日（木）快晴無風 5月2日（金）荒天の予報、2200～400mは小雨微風、山頂付近は小雪、風速は体感で10－12m程 5月3日（土）快晴、高度が上がるにつれて山腹から吹き上げる風、山頂付近は10－12m |
|---|---|
| 過去天気図（気象庁） | 2025年05月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関：
電車 バス
|
| コース状況／ 危険箇所等 |
岳沢登山道入り口から風穴までは泥濘と所々雪が残り、一部踏み抜き注意。沢から小屋までは残雪上を目印の旗に沿って進む。部分的にガレ場があり雪と岩の境目の踏み抜き後が多数有。 岳沢小屋から西穂沢取り付きまでのトラバースは雪渓上に灌木の藪があり、避けながら進む。雪渓上には雪崩後のデブリが多数あり。岩稜、草付き、土が露出している部分を横断する。西穂沢から西穂稜線までは30－40度ほどの雪面の急登。早朝はアイゼンが効き歩きやすいが徐々に雪が緩くなりアイゼンが滑る状況。時々ヘルメット大の落石が雪渓上を無音で走るのを目撃。西穂沢の雪は安定している印象で雪崩の兆候は認識しなかった。 岳沢小屋から明神沢を経由してダイレクトルンゼ分岐までは早朝（5：40分）出発の為と日陰の時間が長く、雪は凍結していないが適度に堅くアイゼンが良く効き歩きやすい。ダイレクトルンゼの喉の部分は残雪が豊富にあり雪面が高く広く通行が容易であった。ダイレクトルンゼの高度が上がるについて前日の降雪による新雪が徐々にふえて10cmほどになる。ダイレクトルンゼは殆ど全ての工程を（シングルのピッケルのピック部分とアイゼンの前爪を効かせて）ダガーポジションで登攀。ピッケルは概ねピック部分が深く刺さり、ブレーキが利いた。凍結箇所に当たり、刺さらない箇所もわずかにあった。山頂付近は風が強く発達した雪庇が残っていた。帰路のダイレクトルンゼは全てダブルアックスによるクライムダウン（後ろ向き）で下降した。時間の経過とともに日射により、雪面がザラメ雪となり、アックスブレーキはよく効く一方、アイゼンの前爪は効きにくくなり滑って数十センチほどずり落ちて止まるので、この動きを利用して効率良く下れた。 |
| その他周辺情報 | 岳沢小屋（標高2170m） 2連泊お世話になりました。GWの飛び石連休の平日で中日の荒天の予報もあり、宿泊者が少なく一部屋を同行者と2名で利用できた。混雑時は6名部屋となるのでその場合はやはり賑やかになりスペースが限られる印象であった。 宿泊棟は部屋を出て玄関から外に出て直ぐに水道のシンクとトイレがある。夕方は16時頃から20時まで発電機が稼働し、部屋にコンセントはないが、食堂の棟で充電が可能。20時消灯。 暖房はないので室内の温度は夜には0度ほどでしたが、布団に入ると温かく薄着でも良く眠むれました。 発電機の排熱を利用した乾燥室があり、濡れた装備を短い時間で乾かすことができました。 食事 カレーバイキングのみならず、トッピングのから揚げやエビの揚げ物、山菜や生野菜、具沢山の味噌汁とデザートもお代わり自由。2日目はおでんもありました。 連泊の場合は夕食にカレーとは別にパスタ、中華、牛丼など別途一品が追加出来て、連泊得点の飲み物サービスにより生ビールもいただいた。売店コーナーでは別途缶ビール、日本酒（大雪渓）ワイン等の酒類、ジュース、スナック類が購入可能。 朝食は早出の場合の弁当の場合はAM5:00時以降であれば電子レンジで再加熱、温かいお湯、お茶、インスタントの味噌汁を出していただいた。昼食（1500～1700円）もメニューが幅広く美味しかった。特に黒キーマカレー。広いテラスがあり天気の良い最終日はテラスで荘厳な景色を見ながらランチをいただいた。宿泊者はポットのお湯をフリーで頂ける。 スタッフは基本無駄に話しかけない一方で親切でホスピタリティーを感じました。ご多忙そうでしたが、コース状況やリスク面などを尋ねると親切に教えてくださいました。 総合的には絶好のロケーションと必要な設備がり、個人的には初挑戦だった穂高連峰の登山基地として、連続する山行の英気を養う事が出来て、とても良い山小屋体験が残りました。 |
写真
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山頂下のルンゼ。高さ5-7mほどか。凍結していたのでダブルアックスを用いてフリーでクライミングとクライミングダウン。アックスのピックとヒラ爪がそこそこ効いたので、特に危険は感じなかった。しかしここで落ちると致命的。確保手段を取るべき。
4時起床、5時に小屋の弁当をいただき、5:40から明神沢を進む。標高が上がると前日の降雪による積雪あり。先行に2パーティ、単独行の方1名。
装備
| 個人装備 |
ドライレイヤー
長袖シャツ
Tシャツ
アクティブインサ
ハードシェル
ハードシェル下スパッツ付
ジオラインタイツ
ズボン
靴下
ウールベースグローブ
テムレスグローブ
アウターミトン
予備手袋
ダウンジャケット
バラクラバ
ネックゲイター
帽子
着替え
登山靴
ザック
アイゼン
ピッケル
ビーコン
スコップ
ゾンデ
昼ご飯
行動食
非常食
飲料
水筒（保温性）
コッヘル400cc
食器
バーナ
防水マッチ
地図（地形図）
コンパス
計画書
ヘッドランプ
予備バッテリー
充電器
筆記用具
ファーストエイドキット
常備薬
日焼け止め
ロールペーパー
保険証
iPhone14
Apple Watch Ultra
調光メガネ
予備メガネ
オーバーサングラス
タオル
ツェルト
ポール
ヘルメット
アイスアックス
アルパインハーネス
5.9mm✖️7.5mパワーコード
|
|---|
感想
上高地～岳沢小屋
初日は快晴で上高地から岳沢小屋までの行程を景色や地勢の変化を楽しみつつ快適に進む。登山道や雪渓の途中で軽装の外国人の観光客と多数すれ違い驚いた。
西穂沢～西穂高山頂往復
二日目は前日に雨とみぞれと強風による荒天の予報があり、一日停滞を想定した。しかし当日の朝は曇天で風もまだ無く、安定していた。視界も良好。西穂沢から西穂高山頂を往復した。展望は期待できないものの、慣らし登山と、ある程度荒天下での経験を積むことも目的として西穂山頂を往復。稜線上と山頂は強風。稜線から山頂までは雪が飛んでいてアイゼンの岩稜登攀。谷側は急な崖となっており、アイゼンを引っかけると危険。山頂直下はルンゼとなっておりダブルアックスと前爪ででフリーの登攀。確保しなかったので落ちると奈落へ、慎重に登下降した。
帰路も小屋の管理人の方の他の沢は傾斜が急とのアドバイスに従い、同じルートで沢を下降。上部では細雪、標高が下がると小雨となったが荒天ということはなく、稜線から沢へ下ると風は弱まり西穂沢の下りは穏やかな様相であった。
西穂沢は雪崩のデブリが所々あり、無音の落石も複数目撃した。残雪期以外は草付き、這松の急斜面の為登攀は困難との事。
レイヤリング:
5月初頭、出発地点と稜線及び山頂では温度差があり稜線上は風も強い為、レイヤリングによる温度調節がやや難しいところ。出発時点ではミドルレイヤーを着ずにザックに収納、ドライ＋ベースレイヤーの上にシェルを着て行動した。フロントジッパーを半分下げて、上下シェルのベンチレーターを全開にしたが、それでも行程の下部では暑く、発汗多量。手はサージカルグローブでベーパーバリアして防寒テムレスを使用。山頂付近（おそらく-3～-4度程度で風速10m強）で寒くなり、手の感覚が無くなってきたのでベーパーバリアの上からウールのインナーグローブ＋予備の通常のグローブに変えたところ快適になった。しかし下山途中に高度が下がる又と暑くなり、再びテムレスに交換した。同行者も手袋を外してインナーグローブだけで行動していた。手のベーパーバリアは慣れると快適で手袋の内側が汗で濡れないので春の残雪期でも有効と思う。
岳沢小屋～前穂高岳ダイレクトルンゼ
2023/05/01のスタッフブログの引用
「なお、残雪期の前穂高ルートは非常に急峻です。
小豆沢からの奥穂高岳、北穂沢からの北穂高岳よりもさらに急峻です。
絶対確実なアイゼン・ピッケル技術はもちろん、相当の筋力がないと登り下りはキツイです。
日当たりの悪い斜面なので、遅い時間までガッチガチのハードバーンが続くので、スリップでもしようものなら、習得した「滑落停止技術」など披露する間もなく、数百メートル滑落して即死確実ですので…」
このブログの後で致命的な滑落事故が発生したとの事。
他にもネット上の記録には下りでクライムダウンから立ち上がって降りる体制にはいったところ滑落し、重傷を負われたなどの貴重な事故の報告を拝見した。
事前に同行者からは「もし明神沢の斜面を見て怖気づくようであれば言ってください。その場合は登りませんから。」
これまで良い機会がなく夏季でも穂高など北ア南部の山には登った事がなく、昨シーズンから雪山を初めて2シーズン目の最終の雪山山行。麓から標高差のある雪壁の急傾斜を見上げると、現在の自身のスキルと経験からは数段レベルが上のコースと思えた。しかし特に恐怖は感じる事はなく、直感としては登れると判断登り始めた。
標高差900ｍ強、最大斜度５0度の雪壁の斜面はクライミングやアイスクライミングの経験をしていたので、ほぼ全行程をダガーポジションで違和感なく登高できた。ところどこ先行パーティーのステップが現れるととても歩きやすい。しかし前日の降雪した雪が流れて被さりほとんどのステップは直ぐに見えなくなる。山頂が近づくと高度の為か息が切れてきてペースが崩れ、休み休み進んだ。
山頂は快晴で全展望可能であったが強風の為、写真を撮ると早々に少し降りて岩陰で小休止後下山。
下りはダブルアックスを持ってクライムダウンにより下降。ダイレクトルンゼ下部の喉の部分は雪が少ないと極めて狭くなり、過去下降で通過に失敗して複数名を巻き込む致命的事故が発生している場所。今年は雪が多くこちらも下降も特に難がなかった。ダイレクトルンゼを抜けて明神沢に入ると徐々に傾斜が緩んで来る。クライムダウンから高度が下がり、安全と思える地点からは慎重に立ち上がり歩いて下降した。
一歩一歩、一手一手慎重に進み、途中立ち上がった時にザックに引かれて後傾するなどまったくないわけでないが、ヒヤリとする場面もなく、マイペースで体力、筋力もある程度余裕を残して無事降りてくることができた。
無事工程終了後は岳沢小屋でランチメニューを注文し、残りの荷物をパッキングして上高地まで一気に下山した。
元々、北アルプスの代表的な穂高に登りたいというゴールがあったところ、残雪期のバリエーションルートで一遍に叶える事が出来た。結果的には自身のスキル、経験と心理的な限界を大きくストレッチする山行体験をすることができた。ただトータルリスク管理面を振り返ると、手元足元に注意が集中しがちで、落石や雪崩に対する行程中の予防の観察や知識を含めたリスク管理は十分だったのか、一つのミスで長距離を高速で滑落し即死するルートに対して、自身の全ての動き、姿勢態勢に危うい動きはなかったのかなどの教訓を良く咀嚼して、今後の山行を計画し着実なステップアップを行っていきたいと思った。
一人では決して近づこうとは思わない、経験豊富な同行のバディにはこの山行を企画計画していただき本当にありがとうございました。
こっそり拍手
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